32 / 128
第32話 俺の実力
しおりを挟む「よーし、この辺りでいいだろう!」
赤髪モヒカン頭のトサックは、ギルドから少し離れた噴水広場まで俺を連れて移動すると、急に立ち止まりそう声を上げた。
どうやらこの噴水広場で俺の実力を試すつもりのようだが、俺達が到着した直後から実力を見極めたいのかただの冷やかしなのか、ゾロゾロと野次馬達が集まり出す。
(はぁ……まさか、こんなに人が集まるなんて……)
ニカナのおかげで一度は緊張が緩和されたのだが、大人数に注目されることで再び緊張が増してきた。
「よしっ、それじゃあ始めるぞ! ほらっ、お前から仕掛けてこい! それで実力を試してやるからよ!」
トサックは厳つい顔を持ち、見るからに頑丈そうな筋肉を身体に纏っている。
その姿はいかにも脳筋らしい風貌で、余程打たれ強さに自信があるのだろう。
「じゃ、じゃあ……行きますよ?」
「おう! どんと来い!」
トサックのお言葉に甘え、俺は目の前までテクテクと歩いて接近し、軽ーく腹パンを1発。
「そーっと……あっ!? しまった……」
俺からの腹パンを受けたトサックは、あっと言う間に20m先まで吹き飛びそのまま気絶。見事、俺の勝利となった。
「……え?」
エリザや野次馬達は、現状把握ができずにただ茫然としている。
「ぷくくっ……」
エリザ達の茫然とする姿を見て、笑いを堪えるのに必死なセリーヌ。
「あのぅ……このあとは、一体どうすれば……?」
あまりにもあっさりと終わってしまい、困惑しながらもエリザに問い掛ける。
「えっ……と、ま、まぁまぁじゃないかしら……?」
「あ、いえ、そうではなく、これからどうしたら良いのかを聞いたんですが……?」
「えっ!? あ、と、その……」
(くふっ……笑ってはダメだ、我慢しなきゃ!)
あのエリザが動揺し狼狽える姿には流石の俺でも笑いそうになり、そんな笑いを堪えるなか、エリザ……ではなく、1人の冒険者が口を開く。
「次は私よ!」
その女性はBランク冒険者の「イズナ」という名の知れた双剣士で、そのイズナも以前から俺の存在を疎ましく感じていたようだ。その理由は……
「私は弱い男が大嫌いなの!」
……だそうだ。でも俺の他にも弱い男なら山程いるのでは? と思いはしたが、言わぬが仏である。
ふとエリザへ目を向けると、ニヤニヤと余裕の表情を見せており、どうやらイズナが勝つと信じて止まないのだろう。
そのようなことを考えていると、イズナが双剣を抜いて一言。
「それじゃあ、行くわよ!」
「えっ、は、はい!」
俺が返事をした瞬間、イズナはその場から姿を消した。
「はぁ!」
その掛け声と共に一瞬で俺の背後へ回り込み、双剣での十字斬り……のはずが、それよりも俺の方が速く後ろへ振り返ったため、イズナは警戒し距離を取ることに。
「ど、どういうこと!?」
イズナが驚くのも無理はない。
この街でイズナの動きを見切れる者は5人といないはずなのだから。
「あなた、どうやら私を本気にさせたようね!」
(それは、明らかに負けフラグの台詞では……)
そう思いながらもイズナからただならぬ気迫を感じ取れたため、警戒しながら攻撃に備えるのであった……
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる