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第75話 アウロとフラム

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「なんだ……? ま、まさか、アウロ君の身に何か……!?」

 周囲の困惑する表情を目にして、そんな嫌な考えが脳裏をよぎると、背後からあの女魔導士が俺の元へ。

「!? な、なんでココに!?」

「す、すみません……居ても立っても居られなくて……あ、あの、アイツは、アウロは大丈夫でしょうか……?」

「……まだ、分からないな……」

「そ、そうですか……」

 この女魔導士は俺が上げた声を聞いていたらしく、俺の隣で共にアウロを待ちたい言い出したので、一緒にアウロが来るのを待つことに。


「そういえば、君の名前はなんて言うんだい? あっ、俺の名前はキュロスって言うんだけど、君って呼ぶのもなんか素気ないし、もし良ければ教えてもらえるかな?」

「は、はい、私の名前はフラムです……えっと、キュロスさん?」

「アウロ君にフラムさんか……2人とも良い名前だね」

「い、いえ、そんな……ありがとうございます。アイツもそれを聞いたら絶対に喜ぶと思います……」

「そう……」

「はい……」

 互いにアウロが気掛かりで無言になると、1人の大柄な男冒険者がゆっくりと近づいてくることに気づき、その男の背中には毛布に包まれてぐったりとしている若者の姿が。


「あ、アウロ! ねぇ、大丈夫!? 私よ! フラムよ! 折角会いに来たんだから起きてよ! ねぇ! ねぇってば!」

 アウロの姿を見るなり駆け寄っては声を掛けるフラム。
 すると、アウロは瞼を開き草臥れた表情でフラムへ返答し、その姿を見たフラムと俺は一先ず安堵の表情を。

「よぅ、こんなところまでご苦労さん。つーか、何しに来たんだよ。そっちも大変なんだろ?」

「こっちはもう大丈夫! キュロスさんが全部倒してくれたから! って、それよりアンタさぁ、立てなくなるほど頑張ったの? 人におぶってもらうなんてカッコ悪いよ? ほらっ、早く降りなよ!」

「……」

「ん? どうしたの? 急に黙っちゃって……?」

 無事であることに安堵したのも束の間、何やらアウロの……いや、アウロを含めた周囲にいる人達全員の様子がおかしい。
 先程の2人の会話には特におかしなところは無かったハズ。
 だが、誰の表情を見ても暗く気不味そうにしており、中には憐みの表情を見せる人もチラホラと。
 一体、アウロに何があったのだろうか……? 
 嫌な予感を感じつつもそう考えていると、突然アウロをおぶっている男が口を開く。

「と、突然すまん……俺はCランカーのガイというのだが、彼をおぶっているのには理由があるんだ……」

「り、理由……ですか……? も、もしかして、アウロの身体に何か異変が!?」

「あ、あぁ……実は戦闘中にーー」


 ガイの口からその理由を語られた直後、フラムはその場にへたり込み、両手で顔を覆いながら泣き出した。

「そ、そんな……なんでアウロが……うぅぅ……」

「フラムさん……」

 2人はまだ15歳と若く、きっと夢見て冒険者となったに違いない。
 しかし今、その夢が完全に絶たれたと知って未来に絶望しているのであろう。
 そしてそれを理解した周囲の人達もまた、なす術がなく、心を痛めて憐れむことしかできずにいる。

「なんでアウロが、か……」

 へたり込んで涙するフラムを見つめながら、ただただ悲しむことしかできずにいた……
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