45 / 128
第45話 小柄な冒険者と銀魔狼
しおりを挟む「えっ!? えっ!? 待って!? もしかして、モモちゃんの言葉が分かるの!?」
驚きのあまり声を上げて問い掛けてくるセリーヌに、俺は仕出かしたことを後悔しながら返事をする。
「あ、あぁ……そうだけど……」
「マジかよ!? お前、そんなスキルまで使えんの!?」
『……す、凄い……やっぱりな……無能なんかじゃ……』
みんなが驚くのも無理はない。
「魔動物言語理解」は魔物や動物の感情が読めるとされているテイマーでさえ、ほんの一握りの者にしか得られないほどの超絶スキルなのだから。
(あぁ、厄介事になりそうで不安になってきた……)
そんな不安がる俺に、1人の女性が声を掛けてきた。
「すっ、凄いです! 凄すぎです! あなた様はもしや、凄いテイマーさんですか!?」
「えっ!? いや、俺は……ん?」
燥ぎながら俺の目の前まで来た女性は、桃髪ではねっ毛のある小柄な可愛らしい冒険者である。
ふと女性の隣を見ると、銀色の毛並みを持つ魔犬……いや、魔狼がいるようだが、何故かこの魔狼からは気配を全く感じない。
(見たことのない魔狼だ……一体、なんて種類なんだろう? まぁ、取り敢えずは銀魔狼と呼ぶか……)
女性の方ではなく銀魔狼の方へ目を向けていると、再び女性の方から声を掛けてきた。
「私さんの名前はムツコと言うですよ! あなた様の名前はなんと言うですか!?」
ムツコの圧に押されながらも名前を伝え、ついでにテイマーではないことも伝える。
テイマーではないことが分かり落胆するかと思いきや、ムツコは瞳を輝かせながら俺に質問してきた。
「そそ、それは凄すぎです! テイマーさんでもない方があのスキルを持つなんて、一体全体どうやって手に入れたですか!?」
ムツコの質問により周囲からの視線がより一層強まる。
しかし、その期待に応えることはできないので、なんとか誤魔化すしかない。
(うーん……なんて答えるべきか……)
ニカナの話をせずに納得させられる言葉が見つからず、返答に困り焦り出す。
するとその最中、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「キュロスさん? 報告確認が終わったわよ?」
エリザが俺を呼んでいるようで、後ろ姿の俺には気づいていない様子。
「す、すみません……呼ばれてしまったので、これで……」
「むぅ……やむを得ないですねぇ……」
ムツコに対し申し訳無いと思いながらエリザの元へ向かい、報告確認の結果を聞くことに。
周囲にいる冒険者達もきっと解散してくれるだろう、そう思いながらエリザの話を聞いていたのだが、視線が途切れる気配は無い。
すると、話に集中できずにいるのがバレたのか、エリザは俺の顔に顔を寄せて一言。
「ねぇ、大丈夫?」
以前なら悪態を吐かれていそうな場面だが、今は心配してもらえるようになって本当に良かったと思う。
だが、こんな至近距離で目と目が合うと緊張してしまい、余計に集中できそうにない。
「だ、大丈夫です……は、話の続きをお願いします……」
「そう? なら良いけど……」
本当は大丈夫ではないが、大丈夫と言うしかないだろう。だって男だもの。
そしてその大丈夫を現実にするべく、顔を赤く染めながらもエリザの話に耳を傾け、無理矢理にでも集中できるよう勤しむのであった……
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる