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第12話 対ヒュドラ戦
しおりを挟む「うぅっ、酷い臭いだ……でも、何かがおかしい……もしかして、鼻か……!?」
沼地を進んでいると、今までに嗅いだことのない臭いに鼻が麻痺してきた様子。
恐らくこれは、毒沼から発せられる神経毒によるものだろう。
「うん、どうやら大丈夫そうだな……でも……」
本来なら何も対策をしていなければ毒に侵されて動けなくなっているところだが、ニカナのおかげでこの程度で済んでいるのだと考えられる。
しかし、逆に言えばニカナでも完全には防げないということの証明でもあるのだ。
「早く、早く急がなきゃな……」
毒やニカナの件を理解したことにより、できるだけ早めに依頼を達成させ、一刻も早くこの場から退避したいという思いが芽生え出す。
「それにしても、一体どこにあるんだ?」
暫くの間、件の浄化草を探しているが一向に見当たる気配は無い。
そこで何か策を練らねばと考え、歩きながらも思案する。
「確か情報によると、浄化草は浄化作用のある魔力を放出し続けている……だったよな……?」
冒険者ギルドの職員Cから聞いた情報を思い出しながら引き続き思案に集中。
「うーん……よしっ、試してみよう!」
策を練り終えたので一旦立ち止まり、瞳を閉じながら広がる波紋のように魔力を展開。謂わゆる、魔力探知である。
「……!! 感じる……こっちだ!」
魔力探知により、魔力を感じた地点へ向けて歩き出す。
だが、それと同時に嫌な予感も感じており、それは「ヒュドラ」の存在に他ならない。
先程の魔力探知で既にヒュドラらしき魔力を探知していたのである。
なのでそれからは、ヒュドラを警戒しながら向かうことに。
「よし、もうすぐだ……」
浄化草の魔力を探知した地点まであと少し。
このまま行けばヒュドラに遭うことなく依頼達成となる。
目的地へ近づく度に少しずつ依頼達成への意識が強まり顔が緩む。
「よしよし、このまま行けば……」
しかしその時、希望を打ち砕くかの如く背後から魔物が襲ってきたようで、木々がメキメキと音を立てて薙ぎ倒されていき、ズンズンと沼地が振動するほどの足音が聞こえてきた。
余程の巨躯を持っていないとこうはならず、そしてこの沼地にいる巨躯を持つ魔物といえば……
「なっ!? もしかして、ヒュドラか!?」
そう、ヒュドラによる強襲である。
俺はヒュドラとの間合いを取りながら魔法を唱えた。
「れっ、裂空!」
ヒュドラの九ツ首のうち、一つを難なく切断。
奥に生えていた木々も次々と倒れていく。なんて凄まじい斬れ味だ。
しかしすぐに新たな首が生え、傷口も綺麗に再生される。
「は、はぁ!? 嘘だろ!?」
再生する光景を目の当たりにして、酷く動揺しては狼狽え出す俺。
「ど、どど、どうすれば!?」
どうにか再生させずに倒す策を考えてはいるが、動揺が思考を鈍らせている。
ニカナを手にしてから初めての不安感と焦燥感が今、一気に襲い掛かってきたのだ。
「な、何か……何か、ヒュドラを倒せる策は……!?」
なんの策も考えつかぬまま、ヒュドラとの最初の戦いが幕を開けたのであった……
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