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第50話 開戦
しおりを挟む「……!! この反応は!」
街中を駆け抜ける最中、魔力探知を実施し早くも反応を探知。
どうやら西門のところで戦闘中の模様。
相手の魔物は1匹だけのようだが、魔力はそこそこ大きく移動速度は速そうだ。
「急いで助けに行かなきゃな……」
そう呟きつつも前だけを見据える。
そして疾風の如く駆け抜けられるよう、魔法を唱えた。
「疾駆!」
風のチカラを借り、先程よりも速く駆け抜けていく……がヒュドラの巣窟内よりもスピードが出てしまい、危うく転びそうに。
「うおっ、あっぶな……でも、この状態に慣れればヒュドラにも余裕で勝てそうだ!」
今よりも強くなれる! その希望を密かに喜びながら西門を目指してゆく……
「や、やめろ! ここ、こっちに来るな!」
何やら門兵が魔物に襲われているようで、魔物に遮られて顔は確認できていないが、声はどこかで聞いた気が。
もう少し近づけば魔法を当てられるので、このまま前進することにした。
「ぎゃあぁぁー!! 腕を噛まれたぁぁー!!」
残念ながら噛まれてしまったようだが、やはりこの声に聞き覚えがある。
しかも聞きたくない類いの声で、何故か助ける気が失せてしまう。
だが、それでも助けなければ冒険者として失格だろうと思い、一応は助けることに。
すると、突然モモは俺の肩から降りて右手を挙げた。
それはきっと、俺の邪魔をしたくはないからだろう。
その気遣いに俺も右手を挙げて応えつつ、振り返ることなく駆けていく。
「痛い、痛い、痛い! 頼む! 離してくれぇ!」
右腕を噛まれ、懇願しながらも無理矢理に剥がそうとジタバタしているが、それは寧ろ逆効果だ。
何故なら懇願しても言葉が通じないし、自らが傷口を広げてしまっているから。
というか、普通なら分かると思うのだが。
しかも鎧の上からなので致命傷にはなっていないのにあの慌てようときたら……くくっ!
だけど時間稼ぎにはなってくれようで、俺は小さく笑いながらも一気に近づき魔法を発動した。
「水牢!」
左手の掌から拳大の大きさの水球を魔物に目掛けて放出。
速度はそれほど速くはないが、まだ俺には気づいていないので恐らくは当たるだろう……
「!? あれっ、避けられた!?」
まさか回避されるとは。
こちらを見ることなく避けられるという想定外のことに驚き、思わず声が出てしまった。
すると、魔物に回避された水球が門兵に直撃。謂わゆる、流れ弾である。
水球が門兵を囲むくらいの大きさまで膨れ上がり、見事に水牢の出来上がりだ。
「な、なんだこれは!? ここから出れないぞ!?」
それはそうだろう、なんせ捕縛系の魔法なのだから。
でもこれで襲われる心配は無くなったのだから、寧ろ喜んでもいいのでは? というか、あの顔はどこかで見たような……?
そう思いながら魔物の方へ目を向けると……
「へ、ヘルハウンド!? 何故こんなところに!?」
「ヘルハウンド」は脅威ランクBの犬系魔獣で、俊敏性に優れているうえに特殊な炎を吐く、街中では戦いたくない魔物である。
しかし、本来ならヒュドラの巣窟よりも遠方に生息しているはずなのだが……?
「ま、まさか、こんなのが大勢で攻めてきたりはしないよな……!?」
冷や汗を掻きつつ、ヘルハウンドと対峙するのであった……
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