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第20話 全焼

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「こっちを見ろぉぉぉーっ!!」

 無意識のうちに俺は、喚虎の気を引くために大声で叫んでいた。
 叫んだあとに俺自身も驚いたが、決して顔には出さないよう努める。

「!? ヴゥゥゥーッ!!」

 俺の存在に気づいた喚虎はこちらを見るなり唸り出し、その隙にピンクモンキーの子どもは窮地を無事に脱出。

(よし、どうやら無事に避難できたようだな……さて、次はどうするか……)

 ピンクモンキーの子どもが喚虎から離れたことで巻き添えにせずに済み、喚虎のみを攻撃可能な状態となったので、透かさず攻撃に出ることにした。


「先制だ! 水穿!」

 喚虎に向け水穿を唱える。
 俺の掌から一筋の水線が、回転しながら一直線に喚虎を目掛け飛んでいく。
 しかし喚虎は右側へ跳んで水穿を回避し、そのまま俺に向かって駆け出した。

「ま、マズい! 水壁!」

 咄嗟に水壁を唱えて身を守る。
 俺と喚虎の間に水の障壁を出現させ、喚虎の侵略を阻む……が喚虎は水壁の手前で急停止して、その反動を利用しながら一気に俺の左側へと回り込んだ。

「ギャァァァーッ!!」

 喚虎は喚き、爪を剥き出しながら俺に襲い掛かる。
 これは危険だと察知すると、瞬時に後方へ跳んで回避した……はずが、避け切れずに負傷。

「痛っ! あ、血が……」

 左腕から出血したうえに思うように動かない……どうやら、想像するよりも深傷のようだ。

「は、ハイヒール!」

 即座に治癒魔法で左腕の回復を図る。
 すると負傷箇所に白光が集まり出して、傷が見る見るうちに治癒されていく。
 ハイヒールは中級の治癒魔法であり、中傷までなら僅か数秒で治せるほどの治癒効果を有しているのだ。

「よし、これで左腕は動くようになった……あとは喚虎をどう倒すかだけど……」

 後退りで距離を取りつつ、喚虎を倒すための策を考え始める。


(遠距離からの攻撃は回避されるし、かと言って接近すれば攻撃する前にヤられるだろう……)

 俺は攻めあぐね困惑。
 だが策を考えつく間もなく、再び喚虎が駆け出した。

「ギュァァァーッ!!」

 喚きながら駆ける喚虎のスピードは先程よりも速く、あっと言う間に俺の目前まで迫りくる。
 その威圧感たるや流石は脅威ランクBなだけはあり、同レベルの魔物の中でも上位に位置しているハズ。
 そんなことを考えながらも急いで地面に左手を突いて、これしかないと賭けで魔法を唱える。 

「くっ、これしか! 黒沼くろぬま!」

 魔法を唱えた直後に左手の掌から前方へ影が広がり出し、その影を喚虎が踏むとそのまま脚が影の中に埋まり、見事賭けに勝って足止めに成功。
 今が好機と見て即座に次の魔法を唱えることに。

炎柱えんばしら!」

 地面に突いたままの左手の掌から導火線のように火種が放たれて、その火種は喚虎の真下まで導かれる。
 すると次の瞬間、螺旋状に立ち昇る火柱が発生し、喚虎の全身が一気に燃え出した。

「す、凄い……」

 想像以上の火力に思わず驚愕。
 寧ろ、その火力が強すぎて体毛や皮膚がすぐに燃え尽きてしまったのだ。謂わば、全焼である。
 そして今もなお、喚虎は轟々と燃え続けており、それを眺めながらあることを思う。

(これじゃあ、買取ってもらえないよなぁ……はぁ……)

 ショボンと肩を落としながらも俺は、見事勝利を手にしたのであった……
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