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第127話 6:4
しおりを挟む「そ、そんな……どこにもいない……骨どころか装備品も無いなんて……これじゃあ弔ってあげることもできないじゃないか……」
セリーヌがいたであろう場所で両膝を突いて項垂れるロラン。本人のみならず遺品すら無いことにショックを受けたからだ。
その痛ましい姿を見て悲しげな表情を浮かべるクアトロとネマであった……が、その最中にネマがあることに気づく。
「おかしい……骨は無くても灰まで見当たらないなんて……それに金属なら溶けてるはずなのに、それすら無いのは明らかに不可解だわ……!」
眉間に皺を寄せて考え事を始めるネマ。
そんな彼女の言動に何かを閃いたのか、脳筋のクアトロはある結論を導き出す。
「ならよ、元からいなかったんじゃねぇか? 例えば燃やされる寸前に避けてたとかよ」
その一見馬鹿げた発言に対し、ネマは「何馬鹿なこと言って……ううん、もしかしたらそうなのかも……だって、あの話す魔物もいないし……恐らくだけど、あの魔物が彼女を連れて遠くに避難したのかもしれない……うん、うん!」と推察して腑に落ちる。
しかし、あまりにも突飛すぎて可能性としては極めて低く、単に腑に落ちただけであって飽くまでも希望的観測に過ぎない。
ただそれでも〝生きているかもしれない〟という希望を持てたことが、項垂れる彼を奮い立たせた。
「セリーヌが生きてるかもしれない……? そっか……そっか! ならこうしちゃいられない! 早く彼女を探さなきゃだ!」
突如、やる気に満ち満ちて立ち上がったロラン。するとその直後、彼に合わせたかの如く奇跡が連鎖する。
「……ん? ちょっと待て、着信だ……もしもし、ファラか?」
「はい、私です……すみません、近くにネマさんはおりますか?」
「あぁ、今隣にいるが……なんなら直接連絡すれば……って、そういや魔電話を持たない主義だもんな、コイツ」
ネマの顔を見ながらクアトロが通話していると、ネマは「何よ……!」と不機嫌そうにクアトロを睨みつける。
「あはは……っと、話を戻すとですね、至急マナポーションをお借りしたいのですが……お願いしてもよろしいでしょうか?」
「お、おう……だが何にーー」
「ーーどうしても必要なんです! シリウスさんを救うために……では、宜しくお願いします」
ファラとの通話を終えた途端、クアトロは驚きの表情を見せたかと思えば笑顔になってロランに報告を。
「おーい! お前んとこの団長さんも生きてるってよ! まぁなんだ……とにかくよかったな!」
吉報を受けたロランは「団長っ!」と嬉しそうに声を上げてシリウスの元へ駆け出し、すぐに事情を知ったネマもマナポーションをファラに渡すべく即座に向かった。
そして一人きりとなったクアトロはというと、少し離れた戦場を眺めて戦況把握を開始。
……現状、6:4で俺たちが優勢。更に九尾妖狐という〝統率者〟を失ったことで魔物たちは単なる野犬の群れと化し、逃げ出す魔物も現れ、俺たちの勝利はより堅いものとなる。
そう予測して戦況を見守っている様子。だったが……
「……ッ!? なっ、何も変わらねぇだと!? 一体全体どうなってやがる!? 俺たちは確かに統率者を倒したはずだ! なのになんでーー」
「ーーぐあぁぁぁーっ!!」
変わらぬ戦況に異変を感じ取ったその矢先、九尾妖狐の事後調査に向かったカミュの叫び声が響き渡り……
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