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第63話 モモ

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「……ん? なんか、身体の中がおかしい……? ゔっ!? こ、これは!?」

 アンチカーズを唱えて少し経つと、突如見えない何かが体内で暴れ出す。

「ぐぁぁぁっ! く、苦しい……でも、これで呪縛が解けるのなら……!」

 魔法による拒絶反応で苦しみ悶える。
 この苦悶の原因は、抗呪魔法であるアンチカーズを使用したことで呪縛と抗呪が互いにせめぎ合い、その影響で身体が拒絶反応を起こしたからだ。
 それでも、これで呪縛が解けるならばと歯を食いしばり必死に耐えて、一刻も早くモモを助けに行かねばと決意を固める。しかし……


「キキッ!? ギャッーー」

 今までに聞いたことのないモモの声が聞こえ、すぐに声のした方へ目を向けると、あの時よりも遥かに重い一撃が頭部に直撃し、再び吹き飛び転がっていくモモの姿が。
 その転がるモモの姿は、受け身や抵抗を一切せずにまるで人形のようで、転がり終える頃には魔力の濃さはほぼ透明となり今にも消えてしまいそうなほど。

「モモォォォーッ!! 起きろぉぉぉーっ!! 起きてくれぇぇぇーっ!!」

「……」

 俺の声に何一つ反応を示さないモモ。
 そのモモの首は、曲がってはいけない方向へ曲がっており、即死ではないのが不思議なほどに悲惨な状態となっていた。

「そ、そんな……モモ、起きてくれよ……なぁ、頼むからさ……」

「……」

 懇願する俺の声もモモには届かない。
 すると、瀕死であるモモの元へアヌビシオがゆっくりと近づいていく。

「まさか、モモにトドメを刺すつもりじゃ……」

 そう思い呟いたあと、無意識に叫んでいた。

「待てぇぇぇぇーっ!! 殺すなら俺を殺せぇぇぇぇーっ!!」

 魔動物言語理解のスキルを持つ俺の言葉なら魔物にも伝わるから、奴もなんらかの反応を示すハズ。
 叫んだあとにそう考えたのだが、その考えは正解のようで、アヌビシオはピタリと立ち止まり俺の方に顔を向ける。
 あとはそのままこちらへ来さえすれば、その間に必ず呪縛を解いてやる! そう画策する。だが……


「な、なんだ……? あの怪しい笑い顔は……ま、まさか……!?」

 アヌビシオは俺に向けてニタリと怪しげな笑みを浮かべると、再びモモの方へ振り向いて歩き出す。
 この時に初めてアヌビシオの感情が露わになり、奴の本性が慎重かつ残忍なことを理解した。
 そしてその残忍さを露わにしたまま歩を進めると、2匹の距離は5mを切ることに。

「早く助けに! ……なっ!? 身体が重い!? やっぱり解呪魔法じゃないとダメなのか!?」

 呪縛は弱体化したが身体は岩のように重く、足を引きずりながら歩くのがやっとの状態。
 だがそれでも諦めるわけにはいかない。
 もし諦めてしまったらモモを見殺すことになるのだから。
 けど時間は無い。
 なら、今この時この瞬間に出せる全ての力とチカラを注いで解呪しなければ。一刻も早くモモを救うために……


「うぉぉぉぉぉーっ!! 呪縛なんて引きちぎってやらぁぁぁぁぁーっ!!」

 今まで遣ったことのない言葉を発しながら力とチカラを込める。
 すると、それに呼応するかのようにニカナが虹色に輝き出し、その輝きは嘗てないほどの眩い光を放っていた。

「!? こ、これは……!?」

 そしてこの時、何かが全身に流れ込むのを感じたのであった……
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