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第33話 一瞬の油断

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「さぁ、行くわよ! 纏雷てんらい!」

 魔法を唱えた直後にイズナは落雷に打たれ、全身に雷電を纏う。
 その姿はまるで、雷との一体化である。

『出たぁーっ! 纏雷だわ! やっちまえーっ!』

 野次馬達が騒ぎ出す。
 それほどまでに信頼性の高い魔法なのだろう。
 だが、それよりも今は気掛かりなことが。

「なっ!? そ、その魔法は!?」

 纏雷を見た瞬間、驚きから油断をしてしまう。
 そしてその一瞬の油断をイズナは見逃さず、早急に攻撃を仕掛けてきた。

「よしっ、チャンス!」

 そう声を上げると、再びイズナは一瞬でその場から消えて俺の背後へ回り込む。
 しかし、油断しつつも瞬時にそれを読んで振り返る。
 だが更にイズナは一瞬で消えて、その後も各所に現れては消えてを繰り返す。
 すると次第には姿が完全に見えなくなり、唯一見えるのは雷の残像のみ。


「……なるほど、確かに速い……でも!」

 常人の瞳では全く捉えられないイズナの姿も、ニカナを持つ俺の瞳ならば捉えられる。
 そのことを理解して迎撃することに。

「さぁ、これで終わりよ!」

 雷電を纏いながらの高速移動中、双剣にも雷電を纏わせて死角からの十字斬り……


「……ココだ!」

 動きを先読みして、イズナのいるだろう死角へ向けて優しく掌底を打つ。

「なんでーー」

 何かを言い放つ前に掌底が胸部に直撃すると、イズナは後方へと吹き飛んだ。

(しまった、女性の胸に……A……いや、Bか?)

「ジィーッ……」

 俺の思考を読んだかの如く、セリーヌが俺を睨みつける。
 すると、その視線に気づいた俺は気付かぬフリを。


「……ん? なっ!?」

 目覚めたトサックが丁度こちらへ歩いており、そのトサックにイズナが背面で突撃する形となった。

「どわっ!?」

「きゃっ!?」

 トサックはイズナとの衝突後に再度吹き飛び地面を転がり、一方でイズナは衝突後その場に倒れて地に伏せる。


「おぉぉ……い、いてぇぇ……」

 トサックは仰向けとなり悶絶。

「うぅぅ……もう、無理だわ……」

 イズナは胸と背中のダメージによって、地に伏せたまま苦しみ戦意喪失。

『!?』

 一連の流れを目の当たりにしたエリザや野次馬達……もとい観衆は、無言で驚き唖然とする。

「……」
(イズナまでこんなにあっさりと……一体、どうやってこんなチカラを……?)

 セリーヌは何かを考え込んでいるようだが、それが何かは分からない。
 そして、イズナが唱えたあの魔法も……


「ふぅ……思わず油断したけど、なんとかなったな……でも、どうやって纏雷を……?」

 纏雷を目にした瞬間にイメージが流れ込み、その感覚はニカナの魔法を閃く時と同一の感覚であった。

「……まぁ、いいか……あとで聞いてみれば……」

 そう呟いたあとに再びエリザの方を見ると、ポカンと口を開いて唖然としたままの姿が。

(これで、少しでも俺を認めてくれたら……)

 ほんの淡い期待を持つと、突然地面から黒色の鎖が出現しては身体中に巻きついてきた。

「な、なんだ!? これは……影? ということは、まさか……」

 急な事態に驚き動揺していると、観衆の中から声が聞こえてくる。

「まぁ、こんなもんだろ?」

 その言葉と共に、一人の男が姿を現した…… 
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