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第32話 俺の実力

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「よーし、この辺りでいいだろう!」

 赤髪モヒカン頭のトサックは、ギルドから少し離れた噴水広場まで俺を連れて移動すると、急に立ち止まりそう声を上げた。
 どうやらこの噴水広場で俺の実力を試すつもりのようだが、俺達が到着した直後から実力を見極めたいのかただの冷やかしなのか、ゾロゾロと野次馬達が集まり出す。

(はぁ……まさか、こんなに人が集まるなんて……)

 ニカナのおかげで一度は緊張が緩和されたのだが、大人数に注目されることで再び緊張が増してきた。

「よしっ、それじゃあ始めるぞ! ほらっ、お前から仕掛けてこい! それで実力を試してやるからよ!」

 トサックは厳つい顔を持ち、見るからに頑丈そうな筋肉を身体に纏っている。
 その姿はいかにも脳筋らしい風貌で、余程打たれ強さに自信があるのだろう。

「じゃ、じゃあ……行きますよ?」

「おう! どんと来い!」

 トサックのお言葉に甘え、俺は目の前までテクテクと歩いて接近し、軽ーく腹パンを1発。

「そーっと……あっ!? しまった……」

 俺からの腹パンを受けたトサックは、あっと言う間に20m先まで吹き飛びそのまま気絶。見事、俺の勝利となった。


「……え?」

 エリザや野次馬達は、現状把握ができずにただ茫然としている。

「ぷくくっ……」

 エリザ達の茫然とする姿を見て、笑いを堪えるのに必死なセリーヌ。

「あのぅ……このあとは、一体どうすれば……?」

 あまりにもあっさりと終わってしまい、困惑しながらもエリザに問い掛ける。

「えっ……と、ま、まぁまぁじゃないかしら……?」

「あ、いえ、そうではなく、これからどうしたら良いのかを聞いたんですが……?」

「えっ!? あ、と、その……」

(くふっ……笑ってはダメだ、我慢しなきゃ!)

 あのエリザが動揺し狼狽える姿には流石の俺でも笑いそうになり、そんな笑いを堪えるなか、エリザ……ではなく、1人の冒険者が口を開く。


「次は私よ!」

 その女性はBランク冒険者の「イズナ」という名の知れた双剣士で、そのイズナも以前から俺の存在を疎ましく感じていたようだ。その理由は……

「私は弱い男が大嫌いなの!」

 ……だそうだ。でも俺の他にも弱い男なら山程いるのでは? と思いはしたが、言わぬが仏である。
 ふとエリザへ目を向けると、ニヤニヤと余裕の表情を見せており、どうやらイズナが勝つと信じて止まないのだろう。
 そのようなことを考えていると、イズナが双剣を抜いて一言。

「それじゃあ、行くわよ!」

「えっ、は、はい!」

 俺が返事をした瞬間、イズナはその場から姿を消した。

「はぁ!」

 その掛け声と共に一瞬で俺の背後へ回り込み、双剣での十字斬り……のはずが、それよりも俺の方が速く後ろへ振り返ったため、イズナは警戒し距離を取ることに。


「ど、どういうこと!?」

 イズナが驚くのも無理はない。
 この街でイズナの動きを見切れる者は5人といないはずなのだから。

「あなた、どうやら私を本気にさせたようね!」

(それは、明らかに負けフラグの台詞では……)

 そう思いながらもイズナからただならぬ気迫を感じ取れたため、警戒しながら攻撃に備えるのであった……
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