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第80話 俺はただのFランク冒険者です。
しおりを挟む「おっ、もう見えてきた! やっぱり速いな! けど、もう少しで両方とも効果が切れそうだ……その前に着ければいいんだけど……」
今までに支援した2箇所の布陣よりも規模が大きく土煙も広範囲で立っているため、近くまで来たように感じるが、実は未だに距離があるので魔法の効果が保つか心配なところだ。
本音を言えば西門での戦いのように遠くから一網打尽にしたいのだが、布陣が崩れて乱戦となっているので闇雲に魔法を唱えるわけにはいかない。
「取り敢えずは1番近い場所から支援して行くか……そうなると、もう少し南に移動しなきゃだな……よしっ、早速行って助けよう!」
進路を少しだけ左方へ移して最も近い戦地へ向かうと、丁度魔法の効果が切れ、目の前には疲弊しながらも抵抗する冒険者達の姿が。
その数は20人と少数であり、皆がどこかしらに傷を負っている。
そんな状態でも誰一人として諦めない姿に頼もしさと嬉しさを感じつつ、助けるためにチカラを振るう。
「これ以上は誰も傷つけさせやしない! 来い、水蠎!」
左手を挙げて魔法を唱えると、掌から水で象られた大蛇が出現し、俺を守るように取り巻き出す。
100匹を超える魔物の群れに突如立ちはだかる俺を見て、状況が分からず冒険者達は茫然とするが、俺は構わず水蟒の出現により魔物達が怯んだ隙を付き「1匹残らず喰らい尽くせ!」と水蠎を畝らせながら魔物の群れへ向けて解き放つ。
対する魔物の群れは、ダイアウルフ・ジープドッグ・ステルスリカオン・ヘルハウンドと全匹がCランク以上ではあったが、その場にいる全ての魔物達を何もさせずに一撃で倒して魅せた。
「これで良し! で、次は……エリアメガヒール!」
魔物討伐後、透かさず冒険者達の方へ振り返って治癒魔法を皆に施すと、見る見る傷は癒えて心無しか疲弊も軽くなったように見える。
あっと言う間に起きた2つの出来事に茫然としたままの冒険者達であったが、1人の男冒険者がハッと我に返って一言口を開く。
「き、君は一体……?」
「俺ですか? 俺はただのFランク冒険者です。では!」
30歳前後のハンサムな顔立ちをした男冒険者からの問い掛けに対し、俺は柔かな表情で返答して即座に次の戦地へ向かい出す。
他にも聞きたいことがあったのだろう男冒険者の「あっ……」という声が耳に入るが、先を急ぐために敢えて反応せずに次の戦地へ向かい続ける。
「今は話してる時間が無いからな……あとは次に行く場所だけど……200の40ってところか? ココも急がないと厳しそうだ……」
駆けながらも次のことを考えていると、距離は近いためすぐに到着でき、そのままの勢いで魔法を唱えることに。
「今度はもっと広範囲の魔法じゃないと取り零しそうだな……よしっ、それなら! 来い、風狗!」
左手を左方に突き出し魔法を唱えると、掌から風で象られた猟犬が出現し、強風を起こして魔物達を威嚇する。
水蟒よりも小柄なせいか、風狗に怯んでいた魔物達は再び殺気を放ち、北門ではなく俺に目掛けて一斉に駆け出す。
「今回は無視されてないようだな……魔物自体には特に違いは無さそうだけど……?」
疑問に思いつつも、風狗を解き放つために左手を前方へ向けるのであった……
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