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第105話 ムツコとギン
しおりを挟む「ふっふっふっ……知りたいですぅ?」
ニヤリと怪しく笑うムツコ。
教えたそうな表情をしている。
「はい! 知りたいです!」
キラキラと瞳を輝かせる俺。
知りたいと顔に書いてあることだろう。
「……そんなに知りたいですぅ?」
更に怪しく笑うムツコ。
教えたくて仕方がないという表情をしている。
「知りたいです!! 是非お願いします!!」
更にキラキラと瞳を輝かせる俺。
知りたくて仕方がないと顔に書いてあることだろう。
「……分かったです! キュロス様には特別にお教えするです!」
先程までの怪しい笑みから一転、満面の笑みを浮かべたムツコは『シルバーフェンリル』について早口で語り出した。
余程教えたかったのだろう。その時のムツコはとても嬉しそうに語っており、釣られて俺まで嬉しくなったのを覚えている。そして……
「……!! そうだったのか……ギンは神獣の……」
ムツコからシルバーフェンリルについて詳しく教えてもらった……が想像の遥か上を行っていたため、知識を得た喜びよりも驚きの方が勝っていた。
それは『神獣』と呼ばれる最上位の魔物が存在するのだが、その神獣の中に『ヴァナルガンド』という名の神話級の魔狼がいるらしく、シルバーフェンリルは神獣ヴァナルガンドの子孫で下位に当たる『準神獣』なのだそうだ。
ヴァナルガンドは白・黒・金・銀の計4種の毛色を有しており、下位には毛色と同様にシルバーフェンリル・ホワイトフェンリル・ブラックフェンリル・ゴールドフェンリルの4種がいるとのこと。
因みに毛色によって特性が違うようで、シルバーフェンリルに至っては脚力と隠密性に優れているらしい。
(うーん……ギンを見る限りでは他にも何か秘めてそうだけどなぁ……)
まぁ要するにギンは、神獣の子孫で物凄く珍しいうえに超が付くほど強い魔物だということだ。今はそれだけでも理解していれば充分だろう。
あとは、神獣でも準神獣でも神獣ですらなくても脅威ランクはSで統一されており、たとえ同じランクSだとしても脅威度や実力はピンキリだということも教えてもらった。
それにしても、まさかギンが神獣の血を引くほど高位な存在だとは……
「……ん? では、どうやってギンを従魔にしたんですか? そこまで凄い魔物なら、たとえAランカーのテイマーでも到底無理に思えるんですが……?」
「んふふ、それはですねぇ……」
俺からの唐突な問いにムツコはニコッと笑い、おもむろに話し始めた。
今からおよそ3年前、ムツコがまだ生まれ故郷の村で生活していた頃に遡る。村近くの森で日課である木の実集めの最中、偶然にも後ろ脚をトラバサミに挟まれて動けずにいたギンを助けたのがきっかけらしい。
当時のギンは生まれて間もないうえに家族や仲間も見当たらない一匹狼状態だったので、後ろ脚の怪我が治るまでの間だけ保護……のはずが、生活を共にしているうちに情が移ってしまい、それ以来ずっと一緒にいるとのこと。
初めは気づかなかったが、ギンと触れ合っているうちに自身の天職がテイマーであることに気づき、その後すぐに村を出てこの街で冒険者になったのだと笑って話してくれた。だが……
「……そう、ギンと出会えたお陰であの村から出られたです……」
そう呟いたムツコは、とても暗く悲しげな表情をしていた……
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