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第38話 大声の主
しおりを挟む「あ、あの、今、大丈夫ですか?」
「えっ!? な、何よ……まさか、私に文句でも言いに来たつもり!?」
エリザは俺を一目見るなり、動揺し身構える。
そこには以前の面影は全く見られず、あの震える程の恐怖心にも襲われる気配は無い。
(今なら普通に会話が出来そうだ……よし、聞いてみるか!)
思い切って、俺の髪色について聞いてみようと決心する。
「い、いえ、そうではなく……あの、エリザさんは俺の髪色について何か知りませんか?」
「!? なっ、何を急に!? あ、あなたの髪色の事なんて何も知らないわ!?」
俺の問い掛けにエリザは、先程よりも激しく動揺し焦り出す。
(やっぱり何か知ってる……でも、何故隠そうとする必要が……?)
幾ら考えても埒が明かず、やはりエリザから直接聞くしかないと判断。
どうしても知りたい俺は、声を上げてエリザに問い質す。
「エリザさん、お願いします! 俺はどうしても知りたいんです! この黒髪が俺自身と、どんな関係があるのかを!」
「そっ、そんな事を言われても、私には判断しかねるわ!? ……それに、知ったところでどうしようも無い事なのよ?」
「それでも俺はーー」
「そこまでだ!」
『!?』
問い質された事で返って冷静になるエリザ。
それでも食い下がろうと俺は言葉を発したが、その言葉は何者かの大声によって遮られてしまう。
そして突然の大声に俺とエリザは一瞬驚き、その後すぐに大声の主の方へ同時に振り向いた。
「その件については俺様が超教えてやる。だから超黙って付いて来い……勿論、エリザもな!」
「えっ!? そんな……はい……」
エリザは俯き落ち込みながら大声の主の元へ向かい、俺も考え事をしながらエリザの後を付いて行く。
(あの人、相変わらず偉そうだな……)
偉そうに俺達を連れて行こうとする人物は、先程の大声の主でもある、この冒険者ギルドのギルドマスター「シャカ」であった。
名前は穏やかそうな感じではあるが、当人自体は全くの真逆で荒々しく「超怪力」を持つ人物なのだ。
「確か、ギルマスの固有スキルも……」
「あん? なんか言ったか?」
「!? い、いえ、何も……」
(うぅ、この人も怖いんだよなぁ……)
「そうか……それより、なんでそんなにビクついてんだ?」
「べ、別にビクついてなんて……」
(それはあんたが怖いからだよ!)
「ふんっ、まぁいい、もうすぐ俺様の部屋に着くからな。もし通り過ぎでもしたら超ブッ飛ばす!」
「は、はい……」
(だから怖いって!)
確かにシャカは怖いがエリザの時とは違い、悪寒や身体の震えは一切無く、ただ絡まれているだけの様な感覚で特に嫌ではない。
それはきっと俺を見下し蔑む仕草や、嘲笑い貶す様子がシャカからは見受けられないからだろう。
「ほらよ、ここが俺様の部屋だ。Fランクが入るなんざ、前代未聞の事なんだならな? 超ありがたく思えよ?」
(この人、本当に偉そうだなぁ……)
そう思いながらシャカの部屋へ、きちんと最後に入る俺であった……
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