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十一月某日【ご褒美の時間】蓮見
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早朝。十一月ともなると早起きするには少ししんどい季節になってきた。家族にバレないようひっそりと起き出した俺は、まだ誰も起きていない自宅の脱衣所に向かう。フローリングの床は冷たくて、足の裏から体温が奪われていく。
脱衣所は静かだった。
寝間着のボトムと下着だけ脱いで下半身だけ裸になる。こんな姿、家族に見られるわけにはいかない。
ひやりとしたバスルームに入る。夜と違って誰か入った後じゃないし、バスタブにお湯を張っているわけでもないから寒いのは仕方ない。
アナルの辺りを軽く洗った後、腸内洗浄をする。シャワーヘッドを外してホース部分をアナルに当てる。胎の中にぬるま湯が貯まっていくなんともいえない感覚に足の指が丸まる。こればかりは何回やっても慣れない。腹の中にぬるま湯が溜まって、重たくなってきたところでシャワーを止めた。
少しすると腹がゴロゴロと鳴りだす。
少しだけ我慢してから、トイレへ。それを三回も繰り返すと、腹からはもう透明なぬるま湯が出るだけになった。
準備はこれで完了、あとは部屋に戻ってローションを仕込む。念のため、コンドームと小分けのローションをリュックに忍ばせた
これで俺の準備は終わり。
あいつに切羽詰まった声で呼ばれるのが、待ち遠しい。
そんなことを考えながら、目覚ましのアラームが鳴るまでの間、俺はまた眠った。
まともに鴫野と会うのは久しぶりだった。文化祭の後、推薦入試に集中するためにほとんど会っていなかった。会っても、少し話をして、キスをするくらい。セックスはしばらくしていない。
季節は少し進んで気温が下がったせいで、人肌が恋しかった。
昨日は推薦入試の試験日だった。今年一番のイベントである受験が終わって、ようやく一息つける。だから今日は、鴫野にいっぱい甘やかされたかった。
いつも通りに登校して、放課後は進路相談室で入試の報告をしてから、鴫野と待ち合わせた。
手応えはあったけど、ダメだったら一般入試がある。気は抜けない。
だけど、少しだけ息抜きがしたかった。頑張ったんだ。褒められたい。鴫野の甘い声で。
待ち合わせは昇降口。進路指導室に行ってきて時間がずれたせいで帰りの生徒の姿はほとんどなかった。
西に傾いた日差しが差し込む昇降口はサンルームみたいで暖かい。
上履きからローファーに履き替えて辺りを見回すと、いた。下駄箱に寄り掛かって、スマートフォンを弄っている鴫野の姿を見つけた。背が高いので、まあ目立つ。
「鴫野」
呼ぶと、鴫野はすぐに画面から顔を上げて笑った。
「先輩、お疲れ様でした」
「ん」
久しぶりで、目を合わせるのもなんだか照れくさくて、素っ気ない返事をしてしまう。本当は今すぐ飛びついて抱きしめられたい。
「お待たせ」
「大丈夫ッス」
「なあ、相手しろよ」
それで俺の言いたいことを理解したらしい鴫野は少しだけ目を見開いて、俯いた。
「……ッス」
こんなとき、鴫野は従順だ。
鴫野の部屋のベッドの上。制服姿のまま、鴫野に抱きしめられる。久しぶりの鴫野の体温だった。安心する。少し力が強くなったような気がする。
「先輩、これで受かれば受験終了っすか?」
「まあな」
「すげー、頑張ったんすね。お疲れ様でした」
鴫野が腕に力を込める。やっぱり、少し力が強くなってる。筋トレでもしたんだろうか。
「鴫野」
呼ぶと、鴫野は俺の顔を覗き込む。こちらを伺うような眠そうな目と視線がかち合う。
「もっと、褒めろよ」
素っ気ない声でねだる俺に、鴫野はふわりと柔らかく微笑みかけた。俺の好きな笑い方だ。
「先輩すごい。天才。めちゃくちゃ頭いい! かわいい!」
鴫野がキスを降らせてくる。最後のは違うだろ、と思うが、振ってる尻尾が見えそうなくらい嬉しそうにしている鴫野を見たらどうでも良くなった。
くすぐったい。いつもならめんどくさくなってしまうところだけど、今日はもうしばらくこうしていてもいいかもと思ってしまう。
「お前、なんか、雰囲気変わった?」
止めどなくキスを降らせてくる鴫野の両頬を手で包んで、鴫野の顔をまじまじと見る。重たそうな奥二重の瞼、しっかりした眉毛。よく見たら、割と男らしい顔してるんだよな。
「あ、はい」
「なんか、かっこよくなったな」
「……まじすか」
鴫野の頬が少し熱くなる。
「眉毛?」
「はい。あと、筋トレとランニングしました」
やっぱり。ちゃんとやってたんだな。こういうところ、いじらしくてかわいいなと思ってしまう。
「がんばってんな」
愛されてる実感みたいなものが湧いてきて、思わず頬が緩んだ。
「あざす」
「じゃあ、鴫野に頑張ってもらお」
俺は鴫野から手を離すとベッドに大の字になった。
「は」
ぽかんとしている鴫野は俺の言った意味がわかっていないようだった。
「楽しませろよ?」
笑ってみせると、鴫野の喉仏が上下した。
鴫野の男臭い一面を見るたびに、腹の中が甘く疼いた。
制服も下着も脱ぎ捨てた俺たちは、寒いから布団の中で裸で抱き合う。
「先輩、かわいい」
鴫野の鼻先が首筋を撫でて、鴫野の温度の唇が柔らかく触れる。くすぐったい。
「お前、ひとりでした?」
「しました」
俺の質問に素直に答える鴫野。吐息混じりの声と、唇と舌が皮膚の薄い場所をくすぐる。首筋から胸に這い降りた鴫野の唇がすっかり尖った乳首を舐る。
「っ、どう、だった?」
「先輩とした方が気持ちよかったっす」
即答すんのかよ。まあ、いいけど。
「先輩は?」
すっかり硬くなった乳首を舌先で撫で、鴫野が俺を見上げる。
「俺も」
そんなの、当たり前だろ。
文化祭の後にしたのが最後で、それ以来一人で慰めていた俺の身体はそろそろ限界だった。乳首ばかり執拗に舐めしゃぶられて、物足りなさに胎が疼く。
「いい子にしてたみたいだな鴫野」
鴫野の頭を撫でると、鴫野は喉を鳴らした。
「先輩、それ、反則」
鴫野の声が欲情で濡れて、俺の身体は期待を募らせ勝手に熱くなる。
「先輩、すき」
鴫野は俺の平らな胸板にキスをして、乳首を捏ねる。そっちじゃなくて、早くちんこ触れよ。
「ん、おれ、も、好き、しぎの」
はしたないとわかっているのに、硬くなったちんこを鴫野に押し付けてしまう。
「先輩、寂しくなかったすか」
「……寂しかったよ」
「よかった、俺も」
ようやく気付いたのか、鴫野の手がすっかり芯を持って反り返る俺のちんこに触れた。
やんわりと、鴫野の大きくて骨張った手のひらが包み込むみたいに撫でる。肉感の薄い手のひらは、鴫野の昂りを物語るように熱い。それにまた、俺の身体は熱を上げる。
「先輩なら、きっと受かりますよ」
こいつが言うならいけるかもと思ってしまうあたり、俺も大概単純なのかもしれない。
「合格したら、デートしましょ」
「はは」
思わず笑ってしまった。
なんだよ、デートしたいのかよ。
そういえば、鴫野とはデートらしいデートはしたことがなかった。
「なんすか」
鴫野は少し怒ったのか、唇をへの字にした。怒るなよ。お前、結構そういうの好きなんだな。
「いいよ」
したくないわけじゃないから、受かって時間ができたら、どこでもいいからどこかに行こう。
「受かったら、な」
勿体ぶるわけじゃないけど、受からないと、安心できない。進路指導室の先生にも多分大丈夫だと言われたけど。
「絶対、受かって、先輩」
熱っぽい声が降ってきて、俺は鴫野を見上げる。火傷しそうな熱を孕んだ、縋るような視線が俺を射抜く。
「なあ、鴫野」
心臓が煩く鳴り響いて、声が掠れる。
「いきたい」
俺は先走りをだらしなく垂らす自身を鴫野の手のひらに擦り付ける。熱い手のひらに裏筋が擦れて、またカウパーがだらだらと溢れる。
鴫野は息を飲んだ。
「……ッス」
鴫野の手がしっかりと俺のちんこを握り込んで、上下に動く。
「ん、ゅ」
気持ちよくて腰が勝手に揺れる。はしたなく腰を振るのを見られるのは恥ずかしいのに、湧き上がる快感には勝てなくて、鴫野の手の動きに合わせて無様に腰を揺らす。すっかり先走りで濡れそぼったそこからは、鴫野が擦るのに合わせて濡れた音が立つ。その音さえ俺を昂らせる。鴫野に触れられて与えられるもの、全てが快感に繋がっていた。
「しぎ、の」
「先輩、いきそ?」
鴫野の甘ったるい声がこちらを伺う。鴫野の手の中でもう何度もびくびくと跳ねている俺のは限界が近い。
「ん」
頷くと、鴫野の手は今までよりも強く、緩急をつけた動きで俺を翻弄する。
「ぅあ、いく、しぎ、の、ぁ」
俺のものを扱く鴫野の手に合わせて腰を振って、快感を貪る。
熱い精液が上がってくる感じに、思わず喉から上擦った声が漏れた。
大きく脈打ち、熱い白濁が何度も散る。胸から腹にかけて、ぱたぱたと白い飛沫が落ちる。
余韻に腰を震わせる俺は、鴫野の手に縋るように手を重ねた。程よい圧をかけて、根本から先端まで一滴残さず絞り出すように動く鴫野の手は、いったばかりで敏感になり過ぎている俺には過ぎた刺激で、声も出せなかった。
「ゴム、つけたらよかったっすね」
鴫野のは俺の出したザーメン塗れの手を舐めた後、ティッシュで丁寧に拭いてくれた。ようやく解放された俺はされるがまま、シーツに身体を投げ出して余韻の海をゆらゆらと揺蕩う。
ぼんやりしている俺に戯れるみたいな触れるだけのキスをして、ゴムをつけた鴫野はようやく俺の中に入ってきた。
ろくに触ってないのに、鴫野は臨戦体勢だった。
ゆっくり俺の中を拓いていくエグい雁首とか、血管の浮いた幹とか、投げてよこす縋るような視線とか。全部が愛おしい。こんなに愛情を向けられるのが気持ちいいなんて知らなかったし、多幸感で溶け出しそうなくらい、頭の中も身体も鴫野でいっぱいだった。
「なか、きもちい」
俺はそれを享受するだけで、俺ばかり気持ちいいんじゃ申し訳なくて鴫野を見上げた。
「先輩、中、やばい」
眉間に皺を寄せて、何かに耐えるような鴫野。あぁこいつも、ちゃんと気持ちいいんだな。
ひくつく中は甘えるみたいに鴫野を締め付けて、俺の中に鴫野のかたちを鮮明に浮き上がらせた。
鴫野を身体ごと引き寄せて頭を抱えて、耳にやんわり歯を立てた。
「っく、せんぱ、いく、から、っあ」
鴫野が身体を震わせた。
「っ、もっと、ぐちゃぐちゃにしろよ」
中で鴫野が脈打って、熱いものを吐き出すのを感じる。息を詰めて射精する鴫野の耳元に、わざと甘えた声を吹き込んでやると。
「もー、煽りすぎっすよ、あんた」
鴫野は俺を剥がすとシーツに押し付けた。
「あ、ぅ」
今しがたいったのに、まだ萎えていない鴫野が中で動くと、それだけで快感が生まれて俺は無様に喘ぐしかなかった。
少しくらい酷くしてもいいのに、鴫野は馬鹿みたいに丁寧に俺に触れて、俺を拓いていく。
「っ、くそ、おまえ、丁寧、すぎ」
もっと雑でも壊れないのに。
鴫野を睨むと、眉を下げた鴫野は謝るでもなく、申し訳なさそうに言った。
「俺がしたいんすよ。できれば、ずっとあんたとこうしてたい」
奥まで捩じ込むのもゆっくり様子を伺うみたいにするから、焦れったくて声を上げそうになる。
それで奥を叩かれると、もうだめだった。とんとんと伺うみたいに叩かれ、ねだるみたいに捏ねられて、もっと奥に欲しくなってしまう。まだ誰も知らない、俺の一番奥まで。
かと思えばねっとりと腰を引かれて、中が引き止めるみたいに縋り付く。抜けるギリギリまで引かれて、またゆっくり奥まで入ってくる。
中は勝手に波打って、鴫野を締め付ける。
もう俺の意思なんか関係なく、感じすぎる俺の身体はずっと気持ちよくて、久しぶりの俺はすぐに意識を飛ばしてしまった。
気がつくと部屋は暗くなっていて、ベッドサイドのスタンドの明かりがあるだけだった。
「先輩」
鴫野の声がした方を見上げる。
心配そうな顔をした鴫野が俺を覗き込んでいた。
「起きました?」
「ん」
いつの間にか気絶していたらしい。まぁ、あんな気持ちいいんだから仕方ない。久しぶりだったし。
「片付けしてあるんで」
「さんきゅ」
寝起きのぼんやりした俺を、鴫野が抱きしめる。あったかい鴫野の身体が気持ちよくて、鴫野の背中に腕を回した。
落ち着く。鴫野の温度が側にあるのが堪らなく嬉しくて、抱きつく腕に力を込めた。
鴫野の手が、頭を撫でてくれる。終わった後のこういうところ、めちゃくちゃ好きだった。
「合格発表、いつすか」
頭を撫でながら、鴫野は穏やかな声で言う。甘さの残る低音は、少し眠そうだった。
「来月頭」
「じゃあ、それからっすね」
「なにが」
「デート、すよ」
「ふは」
思わず笑ってしまった。
そんなにデートしたいなら、してやろう。鴫野の行きたいところに、一緒に行く。そうしよう。
「なんすか」
俺に笑われたのが不服だったようで、不貞腐れたような鴫野の声が聞こえた。
「楽しみにしてるよ。どこ行くか、考えとけよ」
「……ッス」
こいつと行くなら、きっとどこになっても悪くないと、そう思った。
額を擦り付けた胸板は、温かかった。
脱衣所は静かだった。
寝間着のボトムと下着だけ脱いで下半身だけ裸になる。こんな姿、家族に見られるわけにはいかない。
ひやりとしたバスルームに入る。夜と違って誰か入った後じゃないし、バスタブにお湯を張っているわけでもないから寒いのは仕方ない。
アナルの辺りを軽く洗った後、腸内洗浄をする。シャワーヘッドを外してホース部分をアナルに当てる。胎の中にぬるま湯が貯まっていくなんともいえない感覚に足の指が丸まる。こればかりは何回やっても慣れない。腹の中にぬるま湯が溜まって、重たくなってきたところでシャワーを止めた。
少しすると腹がゴロゴロと鳴りだす。
少しだけ我慢してから、トイレへ。それを三回も繰り返すと、腹からはもう透明なぬるま湯が出るだけになった。
準備はこれで完了、あとは部屋に戻ってローションを仕込む。念のため、コンドームと小分けのローションをリュックに忍ばせた
これで俺の準備は終わり。
あいつに切羽詰まった声で呼ばれるのが、待ち遠しい。
そんなことを考えながら、目覚ましのアラームが鳴るまでの間、俺はまた眠った。
まともに鴫野と会うのは久しぶりだった。文化祭の後、推薦入試に集中するためにほとんど会っていなかった。会っても、少し話をして、キスをするくらい。セックスはしばらくしていない。
季節は少し進んで気温が下がったせいで、人肌が恋しかった。
昨日は推薦入試の試験日だった。今年一番のイベントである受験が終わって、ようやく一息つける。だから今日は、鴫野にいっぱい甘やかされたかった。
いつも通りに登校して、放課後は進路相談室で入試の報告をしてから、鴫野と待ち合わせた。
手応えはあったけど、ダメだったら一般入試がある。気は抜けない。
だけど、少しだけ息抜きがしたかった。頑張ったんだ。褒められたい。鴫野の甘い声で。
待ち合わせは昇降口。進路指導室に行ってきて時間がずれたせいで帰りの生徒の姿はほとんどなかった。
西に傾いた日差しが差し込む昇降口はサンルームみたいで暖かい。
上履きからローファーに履き替えて辺りを見回すと、いた。下駄箱に寄り掛かって、スマートフォンを弄っている鴫野の姿を見つけた。背が高いので、まあ目立つ。
「鴫野」
呼ぶと、鴫野はすぐに画面から顔を上げて笑った。
「先輩、お疲れ様でした」
「ん」
久しぶりで、目を合わせるのもなんだか照れくさくて、素っ気ない返事をしてしまう。本当は今すぐ飛びついて抱きしめられたい。
「お待たせ」
「大丈夫ッス」
「なあ、相手しろよ」
それで俺の言いたいことを理解したらしい鴫野は少しだけ目を見開いて、俯いた。
「……ッス」
こんなとき、鴫野は従順だ。
鴫野の部屋のベッドの上。制服姿のまま、鴫野に抱きしめられる。久しぶりの鴫野の体温だった。安心する。少し力が強くなったような気がする。
「先輩、これで受かれば受験終了っすか?」
「まあな」
「すげー、頑張ったんすね。お疲れ様でした」
鴫野が腕に力を込める。やっぱり、少し力が強くなってる。筋トレでもしたんだろうか。
「鴫野」
呼ぶと、鴫野は俺の顔を覗き込む。こちらを伺うような眠そうな目と視線がかち合う。
「もっと、褒めろよ」
素っ気ない声でねだる俺に、鴫野はふわりと柔らかく微笑みかけた。俺の好きな笑い方だ。
「先輩すごい。天才。めちゃくちゃ頭いい! かわいい!」
鴫野がキスを降らせてくる。最後のは違うだろ、と思うが、振ってる尻尾が見えそうなくらい嬉しそうにしている鴫野を見たらどうでも良くなった。
くすぐったい。いつもならめんどくさくなってしまうところだけど、今日はもうしばらくこうしていてもいいかもと思ってしまう。
「お前、なんか、雰囲気変わった?」
止めどなくキスを降らせてくる鴫野の両頬を手で包んで、鴫野の顔をまじまじと見る。重たそうな奥二重の瞼、しっかりした眉毛。よく見たら、割と男らしい顔してるんだよな。
「あ、はい」
「なんか、かっこよくなったな」
「……まじすか」
鴫野の頬が少し熱くなる。
「眉毛?」
「はい。あと、筋トレとランニングしました」
やっぱり。ちゃんとやってたんだな。こういうところ、いじらしくてかわいいなと思ってしまう。
「がんばってんな」
愛されてる実感みたいなものが湧いてきて、思わず頬が緩んだ。
「あざす」
「じゃあ、鴫野に頑張ってもらお」
俺は鴫野から手を離すとベッドに大の字になった。
「は」
ぽかんとしている鴫野は俺の言った意味がわかっていないようだった。
「楽しませろよ?」
笑ってみせると、鴫野の喉仏が上下した。
鴫野の男臭い一面を見るたびに、腹の中が甘く疼いた。
制服も下着も脱ぎ捨てた俺たちは、寒いから布団の中で裸で抱き合う。
「先輩、かわいい」
鴫野の鼻先が首筋を撫でて、鴫野の温度の唇が柔らかく触れる。くすぐったい。
「お前、ひとりでした?」
「しました」
俺の質問に素直に答える鴫野。吐息混じりの声と、唇と舌が皮膚の薄い場所をくすぐる。首筋から胸に這い降りた鴫野の唇がすっかり尖った乳首を舐る。
「っ、どう、だった?」
「先輩とした方が気持ちよかったっす」
即答すんのかよ。まあ、いいけど。
「先輩は?」
すっかり硬くなった乳首を舌先で撫で、鴫野が俺を見上げる。
「俺も」
そんなの、当たり前だろ。
文化祭の後にしたのが最後で、それ以来一人で慰めていた俺の身体はそろそろ限界だった。乳首ばかり執拗に舐めしゃぶられて、物足りなさに胎が疼く。
「いい子にしてたみたいだな鴫野」
鴫野の頭を撫でると、鴫野は喉を鳴らした。
「先輩、それ、反則」
鴫野の声が欲情で濡れて、俺の身体は期待を募らせ勝手に熱くなる。
「先輩、すき」
鴫野は俺の平らな胸板にキスをして、乳首を捏ねる。そっちじゃなくて、早くちんこ触れよ。
「ん、おれ、も、好き、しぎの」
はしたないとわかっているのに、硬くなったちんこを鴫野に押し付けてしまう。
「先輩、寂しくなかったすか」
「……寂しかったよ」
「よかった、俺も」
ようやく気付いたのか、鴫野の手がすっかり芯を持って反り返る俺のちんこに触れた。
やんわりと、鴫野の大きくて骨張った手のひらが包み込むみたいに撫でる。肉感の薄い手のひらは、鴫野の昂りを物語るように熱い。それにまた、俺の身体は熱を上げる。
「先輩なら、きっと受かりますよ」
こいつが言うならいけるかもと思ってしまうあたり、俺も大概単純なのかもしれない。
「合格したら、デートしましょ」
「はは」
思わず笑ってしまった。
なんだよ、デートしたいのかよ。
そういえば、鴫野とはデートらしいデートはしたことがなかった。
「なんすか」
鴫野は少し怒ったのか、唇をへの字にした。怒るなよ。お前、結構そういうの好きなんだな。
「いいよ」
したくないわけじゃないから、受かって時間ができたら、どこでもいいからどこかに行こう。
「受かったら、な」
勿体ぶるわけじゃないけど、受からないと、安心できない。進路指導室の先生にも多分大丈夫だと言われたけど。
「絶対、受かって、先輩」
熱っぽい声が降ってきて、俺は鴫野を見上げる。火傷しそうな熱を孕んだ、縋るような視線が俺を射抜く。
「なあ、鴫野」
心臓が煩く鳴り響いて、声が掠れる。
「いきたい」
俺は先走りをだらしなく垂らす自身を鴫野の手のひらに擦り付ける。熱い手のひらに裏筋が擦れて、またカウパーがだらだらと溢れる。
鴫野は息を飲んだ。
「……ッス」
鴫野の手がしっかりと俺のちんこを握り込んで、上下に動く。
「ん、ゅ」
気持ちよくて腰が勝手に揺れる。はしたなく腰を振るのを見られるのは恥ずかしいのに、湧き上がる快感には勝てなくて、鴫野の手の動きに合わせて無様に腰を揺らす。すっかり先走りで濡れそぼったそこからは、鴫野が擦るのに合わせて濡れた音が立つ。その音さえ俺を昂らせる。鴫野に触れられて与えられるもの、全てが快感に繋がっていた。
「しぎ、の」
「先輩、いきそ?」
鴫野の甘ったるい声がこちらを伺う。鴫野の手の中でもう何度もびくびくと跳ねている俺のは限界が近い。
「ん」
頷くと、鴫野の手は今までよりも強く、緩急をつけた動きで俺を翻弄する。
「ぅあ、いく、しぎ、の、ぁ」
俺のものを扱く鴫野の手に合わせて腰を振って、快感を貪る。
熱い精液が上がってくる感じに、思わず喉から上擦った声が漏れた。
大きく脈打ち、熱い白濁が何度も散る。胸から腹にかけて、ぱたぱたと白い飛沫が落ちる。
余韻に腰を震わせる俺は、鴫野の手に縋るように手を重ねた。程よい圧をかけて、根本から先端まで一滴残さず絞り出すように動く鴫野の手は、いったばかりで敏感になり過ぎている俺には過ぎた刺激で、声も出せなかった。
「ゴム、つけたらよかったっすね」
鴫野のは俺の出したザーメン塗れの手を舐めた後、ティッシュで丁寧に拭いてくれた。ようやく解放された俺はされるがまま、シーツに身体を投げ出して余韻の海をゆらゆらと揺蕩う。
ぼんやりしている俺に戯れるみたいな触れるだけのキスをして、ゴムをつけた鴫野はようやく俺の中に入ってきた。
ろくに触ってないのに、鴫野は臨戦体勢だった。
ゆっくり俺の中を拓いていくエグい雁首とか、血管の浮いた幹とか、投げてよこす縋るような視線とか。全部が愛おしい。こんなに愛情を向けられるのが気持ちいいなんて知らなかったし、多幸感で溶け出しそうなくらい、頭の中も身体も鴫野でいっぱいだった。
「なか、きもちい」
俺はそれを享受するだけで、俺ばかり気持ちいいんじゃ申し訳なくて鴫野を見上げた。
「先輩、中、やばい」
眉間に皺を寄せて、何かに耐えるような鴫野。あぁこいつも、ちゃんと気持ちいいんだな。
ひくつく中は甘えるみたいに鴫野を締め付けて、俺の中に鴫野のかたちを鮮明に浮き上がらせた。
鴫野を身体ごと引き寄せて頭を抱えて、耳にやんわり歯を立てた。
「っく、せんぱ、いく、から、っあ」
鴫野が身体を震わせた。
「っ、もっと、ぐちゃぐちゃにしろよ」
中で鴫野が脈打って、熱いものを吐き出すのを感じる。息を詰めて射精する鴫野の耳元に、わざと甘えた声を吹き込んでやると。
「もー、煽りすぎっすよ、あんた」
鴫野は俺を剥がすとシーツに押し付けた。
「あ、ぅ」
今しがたいったのに、まだ萎えていない鴫野が中で動くと、それだけで快感が生まれて俺は無様に喘ぐしかなかった。
少しくらい酷くしてもいいのに、鴫野は馬鹿みたいに丁寧に俺に触れて、俺を拓いていく。
「っ、くそ、おまえ、丁寧、すぎ」
もっと雑でも壊れないのに。
鴫野を睨むと、眉を下げた鴫野は謝るでもなく、申し訳なさそうに言った。
「俺がしたいんすよ。できれば、ずっとあんたとこうしてたい」
奥まで捩じ込むのもゆっくり様子を伺うみたいにするから、焦れったくて声を上げそうになる。
それで奥を叩かれると、もうだめだった。とんとんと伺うみたいに叩かれ、ねだるみたいに捏ねられて、もっと奥に欲しくなってしまう。まだ誰も知らない、俺の一番奥まで。
かと思えばねっとりと腰を引かれて、中が引き止めるみたいに縋り付く。抜けるギリギリまで引かれて、またゆっくり奥まで入ってくる。
中は勝手に波打って、鴫野を締め付ける。
もう俺の意思なんか関係なく、感じすぎる俺の身体はずっと気持ちよくて、久しぶりの俺はすぐに意識を飛ばしてしまった。
気がつくと部屋は暗くなっていて、ベッドサイドのスタンドの明かりがあるだけだった。
「先輩」
鴫野の声がした方を見上げる。
心配そうな顔をした鴫野が俺を覗き込んでいた。
「起きました?」
「ん」
いつの間にか気絶していたらしい。まぁ、あんな気持ちいいんだから仕方ない。久しぶりだったし。
「片付けしてあるんで」
「さんきゅ」
寝起きのぼんやりした俺を、鴫野が抱きしめる。あったかい鴫野の身体が気持ちよくて、鴫野の背中に腕を回した。
落ち着く。鴫野の温度が側にあるのが堪らなく嬉しくて、抱きつく腕に力を込めた。
鴫野の手が、頭を撫でてくれる。終わった後のこういうところ、めちゃくちゃ好きだった。
「合格発表、いつすか」
頭を撫でながら、鴫野は穏やかな声で言う。甘さの残る低音は、少し眠そうだった。
「来月頭」
「じゃあ、それからっすね」
「なにが」
「デート、すよ」
「ふは」
思わず笑ってしまった。
そんなにデートしたいなら、してやろう。鴫野の行きたいところに、一緒に行く。そうしよう。
「なんすか」
俺に笑われたのが不服だったようで、不貞腐れたような鴫野の声が聞こえた。
「楽しみにしてるよ。どこ行くか、考えとけよ」
「……ッス」
こいつと行くなら、きっとどこになっても悪くないと、そう思った。
額を擦り付けた胸板は、温かかった。
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【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
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目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
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