なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第116話 夜天を照らす白い光

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「おい、なんだよそれ……お前はそれでいいのかよ!」

 突如足を留め、声を荒げるミカゲ。どうやら俺の呟きを耳にしていたようで、この諦めの感情も読まれてしまっていた。
 真顔で俺を睨むミカゲに対し、俺も足を留めるが何も言えず、顔すら見れない。そんな重苦しい空気を察したシリウスは、動揺しながらもミカゲを宥める。すると……


「セリーヌはまだお前のことが好きなんだ! お前だってそうなんだろ!? なぁ、何諦めてんだよ……悔しくねぇのか? 俺は……俺は! 悔しくて悔しくてしょうがねぇ!」

 己の心の内を曝け出し、その悔しさと惨めさからミカゲの両手は爪が食い込むほど力が入っていた。それでも俺は何も言えずにいると、急にシリウスが深々と頭を下げて「申し訳ありませんでした……事情を知らなかったとはいえ、恋仲であった方に話すことではなかった……どうかこの通り……」と謝罪を。
 感情を表に出した恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯くミカゲと、許しが得られるまで頭を下げ続ける勢いのシリウス。そんな2人を同時に眺めていたら不思議と笑えてしまい、俺の中で何かが吹っ切れた。

「2人ともありがとう……俺は大丈夫だから早く行こう」

 その後2人は無言で頷き、再び移動を開始。この時点で俺はある決心をするが、それはまだ胸に秘めておくことにした。そう……この街を守り切るまでは、まだ……ーー



「ーーおいおい……これ、どうすりゃいいんだよ……」

 漸く東門に辿り着いたものの、戦場を目にしたミカゲは困惑する。
 人種と魔物、互いに入り乱れての戦い。戦術など皆無の原始的な殺し合いだ。
 これでは無闇矢鱈に魔法を使うわけにもいかず、下手に乱入しようものなら味方にまで攻撃する恐れがある。
 特に人種の方は夜目が利かないので尚更だろう。しかし、この現状を打破するために俺は両手を天に翳し、魔力を収束させて魔法を上に放つ。

「夜天を遍く照らせ! 天照あまてらす!」

 両手から直径1mほどの白光球体を放って上空に留めると、それは一気に光り輝いて数km先まで白い光を届ける。すると昼間の如く視界は開き、魔物に至っては動きが鈍くなり、劣勢を覆す種火と化す。
 この『天照』は光・熱・重力の複合魔法で「擬似太陽」と「指定加重力」の効果を持つ。それにより、視界の確保と対象の行動遅延を一手に実行できる、という優れもの。
 その結果、急な現象に全ての者が平静を失い戸惑う……が、そんな状況化で1人の女性が声を上げる。

「さぁ! 今こそ反撃に出よ!」

 遠く声のする方を振り向き、視界をズームさせると、そこにはレイピアを高々と翳すセリーヌの姿が。
 白光を浴び、神々しいまでのその立ち姿を目にした者達は皆、勇猛果敢に反撃に出る。それに便乗する形でミカゲとシリウスも参戦し、猛烈な勢いで魔物を駆逐していく。
 一方で俺は、進むルート分のみを素手で倒しながら先へ急ぐ。行き先は勿論、セリーヌの元だ。
 現状を鑑みてまともに話せる状況ではないが、この戦いを終えた後に話せる機会だけは今の内に確約しておきたい。そんな思いが先行して今に至る。そして……


「……!! 見つけた! セリーー」

「ーー大丈夫かい? 君は俺が守るから安心して?」

「ふふっ、もう少し強くなったら安心してあげる」

 背中合わせのまま囁き合う男女。その光景を目の当たりにし、ただ茫然と立ち尽くす……
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