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第126話 若き英雄
しおりを挟む「うおぉぉぉーっ!! 勝ったぞぉぉぉーっ!! あと俺の勘グッジョブ!」
九尾妖狐を倒した後、勝利の雄叫びを上げたかと思えば自画自賛を始めるクアトロ。
その隣では「はぁ、出たわねいつものやつ……でもね、今回だけは許してあげる」とネマが大きな独り言を言って微笑ましくクアトロを見つめる姿が。
片や、九尾妖狐の事後調査に向かったカミュも勝利したことが余程嬉しかったのか、歩きながら小さくガッツポーズを。
それから間もなくして、勝利の立役者であるロランが華麗な着地を決める……が、疲労のためかその場で片膝を突いてしまう。
クアトロとネマは急いでロランの元へ駆け寄って肩を貸すと、彼の要望で火の海となっていたあの場所へ共に向かうことに。
現在は完全に鎮火しているものの、地面は真っ赤に焼けているうえに白煙が濛々と立ち込めており、とてもではないが足を踏み入れられそうにない。
だがそれでも「絶対にセリーヌは寂しがってる……だから、俺が行かなきゃダメなんだ!」と言って聞かないロラン。その眼差しは真剣そのもの。
「そうか……それほどまでに彼女のことを……」
……と、心の中で思った直後に全く同じことをクアトロが口に出し、その言葉にロランは照れながらも大きく頷く。
そして、再び真剣な眼差しで目的地へと進んでいき……ーー
「ーーだぁクソっ、やっぱ熱くなってやがる! これ以上入んのは無理だ!」
目的地に着くなり先行して踏み入ろうとするクアトロであったが、地面が熱すぎて中には入られず。
外から探そうにも白煙に遮られているため視認は難しく、それなら煙を斬ればとロランが試みるも「ダメだ、斬ってもすぐ元通りになってしまう……」と失敗に終わる。
何か他に探せる方法はないかと頭を悩ませるクアトロとロラン。すると、いつの間にか2人から距離を取っていたネマが両手を翳して詠唱を開始。
「風の子らよ、一と成りて全を吹き払え、リトルネイド!」
ネマが詠唱を終えると全方位から1箇所に風が集まり出し、それが小さな竜巻となって白煙を全て吹き払った。
副次的に地面の熱もある程度逃せたため、再び白煙が立つことはないだろう。
彼女の表情を見るに計算通りの結果らしく、見事に視界は開けて歩行すらも可能となったわけだ。
「すげぇ……流石は魔女の家系だな! 俺らとは頭の出来が違うぜ! つーか仲間に誘った俺グッジョブ!」
唐突にネマを讃えたかと思えばまた自画自賛を始めるクアトロに対し、ドヤ顔から一気に冷淡な表情に変わるネマ。
しかしそんなやり取りを余所に、ロランは覚束ない足取りで歩き出す。
「セリーヌ……今、逢いに行くからね……」
虚ろな瞳で辺りを見渡しながら彷徨うように歩くロラン……と、不安げな表情で後に続く2人。
きっと後ろの2人は分かっているのだ。あれほど高火力の火魔法を浴びて、肉体は愚か骨さえも残らないことを。
それに加え、探した末にその事実を知ったロランがどうなってしまうのかを危惧しているのだろう。
怒りで我を忘れて暴れ出すのか、悲しみで気力が失せて塞ぎ込むのか、或いはもっと酷い状態に陥ってしまうのではないか、と……
「たとえどうなろうと、私たちが支えてあげましょう……あの若き英雄を……」
「あぁ、勿論だ……!」
ロランの後ろ姿を見つめながら、決意を口にするネマとクアトロであった……
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