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十二月某日【俺と先輩のクリスマス】鴫野
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先輩に出会うまで、俺は女の子が好きだったし、先輩に出会ってからも、先輩以外の男には興味がない。もし今、天文学的な確率の奇跡が起きて女の子に告られても多分きっと先輩を選ぶ。
今の俺はそんな状態だ。
そんな状態で、これからクリスマスを迎える。
先輩と過ごす、恋人と過ごす、初めてのクリスマスがやってくる。
二学期最終日。クリスマスイブの、さらに前日。終業式の後、写真部でささやかなクリスマスパーティー兼先輩の歓迎会が開かれた。何気にこういうお茶会開くの好きなんだよな、うちの部。
部室でひとしきり騒いで、お開きになった後。
解散して、先輩となんとなく校門まで出てきたところで、口を開いたのは先輩だった。
「な、お前んち、行っていいか」
「あ、いいっすよ」
当然そうなるつもりでいた俺は特になんてことないことだと思っていたのに、先輩の様子がおかしかった。
「あ、その」
言いにくそうに口をぎこちなく動かす。なんだろうと考えて、思い当たった言葉を口にする。
「……泊まります?」
俺の希望でもあった。先輩を見ると、先輩は縋るような視線をこちらに向けていた。そんな顔しなくても、断ったりしないのに。
「いいっすよ。親には、話しとくんで」
できるだけ優しい声で言う。
「しぎの」
先輩の表情が少し明るくなった。この人のこういうところ、本当にかわいい。
「俺だって、先輩といたいですよ。少し早いけど、クリスマスですし」
この人、自分だけワガママ言ってると思ったんだろうか。俺だって、クリスマスはあんたといたいのに。なんなら、年明けも、冬休み中も、ずっと一緒にいたいくらい。
「……だめ、すか」
今度は俺がお伺いを立てる番だった。
「だめじゃねーよ」
先輩は照れたのか、俯いた。嫌じゃないなら善は急げだ。
「ならよかったです。ケーキとかチキンとか食います? 何か買いに行きましょうか?」
「いい、お前としたい」
俺のことをまっすぐ見て、そうやって、ストレートに言ってくれるところ、堪らなく好きだった。
こうして、俺は奇しくも性の六時間よりもだいぶ早く先輩をいただくことになった。
準備は全て終わって、ベッドの上。
カーテンの外は暗くなり始めていた。部屋の明かりは枕元のライトだけ。ローションとゴムを用意して、俺と先輩は布団に潜って抱き合った。
「ね、先輩。俺の、まだ一回も根元まで入ったことないんすけど」
「なんだよ、でかい自慢かよ」
「違います。先輩、奥、入れていいですか」
この前、今度ゆっくりしたいと言ったアレのこと、先輩は覚えているだろうか。クリスマスだし、許してくれないかなと頭の隅で考える。
「……ケッチョーのこと?」
「そうです」
先輩は神妙な顔で俺を見た。あれ、嫌だった?
「先輩の結腸処女、もらっていいですか」
「何だよそれ」
先輩が笑う。あれ、そういうふうに言わないんすか?
「俺にはあんたを嫉妬させるような過去はないけど、あんたには俺を嫉妬させるだけの過去があるんすよ」
そういうこと。上書きしたいのは、いつだって先輩の過去。過去に嫉妬してるよりは未来に目を向けたほうが建設的、なんだろうけど。
俺の初めてを奪った人の、初めてを奪いたい。
「わかったよ」
先輩は納得してくれたのか、薄く笑った。
「いてーの嫌いだから、優しくしろよ」
その挑発的な笑みが好きだった。俺なんか到底敵わない、それでも誘われずにいられない笑み。優しくします。そういうのは趣味じゃないんで。
「……ッス」
キスから始めて、先輩をシーツに押し付けて、唾液を混ぜ合う。もう何度もしているのに、何度しても甘やかな緊張感がある。鼻先に感じる先輩の肌の温度が、触れ合う場所で混ざる体温が、胸をざわつかせる。
がっつかないように、気を付けながら先輩の唇を、舌を、口の中を味わう。
先輩のとろけるような唇は熱かった。生き物みたいに動く舌は俺を簡単に翻弄して、食い合うみたいなキスは、俺の熱を高めていく。
首筋に吸い付くと、先輩はくすぐったそうに笑った。
先輩の匂いがする。先輩のシャンプー匂い。理性が削れて、その削りカスが、熱い澱みになって腹の底に溜まっていく。
顔に、先輩のあったかい手が触れる。両手が頬を包んで、確かめるみたいにキスをされた。唇は溶けそうなくらい柔らかくて熱くて、離れてしまうのが名残惜しかった。
先輩は柔らかく笑うと、手のひらが滑り降りていく。首、鎖骨、胸をたどって、最近うっすら見えるようになってきた腹筋を確かめるようになぞっていく。臍を指先で撫でて、その下、ろくに触っていないのに茂みから聳り立つそれに触れた。
「は、ガチガチ」
俺を見上げる、獰猛さを孕んだ笑みに息を呑んだ。
先輩の手が、するりと完勃ちのそれに触れる。撫でられただけで大袈裟に震える、俺のちんこ。
「ほんと、でかいよな」
先輩は独り言みたいに言って、唇を舐めた。
「これで、可愛がってくれるんだろ?」
やんわりと扱かれて、それだけで腰が震えた。
見上げる先輩の瞳には挑発的な光が宿っていて、俺は声も出せずに頷いた。
ゴムをつけて、ローションを垂らして。
「っ、しぎの」
天を仰いで震える性器の少し下、陰でひくつくかわいらしい窄まりに丸く張った亀頭を押し付ける。
ローションを足しながら押し込むと、ゆっくりと飲み込まれていく。
皺を目一杯広げて雁首を飲み込んで、先輩が息を詰めた。その後もゆっくり、行き当たりまで埋めていく。
先輩の中は熱くて、緩やかにうねって、俺を歓迎してくれているみたいだった。
「先輩、名前、呼んで」
「みき、たか」
先輩の柔らかい唇が震えて、俺を呼ぶ。名前、覚えててくれたんだと嬉しくなる。いつも鴫野って呼ぶから、名前なんて忘れてると思ってた。
嬉しすぎて、名前を呼ばれただけでちんこが反応して、先輩の中でぴくりと跳ねた。
「っは、すげ」
思わず笑ってしまった。
「でかく、すんな」
先輩が顔を赤くして、眉を寄せた。
「不可抗力っすよ、こんなの」
好きな人に名前呼ばれたら興奮するの、仕方ないじゃないすか。この前まで童貞だったんだから。
「先輩、ここ、痛くない?」
優しく、そっと、これから侵略する肉襞を張り詰めた先端で撫でる。
「んぅ、いたく、ね、から」
先輩はか細く喘ぎながら、続けた。
「なまえ、よべよ」
先輩も名前呼ばれたいんだと思ったらかわいくて仕方なかった。
「こう、たろ」
「っ」
先輩が反応した。前半で、中がぎゅっと締まる。こうって呼び方、好きなの?
「先輩、こう、って、呼ばれるの、好き?」
「っあ」
眉を八の字にして、先輩の表情が甘く溶けた。わかりやすくてありがたい。中も、喜ぶみたいに締め付けてくる。
「好きですよね、中、めちゃくちゃ締まるもん」
嬉しい。先輩が俺で気持ちよくなっているのが、嬉しい。名前を呼ぶと素直に反応する身体がかわいい。もう全部かわいい。
「っあ、ばか、調子乗んな」
蕩けた顔を覗き込もうとすると、先輩は両腕で顔を隠してしまった。
「調子に乗りたくもなりますよ。あんたと、セックスしてんのに」
困ったな。腕、退けてほしいのに。
腕の向こうにあるのは、赤く染まった照れ顔のはずだ。
「こう」
身体を屈めて、耳に口を近付けて呼ぶと。
「……ッ!」
先輩が身体を震わせて、腕の隙間から俺を睨む。思ったよりいい反応で、嬉しくなる。
泣きそうな顔で睨まれてもぜんぜん怖くなくて、逆に興奮する。
「こう、ここ、開けて」
奥の柔らかい肉襞を優しく突くと、甘えるみたいに吸い付いてくる。とんとんと優しく叩いてあげると震えて吸い付いてくるの、この人はわかってるんだろうか。
「はは、ここ、やば」
ひくひくと震えてしゃぶりつくみたいなそこを捏ね回す。
熱い襞が誘うように戦慄いて、俺は誘われるままにごちゅっと音がするくらい強く突き入れると、亀頭がつるりと飲み込まれた。
先輩の、一番奥。
まだ誰も入ったことのないそこに、初めて、俺が到達した。
「っ、ぅ……ン、ぁ!」
先輩が身体を仰け反らせてピクピクと震える。足先までぴんと伸ばして、浅い呼吸を繰り返す。
潜り込んだ奥は甘えるみたいにしゃぶりついてくる。先輩の中は熱烈に俺を歓迎してくれた。
「っは、入っ、た」
見えないから確認のしようはないけど、今までとは比べ物にならない気持ちよさだった。しがみついてくる先輩の一番奥は熱くて柔らかくて、こっちが溶けそうだった。
「こう、の、いちばん、おく」
俺の言葉なんて聞こえていないのか、先輩は時々喉をヒュッと鳴らす。
「あ、ぇ……、い、てぅ、……かぁ」
顔を隠していた両腕は緩んで、蕩けた顔を隠しきれていない。
もう呂律も回らないみたいで、蕩けた顔でぽろぽろと涙を零す先輩は可愛かった。
そっと腕を退けて、顔を隠せないように頭の横で手を握る。指を絡めてしっかり握って、シーツに押し付ける。
「こう、かわいい」
赤くなった目元が、涙で濡れている。色素の薄い瞳は濡れてきらめいて、まつ毛は濡れて疎らに束になって、いつもは気の強そうな眉毛も力なく八の字になって。もう、先輩の表情は甘く蕩けて睨むどころじゃなくなっていた。
うっすら開いた唇が震えて、過熱した吐息を吐く。
「ぃ、ぁ……」
か細い声は、もう言葉の体をなしていない。それでも唇を震わせて何か訴えようとする先輩が愛おしい。かわいい。
媚びるみたいに吸い付いてくる先輩の奥。甘えるように絡みつく粘膜。全部愛おしくて、先輩に心臓を掴まれてるみたいだった。
しがみついてくる熱い粘膜を振り切るように腰を引いて、打ち付ける。
肌のぶつかる音がする。荒々しい、獣じみたセックスを、先輩としている。
もう抵抗もできないくらい力の抜けた先輩は、俺にさせるがままになっていた。
握っていた手を離すと寂しそうな顔をするから、触れるだけのキスをして身体を起こした。
投げ出された先輩の脚を抱え上げて一番奥まで届くように、本能に任せて腰を振る。しこたま仕込んだローションがいやらしい音を立てる。肌がぶつかる音とローションが泡立つ音が混ざって、否応無しに興奮を煽る。
「こう」
荒い呼吸の合間に呼べば、先輩は視線だけよこして、ふわりと笑った。
「せんぱい、も、いき、そ」
「ン」
シーツに先輩を押し付けて、力任せに、一番奥まで突き上げる。その度に先輩の中はきつく締まって、はやくいけと言われているみたいだった。
俺は一番奥で射精した。何度も脈打って、吐き出した熱いものが薄い膜の中に溜まっていく。緩く腰を動かすと、先輩の中はきゅうきゅうと締め付けてきて、一滴残らず搾り取られるようだった。
先輩につけたゴムにも、白いものが溜まっていく。先輩がいってるのが嬉しくて、思わずへらりと笑った。
先輩が身体を震わせて射精を終えたのを見計らって、俺は腰を引いた。終わらせるつもりでいた。のに。
「んあ!」
奥から引き抜いたところで、段差が襞を捲り上げて、先輩の身体が跳ね、中がきつく締まる。
「っ、せん、ぱ」
頭のネジが二、三本吹き飛ぶみたいな、濃い快感に頭の中が白飛びした。
吐精で落ち着いたはずの猛りが、先輩の中でまた血を集めて育っていく。
「っ、ちょ、ま、て、って、ぅあ!」
中で、きつい肉の輪に扱かれるみたいで気持ちよくて、俺は小刻みに往復させる。
「っ、ひ、や、ぁ、ッし、ぃの、や、ぇ」
甘い声を上げながら、先輩は喉を晒して、ゴムの中に透明なものを放った。
俺の動きに合わせて先輩は身体を跳ねさせ、中は俺を食いちぎるみたいにきつく締まる。
「や、あ、っぇ、ひ、ぁ」
先輩の口から漏れるのは、悲鳴じみた甘い声。もう言葉の体をなさない、甘ったるい喘ぎ声だった。
苦しさの滲むその声を聞いても俺は止めることができなくて、欲望に任せて腰を打ち付ける。
先輩の中は奥を突くたびに震えて、腰を引くたびにしがみついてくる。陥落した奥の肉襞にきつく亀頭を扱かれて、もう一度、先輩の一番奥に欲望を叩きつけた。
熱いものが、先輩の一番奥で爆ぜた。
先輩はそれに感じ入っているようで、俺をきつく締め上げながら、かわいらしい声でか細く啼いた。
その後めちゃくちゃ怒られた。
「お前、ほんと、いい加減にしろ」
後片付けもそこそこに、布団も毛布も全部奪って団子みたいになって顔だけ出した先輩の前に、俺は全裸で正座していた。
「……ッス」
頭のネジを吹っ飛ばして先輩に無体を働いた俺は、言い返す言葉もない。これはしばらくお預けかもしれない。
「奥まですんの、わけわかんなくなるんだよ、バカ」
「……はい」
先輩の悪態も、黙って受け止める。確かにちょっと苛めすぎた自覚はある。仕方なくね?
蕩けた先輩の顔を思い出して、胸がざわつく。
「……気持ちいいけど、しょっちゅうは、やだ。ケツがバカになりそう」
先輩、言い方。でも、ちゃんと気持ちよくなっててくれてたなら良かったと思う。
「痛くなかったすか」
「痛くはねーけど」
顔が緩んでいたみたいで、睨まれる。
「ぐちゃぐちゃになってるこう先輩、可愛かったです」
本音を言うと、先輩の顔がみるみる赤く染まっていく。
「全部お前のせいだ」
ぼそりと独り言みたいに呟いて、先輩は顔を伏せてしまった。
団子から、先輩の旋毛だけ見える。
「先輩」
「なんだよ」
「もう、ひどくしないから」
「ん」
先輩に近付いて旋毛にそっとキスを落とすと、団子がもぞもぞと動いた。なんだかこういう生き物みたいだ。
そんなことを思っていると、団子が解けた。
胡座をかいた先輩が、そっと俺を引き寄せた。
「ふ、風邪ひくぞ」
先輩に抱きしめられて、毛布に包まれる。
「先輩、あっためてくれます?」
「いいよ」
温かくて柔らかい唇が、俺の唇に触れた。
それだけで、俺の身体は熱くなっていく。深く重なって忍び込んできた熱い舌を受け止めながら、また腹の底から湧いてくる熱に喉を鳴らした。
今の俺はそんな状態だ。
そんな状態で、これからクリスマスを迎える。
先輩と過ごす、恋人と過ごす、初めてのクリスマスがやってくる。
二学期最終日。クリスマスイブの、さらに前日。終業式の後、写真部でささやかなクリスマスパーティー兼先輩の歓迎会が開かれた。何気にこういうお茶会開くの好きなんだよな、うちの部。
部室でひとしきり騒いで、お開きになった後。
解散して、先輩となんとなく校門まで出てきたところで、口を開いたのは先輩だった。
「な、お前んち、行っていいか」
「あ、いいっすよ」
当然そうなるつもりでいた俺は特になんてことないことだと思っていたのに、先輩の様子がおかしかった。
「あ、その」
言いにくそうに口をぎこちなく動かす。なんだろうと考えて、思い当たった言葉を口にする。
「……泊まります?」
俺の希望でもあった。先輩を見ると、先輩は縋るような視線をこちらに向けていた。そんな顔しなくても、断ったりしないのに。
「いいっすよ。親には、話しとくんで」
できるだけ優しい声で言う。
「しぎの」
先輩の表情が少し明るくなった。この人のこういうところ、本当にかわいい。
「俺だって、先輩といたいですよ。少し早いけど、クリスマスですし」
この人、自分だけワガママ言ってると思ったんだろうか。俺だって、クリスマスはあんたといたいのに。なんなら、年明けも、冬休み中も、ずっと一緒にいたいくらい。
「……だめ、すか」
今度は俺がお伺いを立てる番だった。
「だめじゃねーよ」
先輩は照れたのか、俯いた。嫌じゃないなら善は急げだ。
「ならよかったです。ケーキとかチキンとか食います? 何か買いに行きましょうか?」
「いい、お前としたい」
俺のことをまっすぐ見て、そうやって、ストレートに言ってくれるところ、堪らなく好きだった。
こうして、俺は奇しくも性の六時間よりもだいぶ早く先輩をいただくことになった。
準備は全て終わって、ベッドの上。
カーテンの外は暗くなり始めていた。部屋の明かりは枕元のライトだけ。ローションとゴムを用意して、俺と先輩は布団に潜って抱き合った。
「ね、先輩。俺の、まだ一回も根元まで入ったことないんすけど」
「なんだよ、でかい自慢かよ」
「違います。先輩、奥、入れていいですか」
この前、今度ゆっくりしたいと言ったアレのこと、先輩は覚えているだろうか。クリスマスだし、許してくれないかなと頭の隅で考える。
「……ケッチョーのこと?」
「そうです」
先輩は神妙な顔で俺を見た。あれ、嫌だった?
「先輩の結腸処女、もらっていいですか」
「何だよそれ」
先輩が笑う。あれ、そういうふうに言わないんすか?
「俺にはあんたを嫉妬させるような過去はないけど、あんたには俺を嫉妬させるだけの過去があるんすよ」
そういうこと。上書きしたいのは、いつだって先輩の過去。過去に嫉妬してるよりは未来に目を向けたほうが建設的、なんだろうけど。
俺の初めてを奪った人の、初めてを奪いたい。
「わかったよ」
先輩は納得してくれたのか、薄く笑った。
「いてーの嫌いだから、優しくしろよ」
その挑発的な笑みが好きだった。俺なんか到底敵わない、それでも誘われずにいられない笑み。優しくします。そういうのは趣味じゃないんで。
「……ッス」
キスから始めて、先輩をシーツに押し付けて、唾液を混ぜ合う。もう何度もしているのに、何度しても甘やかな緊張感がある。鼻先に感じる先輩の肌の温度が、触れ合う場所で混ざる体温が、胸をざわつかせる。
がっつかないように、気を付けながら先輩の唇を、舌を、口の中を味わう。
先輩のとろけるような唇は熱かった。生き物みたいに動く舌は俺を簡単に翻弄して、食い合うみたいなキスは、俺の熱を高めていく。
首筋に吸い付くと、先輩はくすぐったそうに笑った。
先輩の匂いがする。先輩のシャンプー匂い。理性が削れて、その削りカスが、熱い澱みになって腹の底に溜まっていく。
顔に、先輩のあったかい手が触れる。両手が頬を包んで、確かめるみたいにキスをされた。唇は溶けそうなくらい柔らかくて熱くて、離れてしまうのが名残惜しかった。
先輩は柔らかく笑うと、手のひらが滑り降りていく。首、鎖骨、胸をたどって、最近うっすら見えるようになってきた腹筋を確かめるようになぞっていく。臍を指先で撫でて、その下、ろくに触っていないのに茂みから聳り立つそれに触れた。
「は、ガチガチ」
俺を見上げる、獰猛さを孕んだ笑みに息を呑んだ。
先輩の手が、するりと完勃ちのそれに触れる。撫でられただけで大袈裟に震える、俺のちんこ。
「ほんと、でかいよな」
先輩は独り言みたいに言って、唇を舐めた。
「これで、可愛がってくれるんだろ?」
やんわりと扱かれて、それだけで腰が震えた。
見上げる先輩の瞳には挑発的な光が宿っていて、俺は声も出せずに頷いた。
ゴムをつけて、ローションを垂らして。
「っ、しぎの」
天を仰いで震える性器の少し下、陰でひくつくかわいらしい窄まりに丸く張った亀頭を押し付ける。
ローションを足しながら押し込むと、ゆっくりと飲み込まれていく。
皺を目一杯広げて雁首を飲み込んで、先輩が息を詰めた。その後もゆっくり、行き当たりまで埋めていく。
先輩の中は熱くて、緩やかにうねって、俺を歓迎してくれているみたいだった。
「先輩、名前、呼んで」
「みき、たか」
先輩の柔らかい唇が震えて、俺を呼ぶ。名前、覚えててくれたんだと嬉しくなる。いつも鴫野って呼ぶから、名前なんて忘れてると思ってた。
嬉しすぎて、名前を呼ばれただけでちんこが反応して、先輩の中でぴくりと跳ねた。
「っは、すげ」
思わず笑ってしまった。
「でかく、すんな」
先輩が顔を赤くして、眉を寄せた。
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好きな人に名前呼ばれたら興奮するの、仕方ないじゃないすか。この前まで童貞だったんだから。
「先輩、ここ、痛くない?」
優しく、そっと、これから侵略する肉襞を張り詰めた先端で撫でる。
「んぅ、いたく、ね、から」
先輩はか細く喘ぎながら、続けた。
「なまえ、よべよ」
先輩も名前呼ばれたいんだと思ったらかわいくて仕方なかった。
「こう、たろ」
「っ」
先輩が反応した。前半で、中がぎゅっと締まる。こうって呼び方、好きなの?
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「っあ」
眉を八の字にして、先輩の表情が甘く溶けた。わかりやすくてありがたい。中も、喜ぶみたいに締め付けてくる。
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嬉しい。先輩が俺で気持ちよくなっているのが、嬉しい。名前を呼ぶと素直に反応する身体がかわいい。もう全部かわいい。
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困ったな。腕、退けてほしいのに。
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「こう」
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「……ッ!」
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泣きそうな顔で睨まれてもぜんぜん怖くなくて、逆に興奮する。
「こう、ここ、開けて」
奥の柔らかい肉襞を優しく突くと、甘えるみたいに吸い付いてくる。とんとんと優しく叩いてあげると震えて吸い付いてくるの、この人はわかってるんだろうか。
「はは、ここ、やば」
ひくひくと震えてしゃぶりつくみたいなそこを捏ね回す。
熱い襞が誘うように戦慄いて、俺は誘われるままにごちゅっと音がするくらい強く突き入れると、亀頭がつるりと飲み込まれた。
先輩の、一番奥。
まだ誰も入ったことのないそこに、初めて、俺が到達した。
「っ、ぅ……ン、ぁ!」
先輩が身体を仰け反らせてピクピクと震える。足先までぴんと伸ばして、浅い呼吸を繰り返す。
潜り込んだ奥は甘えるみたいにしゃぶりついてくる。先輩の中は熱烈に俺を歓迎してくれた。
「っは、入っ、た」
見えないから確認のしようはないけど、今までとは比べ物にならない気持ちよさだった。しがみついてくる先輩の一番奥は熱くて柔らかくて、こっちが溶けそうだった。
「こう、の、いちばん、おく」
俺の言葉なんて聞こえていないのか、先輩は時々喉をヒュッと鳴らす。
「あ、ぇ……、い、てぅ、……かぁ」
顔を隠していた両腕は緩んで、蕩けた顔を隠しきれていない。
もう呂律も回らないみたいで、蕩けた顔でぽろぽろと涙を零す先輩は可愛かった。
そっと腕を退けて、顔を隠せないように頭の横で手を握る。指を絡めてしっかり握って、シーツに押し付ける。
「こう、かわいい」
赤くなった目元が、涙で濡れている。色素の薄い瞳は濡れてきらめいて、まつ毛は濡れて疎らに束になって、いつもは気の強そうな眉毛も力なく八の字になって。もう、先輩の表情は甘く蕩けて睨むどころじゃなくなっていた。
うっすら開いた唇が震えて、過熱した吐息を吐く。
「ぃ、ぁ……」
か細い声は、もう言葉の体をなしていない。それでも唇を震わせて何か訴えようとする先輩が愛おしい。かわいい。
媚びるみたいに吸い付いてくる先輩の奥。甘えるように絡みつく粘膜。全部愛おしくて、先輩に心臓を掴まれてるみたいだった。
しがみついてくる熱い粘膜を振り切るように腰を引いて、打ち付ける。
肌のぶつかる音がする。荒々しい、獣じみたセックスを、先輩としている。
もう抵抗もできないくらい力の抜けた先輩は、俺にさせるがままになっていた。
握っていた手を離すと寂しそうな顔をするから、触れるだけのキスをして身体を起こした。
投げ出された先輩の脚を抱え上げて一番奥まで届くように、本能に任せて腰を振る。しこたま仕込んだローションがいやらしい音を立てる。肌がぶつかる音とローションが泡立つ音が混ざって、否応無しに興奮を煽る。
「こう」
荒い呼吸の合間に呼べば、先輩は視線だけよこして、ふわりと笑った。
「せんぱい、も、いき、そ」
「ン」
シーツに先輩を押し付けて、力任せに、一番奥まで突き上げる。その度に先輩の中はきつく締まって、はやくいけと言われているみたいだった。
俺は一番奥で射精した。何度も脈打って、吐き出した熱いものが薄い膜の中に溜まっていく。緩く腰を動かすと、先輩の中はきゅうきゅうと締め付けてきて、一滴残らず搾り取られるようだった。
先輩につけたゴムにも、白いものが溜まっていく。先輩がいってるのが嬉しくて、思わずへらりと笑った。
先輩が身体を震わせて射精を終えたのを見計らって、俺は腰を引いた。終わらせるつもりでいた。のに。
「んあ!」
奥から引き抜いたところで、段差が襞を捲り上げて、先輩の身体が跳ね、中がきつく締まる。
「っ、せん、ぱ」
頭のネジが二、三本吹き飛ぶみたいな、濃い快感に頭の中が白飛びした。
吐精で落ち着いたはずの猛りが、先輩の中でまた血を集めて育っていく。
「っ、ちょ、ま、て、って、ぅあ!」
中で、きつい肉の輪に扱かれるみたいで気持ちよくて、俺は小刻みに往復させる。
「っ、ひ、や、ぁ、ッし、ぃの、や、ぇ」
甘い声を上げながら、先輩は喉を晒して、ゴムの中に透明なものを放った。
俺の動きに合わせて先輩は身体を跳ねさせ、中は俺を食いちぎるみたいにきつく締まる。
「や、あ、っぇ、ひ、ぁ」
先輩の口から漏れるのは、悲鳴じみた甘い声。もう言葉の体をなさない、甘ったるい喘ぎ声だった。
苦しさの滲むその声を聞いても俺は止めることができなくて、欲望に任せて腰を打ち付ける。
先輩の中は奥を突くたびに震えて、腰を引くたびにしがみついてくる。陥落した奥の肉襞にきつく亀頭を扱かれて、もう一度、先輩の一番奥に欲望を叩きつけた。
熱いものが、先輩の一番奥で爆ぜた。
先輩はそれに感じ入っているようで、俺をきつく締め上げながら、かわいらしい声でか細く啼いた。
その後めちゃくちゃ怒られた。
「お前、ほんと、いい加減にしろ」
後片付けもそこそこに、布団も毛布も全部奪って団子みたいになって顔だけ出した先輩の前に、俺は全裸で正座していた。
「……ッス」
頭のネジを吹っ飛ばして先輩に無体を働いた俺は、言い返す言葉もない。これはしばらくお預けかもしれない。
「奥まですんの、わけわかんなくなるんだよ、バカ」
「……はい」
先輩の悪態も、黙って受け止める。確かにちょっと苛めすぎた自覚はある。仕方なくね?
蕩けた先輩の顔を思い出して、胸がざわつく。
「……気持ちいいけど、しょっちゅうは、やだ。ケツがバカになりそう」
先輩、言い方。でも、ちゃんと気持ちよくなっててくれてたなら良かったと思う。
「痛くなかったすか」
「痛くはねーけど」
顔が緩んでいたみたいで、睨まれる。
「ぐちゃぐちゃになってるこう先輩、可愛かったです」
本音を言うと、先輩の顔がみるみる赤く染まっていく。
「全部お前のせいだ」
ぼそりと独り言みたいに呟いて、先輩は顔を伏せてしまった。
団子から、先輩の旋毛だけ見える。
「先輩」
「なんだよ」
「もう、ひどくしないから」
「ん」
先輩に近付いて旋毛にそっとキスを落とすと、団子がもぞもぞと動いた。なんだかこういう生き物みたいだ。
そんなことを思っていると、団子が解けた。
胡座をかいた先輩が、そっと俺を引き寄せた。
「ふ、風邪ひくぞ」
先輩に抱きしめられて、毛布に包まれる。
「先輩、あっためてくれます?」
「いいよ」
温かくて柔らかい唇が、俺の唇に触れた。
それだけで、俺の身体は熱くなっていく。深く重なって忍び込んできた熱い舌を受け止めながら、また腹の底から湧いてくる熱に喉を鳴らした。
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そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
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