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第2話 最悪の日(前編)
しおりを挟む【ーー時は遡りーー】
「……ん……はっ、そうだ!」
俺は慌てて起き上がった。
今日はパーティの仲間達と依頼を受ける日。寝過ごしていないかと急いで魔時計を見る。
「はぁ、よかった……」
起床予定時間より若干早く起きただけのようだ。
本当はギリギリまで寝ていたかったが遅刻するよりはマシだと考え、二度寝しないようベッドから抜けてリビングへ向かうことに。
「セーーおはよう」
リビングに着くなり恋人に挨拶を。
恋人は俺と同じ冒険者だが、俺と違って高ランクでとても強くて凛々しい。因みに幼馴染でもあり只今同棲中なのだ。
「……あれ? いない……」
この時間はいつもリビングにいるはずなのだが……朝風呂か? 取り敢えず椅子に座って待つとしよう。
「ふぁ~……」
眠そうに欠伸をしながら椅子に近づくと、テーブルの上にある一枚の手紙の存在に気づく。
……ん? 書き置き? ということは既に出掛けているのか……散歩? それともギルドへ依頼を受けに? まぁいいか。
あまり深く考えずに手紙を手に取って読んだ。
【今までありがとう。ただの幼馴染に戻りましょう。】
「……え?」
突然の事態に茫然。思考は停止し、頭の中は真っ白になった。
停止した思考をどうにか動かし思い返してはみたが、特に違和感もなく昨夜も異変は無かった……ハズ。
「セーー何故……はっ、集合時間に遅れてしまう! 急がないと!」
1ヶ月程前から急に周囲から謂れのない誹謗中傷や冷たい視線を浴びるようになった。それはパーティ内でも同様で、前触れもなく邪険に扱われるようになったのだ。
なので、少しでも悪い印象を与えたくないという思いから、頭の中が真っ白になってもどこか片隅に残っていたのかもしれない。訳も分からないまま恋人に捨てられたのに……
「……でも、今は行かなきゃ……これ以上悪く思われるのはもう……」
胸をズキッと痛めながらも手早く準備をし、急いで冒険者ギルドへ向かった。
「遅せぇ! 何分待たせたと思ってんだ!」
集合場所である冒険者ギルドの前にパーティの仲間達は既に集合していた。
突如怒鳴り声を上げたのはリーダーであり男剣士の『ドナーツ』だが、側にいる他の3人も口には出さずとも視線で訴えているのが分かる。
他の3人とは女黒魔導士の『シュネ』、女白魔導士の『ぺニエ』、男重戦士の『クルーガ』らのことであり、俺以外は4人とも16歳のEランク冒険者だ。
「す、すまん……でも、まだ5分前ーー」
「ーーうるせぇ! ゴチャゴチャ抜かすとパーティから外すぞ! このお荷物が!」
また胸がズキッと痛んだ。
半年前、どのパーティにも入れてもらえず仕方なくソロで活動していた俺を誘ってくれた4人。
皆相性が良かったのか、特に依頼失敗もなくコツコツと依頼を達成し続け、俺を除いて4人は見事Eランクに昇格。
その際も俺だけが昇格できなかったことに納得がいかないとギルド職員に抗議をしてくれた。そんな心優しい4人が何故……
「よし、じゃあ行くぞ!」
そう言うとドナーツは歩き出し、他の3人も当然のように続く。
「……えっ?」
受付での依頼受注は? それとも既に受注済みなのか? 一切の説明がないことに、言いようのない違和感と不安感を覚えたのであった……
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