放課後、秘めやかに

はち

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一月某日【ファインダーに君】鴫野

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 応募していたコンテストで最優秀賞をとって、副賞でカメラをもらった。今使っているカメラの後継機で性能が良いやつだ。今使ってるのもそんな感じで手に入れたものなので、写真部に備品として譲るとして。
 新しいカメラの最初の一枚は、どうしても先輩を撮りたかった。

「で、ハメ撮りしたいって?」
 放課後、カーテンを閉ざした俺の部屋。制服姿の先輩は、気怠そうにベッドに座って俺を見上げた。薄暗い部屋で、色素の薄い先輩の瞳は俺を揶揄うような挑発するような、そんな色を宿している。
「だめ、すか」
 先輩の前に正座した俺は、届いて間もない新品のカメラとともにお伺いを立てる。
 今回は内容が内容だから、ダメだろうなと思う。
 だって、ハメ撮りだ。セックスしている先輩を撮りたい。ぐちゃぐちゃになっている先輩を、残したい。そんな俺の欲丸出しのお願いに、先輩が首を縦に振ってくれるのか、不安しかない。
「メモリーカードも専用にするし、家でデータいじるんで」
 俺ができる精一杯の対応策と誠意を提示する。こんなんで先輩が了承してくれるとは思っていないけど。
「はは。いいよ、変態。綺麗に撮れよ」
 先輩の見せる笑みは挑発的で、俺は息を呑む。
 まじか。
 先輩は思ったより簡単に了承してくれた。心なしか、声も楽しげだ。
 こんなとき、先輩が馴染ませる色気は、尋常じゃない。俺を煽るとわかっていて、わざとそうする。わずかに目を伏せて、先輩は俺を見上げた。
 そんなことされたら、俺は頷くしかない。
 言い出したのは俺なのに、俺の方が気圧される始末だった。
「……ッス」
 善は急げだ。めちゃくちゃ綺麗に撮ろう。電池パックの充電して、メモリカードは買える中で一番いいやつにした。嬉しい。やるしかない。
「じゃあ、始めるか」
 思ったより、先輩は乗り気のようだった。安心したような、拍子抜けしたような、妙な気分だった。
 カメラを持って先輩の前に立つと、先輩は少しだけ緊張を滲ませた表情で俺を見上げた。
「体勢とか、お前が決めろよ」
 先輩の声が少しだけ硬くなった。俺だって緊張してるのに、被写体になる方が緊張しないわけがない。
「俺、横になるんで、先輩、舐めて」
 言っただけなのに、俺の身体は期待で熱くなる。
「ん、わかった」
 先輩は目を伏せて、少しだけ脇に寄った。
 ベッドに上がって横になった俺の膝辺りに跨ると、先輩は俺のベルトを外して、スラックスの前を寛げる。
 下着を押し上げて、はしたなく先端を濡らしている堪え性のない俺の布越しのちんこが先輩の目に曝される。
「お前、なんでもうこんなガチガチなんだよ」
 先輩の声は心なしか楽しげで、指先が揶揄うみたいに布越しの昂りをなぞっていく。
「こんなん、なるでしょ」
 先輩がハメ撮りさせてくれるのに、興奮しないわけがない。
 先輩が笑って長い前髪を耳にかける仕草に、心臓が跳ねる。
「先輩、待って、そのまま」
 俺の声に、先輩がこちらに視線を寄越す。薄暗い部屋だとシャッタースピードが遅くなるから、気をつけないと手ブレしてしまう。補正機能はついているけど、できるだけ綺麗な先輩を切り取って残したい。
 ピントを合わせて、シャッターボタンを押し込む。
 それが、記念すべき一枚目になった。連写で、五枚撮った。
「お前、撮りすぎ」
 先輩が呆れ気味に笑う。五枚くらい大したことないので許してほしい。デジタルだから、メモリーカードが一杯になるまでは撮れる。一応、千枚撮ってもいいようにはしてあるから、大丈夫。
「まだ何もしてねーだろ」
 それはそうなんだけど、先輩があんまり綺麗だったから。そんなことを言ったら、先輩は照れるだろうか。
 先輩の指が下着のウエストゴムを引っ張ってずり下げると、勢い良く俺のちんこが顔を出した。
 それを見て、また先輩が笑う。それも切り取った。
 先輩はすっかり勃ち上がった俺のちんこに優しく唇を触れさせた。かと思えば、唇を割って出てきた舌が亀頭をぬるぬると撫で回す。
 俺はといえば、そんな容赦のない快感責めに息を詰めてシャッターボタンを押し続けるしかできなかった。
 唇、赤い粘膜、舌、綺麗にならんだ白い歯。それから、上目遣い。
 ファインダー越しでも、それは俺を視覚から煽る。先輩のあったかくて柔らかい口の中の粘膜と合わさって、俺の限界はすぐそこまで迫っていた。
 先輩はそんなことはお構いなしに、喉奥まで使ってゆっくりと大きなストロークで頭を動かした。
 そんなことされたら、俺の限界はまた近づいて。
「っ、出る」
 情けない声が喉から絞り出された。
 先輩の熱い粘膜に擦られて、喉奥に締め上げられて、俺は呆気なく先輩の口に射精した。
 何度も脈打って、先輩の舌の上に熱いものを吐き出す。熱くてとろみのあるそれが、いつもよりもいっぱい出てるのがわかる。
 射精が落ち着いたところで、先輩は小さな音を立てて吸い上げた。唇が離れると、先端から唇へ涎と白濁が混ざったものが糸を引いて消えた。
「先輩、見せて」
 俺のリクエストに応えて、身を乗り出した先輩は俺の方に顔を近付けると、口で受け止めた精液で白く汚れた舌を出す。先輩の舌に絡みついているのは俺の出したものだ。
「っ、やば」
 俺は夢中でシャッターを切った。
 カメラを支えていた左手を離して、俺の吐き出した白濁に塗れた先輩の舌を指先で摘むと、そのまま口に引き摺り込まれ、しゃぶられた。指先に感じる先輩の舌の感触は熱くぬるついて、ひどくいやらしいもののように思えた。翻弄されっぱなしの俺を揶揄うように、先輩の舌は買い物のように俺の指先をくすぐっていった。
 そんな、いやらしい先輩をひとつずつ切り取っていく。
 指を舐められただけなのに、俺のものはまた頭を擡げ始める。だって、指を舐められるなんて、つまり、そういうことだ。
「先輩、入れていい?」
「こうって呼べよ」
 そうだった。先輩は、名前で呼ばれるのが好きだった。
「こう」
 言われて名前を呼ぶのは少し照れる。だけど、呼ぶと先輩の表情が甘く溶けるのを知っているから、それを見たくて俺は、優しい声で先輩を呼ぶ。
「ふ、いいよ」
 満足げに目を細めた先輩の、甘やかな笑み。俺が見たかったそれが、俺の心を満たしてくれる。
 早く、先輩をもっとぐちゃぐちゃにしたい。
 カメラを横に置いて、身体を起こした俺は先輩に唇を重ねながら体勢を入れ替えた。
 先輩をベッドに横たえて唇を離すと、追い縋るみたいに先輩の舌が濡れた唇を撫でていった。
 脚の間に陣取った俺はもう一度カメラを構える。流石に日が暮れてきて明るさが足りないので、枕元の灯りをつけた。
 淡い金色の光に照らされる、シーツに髪を散らした先輩の姿を撮る。そっぽ向いて視線だけこちらに寄越す。その視線を俺はファインダー越しに受け止める。
 綺麗な形の耳が目について、そこにはピアスが冷たく煌めいている。メタルモチーフの、小さなピアスだった。いつか、先輩に似合うピアスをプレゼントしようと心に決めた。
 だって、この人は全部、俺の色にしたい。
 白い頬が上気して、赤みを帯びている。
 こちらを伺う明るい茶色の瞳が揺れる。
「な、はやく、入れろって」
 焦らしたつもりはなかったけど、先輩ももう我慢の限界らしくて甘く溶けた声でおねだりされた。
 俺だって、そろそろ限界。
「こう、脱がせていい?」
「ん」
 先輩の制服を、下だけ脱がせる。スラックを抜き取って、靴下を脱がせて、下着も取り去る。
 先輩のもすっかり昂って反り返っていた。先走りをいっぱい垂らして、いやらしく光っていて、俺は思わず湧いてきた唾を飲んだ。
 カメラを首にかけたまま、俺は制服もろくに脱がないで、すっかりその気になっているちんこをとりだした。ゴムを付けて、ローションをたっぷり垂らす。制服が汚れるとか、皺になるとか、そんなこと、どうでもよかった。
 先輩の脚を拡げて、ひくひくと物欲しげな窄まりに張り詰めた先端を押し当てた。
 それだけで、先輩は眉を下げ、瞳を甘く揺らした。俺はすかさずカメラを構えてシャッターを切る。
 ゆっくりと押し込みながら、何かを堪えるように眉を寄せた表情を切り取る。
 引き摺り出す時の潤んだ目を、小刻みに震える唇を、順番に切り取る。
 ゆっくり出し入れすると、中がうねって絡みつく。腹の中は、俺しか知らない。いや、元セフレも知ってるか。
 まあいいや。最新の先輩は、俺しか知らない。
 ゆっくりと、先輩の中を味わうように擦り上げる。熱くて柔らかくて、時々甘えるように揶揄うようにひくつく先輩の腹の中。
「あんま、焦らすな」
 先輩が泣きそうな声を漏らした。
 焦らしたつもりはなかったけど、シャッターチャンスだらけでカメラに意識がいっていたせいで結果的にそうなってしまった。
 俺はゆっくりと奥まで腰を進めて、こちゅ、と奥の襞に先端でキスをする。押し付けた亀頭に、先輩の襞は甘えるみたいに吸い付いてくる。
 それだけで気持ちいいのに、これでまだ奥があるの、反則だろ。
 勿論この先は、正真正銘、俺しか知らない。そんな小さい独占欲が、満たされる瞬間。
「奥、入れるよ」
 先輩が小さく頷くのを見て、緩んだ襞に一際強く腰を打ち付ける。
 張り出した先端が最奥に潜り込む。先輩の一番奥の柔いところを、張り詰めた先端がぐっと押し上げた。
「ーーッ」
 先輩は白い喉を晒して、唇を力なく動かす。見開かれた目は涙で濡れて、綺麗だった。
 俺はカメラを置いた。
 もったいない。
 こんな先輩、生で見られるのに、写真撮ってる場合じゃねーだろ。
 俺は先輩の脚を抱え直した。先輩の腰を浮かせて覆い被さると、俺を見上げた先輩は嬉しそうに表情を蕩かせて腕を伸ばした。
 先輩は俺の首に腕を絡めてきて、誘われるままに深く身体を繋げる。
 そのまま衝動に任せて先輩の一番奥を突き上げると、腹に熱いものが散った。
 見ると、透明な液体だった。
 もう一回突き上げると、また出た。
 先輩は潮を吹いて、腹はびしゃびしゃだった。
「こう、しお、吹いちゃったね」
「ぅ、みき、たか」
 色素の薄い瞳を濡らして、先輩はすっかり蕩けた顔で俺を見上げる。涙が溜まった目は、ちらちらと煌めいて零れ落ちそうだ。
 かわいい。
 目を潤ませ、唇を震わせる先輩。
 腰を引くと、引き止めるみたいに中がしがみついてくる。
 一番奥に突き入れると縋り付くみたいにしゃぶられる。熱くて柔らかい粘膜に包まれて、締め上げられるのは堪らなく気持ちがいい。全部持っていかれそうだ。
「もっと、ぐちゃぐちゃになって」
 もっと、乱れてほしい。俺ので、たくさん気持ちよくなってほしい。胸がざわつく。独り占めして、閉じ込めて、俺だけのものにしたい。そんな、熱くてどろりとした感情が腹の底から湧く。
 先輩をシーツに押し付けて、腰を引いて、浅いところから一番奥まで突いて、捏ねて。
 先輩はその度に身体を突っ張らせ、脚を、腰を、跳ねさせた。
 先輩はずっといってるみたいで、甘えるみたいにしゃぶりついてくる。最奥の小部屋も、幹を抱き締める肉洞も、俺を喜ばせるばかりだった。
煮え滾るような熱いものが上がってくる。最奥を突き上げ、柔い肉壁に先端を押し付けて射精した。
 先輩はぴんと伸ばした脚を震わせ、また潮を吹いた。
 中は一滴残らず搾り取るみたいに、きつく締まる。俺は何度も脈打って、誘われるままに熱い白濁を放った。
「っは、ぁぅ」
 とろんと蕩けた目が、俺を見上げて、淫蕩に笑う。
 ほんと、この人はかわいい。
 うっすら開いた震える唇に、俺は堪らず齧り付いた。

 後始末を終えて、先輩と並んで、ベッドで撮れ高の確認をする。
 控えめに言って、最高だった。撮りたかった先輩が、しっかり残っている。嬉しい。
 一方の先輩は、何やら複雑な表情をしている。
まあ、そうだよな。やってるときの自分の顔なんて、考えたこともない。俺は間抜けな顔をしているような気はするけど。
 先輩はとにかく綺麗だった。
 一頻り見た後、先輩は何か言いたげに俺を見上げた。
「これ見てひとりですんなよ」
「え」
 そんなの無理じゃないすか、と思った俺がそれを口にする前に、先輩が口を開いた。
「俺がいるだろ」
 ああ、そういうことか。
 いつだって、最新の先輩は目の前にいる先輩だ。過去の先輩より、最新の先輩を見ろと言うことらしい。自分にやきもちを焼く先輩はかわいい。
「ひとりでするくらいなら、俺を呼べよ」
「そんな、セフレじゃないんですから」
 そんな都合よく先輩を呼んだりしたくなくてそう言った俺に、先輩は。
「……彼氏、だろ」
 ぼそりと低い声で呟いて、先輩は唇をへの字にした。
 そうだ。俺は、先輩の彼氏だ。先輩にそう言われると嬉しくて、顔が緩んでしまう。
「あんたほんと、そういうとこ」
 緩む顔をなんとか誤魔化して、先輩を抱きしめた。
 この写真はどうしようもないときのためにとっておこうと心に決めた。
 目の前にいる、本物の先輩には、誰も敵わないから。
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