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第68話 小悪魔の如く
しおりを挟む「すっ、すまん! 完全に早合点しちまった!」
俺からの説明を聞いたスレッグはそう述べながら頭を下げてきた。
本当に反省しているようなので、あまり気にしていない旨を伝え、次にやらねばならないことも同時に伝えることに。
「大丈夫ですよ。それよりモモをお願いしてもいいですか? 俺はあの2人のところへ行きますので……」
そう伝えるとスレッグは「おっ、俺も行くぞ!」と言ってモモを抱き上げたあと、真剣な眼差しで同行する意思をこちらに向けてくる。
そのあまりの真剣な眼差しに同行を許し、早々と門兵DとEの元へ向かうことした。
「2人とも大丈夫か!? ……あれ? 2人がいない……何故だ……?」
門兵の2人がいたであろう場所に到着したものの、肝心の2人の姿が見えず、一体どこに? そう思いながら辺りを見渡すと、遠方からあの2人の声が聞こえてくる。
「兄さぁぁーんっ! ご無事だったんスねぇぇーっ!」
「それなぁぁーっ! お怪我はないっスかぁぁーっ!」
大きく両手を振って走りながらも俺を心配する門兵の2人は、本当に呪縛に掛かっていたのかと疑うほどに元気であり、一体どのようにして呪縛を解き恐慌状態から立ち直ったのかが気になるところだ。
すると、門兵の2人が目の前まで来たので早速尋ねようとしたその時、背後から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「キュロスさん、お疲れ様です。とても素敵でしたよ」
俺を呼んだ女性はエリザと同じ第1級冒険者ギルド職員であり、あのシャカの妹でもある「セイナ」であった。
確か年齢は23歳で、シャカとは丁度一回り離れていると以前に教えてもらった気がする。
セイナはシャカと同じ金髪黒眼だがシャカとは違って気品があり、優しく冷静で何をしても完璧に事を成す、謂わゆる「デキる女」と呼ばれる類いの女性で、もしセイナがギルド職員をしていなければ俺は既に冒険者を辞めていただろう。
それは俺が無能で落ちこぼれと呼ばれていても、顔色一つ変えずに優しく親身になって対応してくれたから。
しかし、ギルド職員であるセイナが何故ここにいるんだ? という疑問が浮上したため、折角なので直接本人に聞いてみようかと。
「セイナさんは何故ここに? 今はとても危険な状況ですから、早くギルドへ戻った方がいいですよ?」
「ふふっ、ありがとうございます。優しいのですね? ですが、これも兄に頼まれてのことなのですよ?」
「えっ、ギルマスに? 一体何を頼まれたんですか?」
「えぇ、私が兄に頼まれたことはーー」
セイナの話だと、きっと俺が西門を死守しているのでその支援をするよう頼まれたそうで、本来なら魔物との戦闘中に後方から支援する手筈となっていたらしい。
それがいざ来てみれば1000を超える魔物の大群は既に倒されており、残るはアヌビシオのみとなっていたので、邪魔しないよう陰ながら見守っていたとのこと。
そしてその合間に門兵の2人を解呪して、他にも呪縛に掛かっている人がいないかを3人で見回っていたようだ。
「なるほど、そういう経緯があったのか……でも、一体どうやって解呪を……?」
俺が無意識にそう呟くと、セイナは艶やかに微笑み「しぃーっ……」と小悪魔の如く内緒の仕草をするのであった……
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