25 / 128
第25話 無能
しおりを挟む「なっ、なんでそのことを知っているんだ!? いっ、一体どこでその情報を……!?」
突然俺からの反撃を受けた門兵Aは、動揺を見せたうえに慌て出したので、透かさず追い討ちを掛ける。
「そんなことよりも、誰に金を貰ってこんな下らないことを依頼されたんですか!?」
「うがっ!? そ、そそ、それは……」
的確な追い討ちを受けた門兵Aは、更に動揺して目も泳ぎ出す始末。
それを好機と捉えて更に問い詰める……はずがその時、ある人物が姿を現した。
そのある人物を見た直後、全身が凍るように冷たくなり、同時に両足が震え出す。
「あら? 奇遇ね、こんな所で会うなんて。ふふっ、残念だけど門限はとうに過ぎてるわ。また明日いらっしゃい」
そのある人物とはギルド職員であるエリザのことであり、エリザの高慢で高飛車な態度を目にした瞬間、黒幕だと悟り、そして疑問を抱く。
きっとエリザが根回しをしたに違いない、でも一体何故? その疑問も含めて抗議しようとしたが恐怖から声が出ず、終いにはエリザからこの一言を浴びる。
「あなたのような無能は、私達を楽しませるだけに生きていれば良いのよ?」
思いもよらぬ言葉に動揺させられて震えが強まるが、それでもなけなしの勇気を振り絞り口を開く。
「な、何故……何故、そんな酷い言葉を……?」
「あら? だって事実でしょ? 貴方が無能で落ちこぼれのFランク冒険者だということ」
「い、いえ……はい……」
「ふんっ、漸く理解したの? 本当に物分かりが悪いんだから。これだから無能は困るわ」
「……す、すみません……」
「はぁ……本当に無能ね」
「……」
「無能」その言葉を連呼されて、怒りよりも惨めさを覚え、そして、心が折れた。
それは、今までの人生で充分身に染みていたから……
俺の状態を把握したのか、エリザと門兵Aは高笑いをしながら闇に消え、門兵BとCは無言で持ち場へ戻り、一方の俺は俯き無言のまま西門から立ち去った。
「ニカナでも心の傷は癒せない」その証明が成された瞬間である。
結局、心が折れてしまった俺は野宿をすることになり、街の外壁に身を寄せた。
そのあとは外壁にもたれ掛かりながら座り、特にすることもないのでそのまま寝ることにした……が、寝る前に様々なことを悩み出す。
(何故、俺にあんな姑息な意地悪を? 何故、俺にあんな凍える視線を? 何故、俺にあんな酷い言葉を? 何故……何故、俺ばかりがこんな目に……)
悩みに悩んだ挙句、声を殺しながら泣いた。
俺の惨めな姿を目の当たりにしたモモは、心配そうに俺の懐まで来て抱きついてくる。
その健気な行動に、自然とモモをギュッと抱き締めていた。
「……モモ、そろそろ寝ようか……」
「……」
モモを抱き締めてからどれほどの刻が経ったのだろうか。
既にモモは寝てしまったようで、俺からの言葉に返答はなく、辺りで鳴く虫達の音だけが耳に響いていた。
そして寝る直前、アイテムポーチから毛布を取り出しながら呟く。
「モモ……ごめんな……」
そう呟くとモモを抱いたまま、寒空の下で夜を明かすのであった……
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
【完結】異世界アイドル事務所〜アナタの才能、発掘します!〜
成瀬リヅ
ファンタジー
「願わくば、来世で彼女をトップアイドルに……」
そう思いながら死んだアイドルプロデューサーの俺・小野神太は、気付けば担当アイドルと共に多種族の住む異世界へ転生していた!
どうやら転生を担当した者によれば、異世界で”トップアイドルになれるだけの価値”を示すことができれば生き返らせてくれるらしい。
加えて”アイドル能力鑑定チート”なるものも手に入れていた俺は、出会う女性がアイドルに向いているかどうかもスグに分かる!なら異世界で優秀なアイドルでも集めて、大手異世界アイドル事務所でも作って成り上がるか!
————————
・第1章(7万字弱程度)まで更新します。それ以降は未定です。
・3/24〜HOT男性向けランキング30位以内ランクイン、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる