33 / 128
第33話 一瞬の油断
しおりを挟む「さぁ、行くわよ! 纏雷!」
魔法を唱えた直後にイズナは落雷に打たれ、全身に雷電を纏う。
その姿はまるで、雷との一体化である。
『出たぁーっ! 纏雷だわ! やっちまえーっ!』
野次馬達が騒ぎ出す。
それほどまでに信頼性の高い魔法なのだろう。
だが、それよりも今は気掛かりなことが。
「なっ!? そ、その魔法は!?」
纏雷を見た瞬間、驚きから油断をしてしまう。
そしてその一瞬の油断をイズナは見逃さず、早急に攻撃を仕掛けてきた。
「よしっ、チャンス!」
そう声を上げると、再びイズナは一瞬でその場から消えて俺の背後へ回り込む。
しかし、油断しつつも瞬時にそれを読んで振り返る。
だが更にイズナは一瞬で消えて、その後も各所に現れては消えてを繰り返す。
すると次第には姿が完全に見えなくなり、唯一見えるのは雷の残像のみ。
「……なるほど、確かに速い……でも!」
常人の瞳では全く捉えられないイズナの姿も、ニカナを持つ俺の瞳ならば捉えられる。
そのことを理解して迎撃することに。
「さぁ、これで終わりよ!」
雷電を纏いながらの高速移動中、双剣にも雷電を纏わせて死角からの十字斬り……
「……ココだ!」
動きを先読みして、イズナのいるだろう死角へ向けて優しく掌底を打つ。
「なんでーー」
何かを言い放つ前に掌底が胸部に直撃すると、イズナは後方へと吹き飛んだ。
(しまった、女性の胸に……A……いや、Bか?)
「ジィーッ……」
俺の思考を読んだかの如く、セリーヌが俺を睨みつける。
すると、その視線に気づいた俺は気付かぬフリを。
「……ん? なっ!?」
目覚めたトサックが丁度こちらへ歩いており、そのトサックにイズナが背面で突撃する形となった。
「どわっ!?」
「きゃっ!?」
トサックはイズナとの衝突後に再度吹き飛び地面を転がり、一方でイズナは衝突後その場に倒れて地に伏せる。
「おぉぉ……い、いてぇぇ……」
トサックは仰向けとなり悶絶。
「うぅぅ……もう、無理だわ……」
イズナは胸と背中のダメージによって、地に伏せたまま苦しみ戦意喪失。
『!?』
一連の流れを目の当たりにしたエリザや野次馬達……もとい観衆は、無言で驚き唖然とする。
「……」
(イズナまでこんなにあっさりと……一体、どうやってこんなチカラを……?)
セリーヌは何かを考え込んでいるようだが、それが何かは分からない。
そして、イズナが唱えたあの魔法も……
「ふぅ……思わず油断したけど、なんとかなったな……でも、どうやって纏雷を……?」
纏雷を目にした瞬間にイメージが流れ込み、その感覚はニカナの魔法を閃く時と同一の感覚であった。
「……まぁ、いいか……あとで聞いてみれば……」
そう呟いたあとに再びエリザの方を見ると、ポカンと口を開いて唖然としたままの姿が。
(これで、少しでも俺を認めてくれたら……)
ほんの淡い期待を持つと、突然地面から黒色の鎖が出現しては身体中に巻きついてきた。
「な、なんだ!? これは……影? ということは、まさか……」
急な事態に驚き動揺していると、観衆の中から声が聞こえてくる。
「まぁ、こんなもんだろ?」
その言葉と共に、一人の男が姿を現した……
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる