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九月某日【宥めすかして】鴫野
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人様のちんこを握ったまま急に泣き出した先輩を宥めすかして、なんとか身なりを整えた。
「あの、落ち着きました?」
胸の辺りで抱きしめた先輩からは、ずっと、いい匂いがしている。先輩の香水だろうか。
胸に押し付けて頭やら背中やらを撫でて、やっと落ち着いたらしい先輩は、目元を赤くして鼻を啜る。さっきまで元気だったのに、別人みたいに大人しくなってしまった。
この人を振ったセフレというのは、俺が初めて見た時に一緒にいた相手だろうか。それとも別の誰かだろうか。どちらにせよ、この人は今どうしようもなく傷心で、自棄になって俺の童貞をを食おうとしている。
「お前んち、どこ」
少し鼻声の先輩は拗ねたように言った。どこか幼さを感じる声色が愛おしい。
「ここから、五分くらいです」
「は、近」
「そこの、コンビニの、裏です」
「……案内、しろよ」
先輩はまだやる気みたいだった。俺の気も知らないで。
気まずい、よりも心配だった。本当なら、こんなことしてないで美味いもんでも食べてさっさと寝るとか、カラオケに行くとか、そういうことをした方がいい。絶対その方がいい。
そりゃあ、一年間オカズにし続けた先輩が童貞卒業させてくれるなら願ったり叶ったりだが、タイミングが悪い。傷心の先輩の心の隙に付け入るみたいで気は進まない。
まぁそもそも俺が写真を撮らなければこうはならなかった訳で、このことに関して、俺はもう先輩に従うしかなかった。先輩が気の済むように、誠心誠意尽くすしかないと思った。
結局、部室に荷物を取りに行って、そのまま家に帰った。先輩を連れて。
家には誰もいない。そういうことをするなら、チャンス以外の何物でもない。仕事が忙しくて家を空けがちな両親とすでに独立した兄たちには感謝しかない。
まだ目元の赤い先輩を家に案内する。
「いまなら、誰もいないんで」
玄関のドアを開けて先輩を通す。もっと気の利いたことでも言えればよかったけど、何も思いつかなかった。
「お前、いちおー聞くけど、俺でいいの」
靴を脱ぎながら、先輩が言う。
「いいです。あの、俺の責任なんで。それより、ほんと、俺でいいんすか」
「はは、お前、面白いな」
先輩は笑った。笑う余裕が戻ってきたみたいで、少し安心した。
台所で麦茶を用意して、先輩を部屋まで案内する。二階の、一番手前の部屋だ。先輩は黙ってついてきた。
階段を登って、部屋のドアを開けて先輩を先に通す。カーテンを閉め切った薄暗い部屋は蒸し暑くて、慌ててエアコンをつけた。ふわりと涼しい風が吹き始める。ついでに扇風機もつけた。
先輩は部屋に入るなり、荷物を放り出して俺のベッドに座った。
俺は飲む気のなさそうな麦茶をローテーブルに置いて、リュックも下ろす。
「先輩、あの、名前。なんて呼んだらいいすか」
俺のことは、多分掲示板で見たんだと思う。先輩は俺の名前を知っていたけど、自己紹介もしていなかったことを思い出した。俺はまだこの先輩の名前を知らなかった。
男にしては綺麗な顔立ちの、先輩。目はぱっちりした二重、男にしては長いまつ毛。髪はアッシュブラウンのショートボブ。色素が薄めなのか、瞳の色も少し薄い。
「蓮見洸太郎。好きに呼べよ」
やっと、あの人の名前がわかった。
はすみ、こうたろう。いい名前だ。
「蓮見先輩」
「しぎの」
蓮見先輩は笑った。さっきまでの強硬さが嘘みたいな、柔らかい笑顔で、あの時の顔を思い出して心臓が跳ねた。
「仕切り直し、すんぞ」
人のベッドで我が物顔の先輩は、悪びれた様子もなく手招きする。
「こいよ」
おそるおそる近寄ると、腕を掴まれベッドに引き倒されて、身体が密着する。手慣れすぎだろ。男子高校生二人分の体重を受け止めさせられたベッドが苦しげな音を立てた。
やばい。今はまだ九月で、少なからず汗をかいている。そんな状態で、先輩とどうこうするのは気が引けた。
「ちょ、まって、シャワー、とか」
「今更気にすんなよ」
「先輩はよくても俺が気にするんすよ。10分でいいんで、待っててください」
「……わーったよ」
先輩は渋い顔をしたが、すんなり解放してくれた。
ベッドを下りてダッシュで風呂場に行って、身体を洗って部屋に戻ると、先輩はベッドに寝転がってすっかりくつろいでいた。勝手に人のマンガ読んでるし。
「お待たせしました」
「はは、本当に十分で帰ってきた」
マンガを置いて、代わりにスマートフォンの時計をちらりと見て、先輩は満足げだった。
「あの」
「来いって」
俺のベッドなのに。俺の部屋なのに。もうこの空間は先輩が支配していた。
「ほら、脱げよ」
先輩は簡単に言うが、先輩とはさっき会ったばかり。初対面の人間の前で脱げと言われてそうそう脱げるわけがなかった。もたもたしている俺に焦れたのか、先輩は身体を起こして俺の腕を掴んだ。
「もー、いいから、そのままこい」
引き倒され、またベッドが軋んだ。
シーツに押し付けられ、俺は覚悟を決めた。
先輩は手慣れた手つきで俺のベルトを外していく。下着のゴムを引っ張って、ずり下げる。
「さっきも思ったけど、お前、毛、濃いのな」
先輩が抑揚のない声で言う。
「すんません」
責めるつもりではないんだろうけど、思わず謝ってしまう。
「いいよ、おれ、濃いの好きだし」
そんな性癖をさらりと暴露をされて呆気に取られている間に、先輩は綺麗に通った鼻筋の先をなんの躊躇いもなく濃い茂みに突っ込む。
正直、それだけで十分に刺激的だった。
脳裏にはずっと、あの日の先輩のフェラ顔が焼き付いていた。それがいま、別アングルで生で拝めるのだから。
その下、うっすら兆した俺のちんこに、溶けてしまうんじゃないかと思うくらい柔らかい唇が触れて、離れる。それだけで、そこに血が集まるようだった。
そこをさらに舌でべろりと舐められる。
ざらりとぬるりと、そのどちらもあるような先輩の舌が、根元から先端までゆっくりと這い上がる。
「っ」
舐められるのも初めての感覚で、腰の辺りがむずむずする。先輩は歯を立てず唇だけでくにくにと幹を揉む。その刺激で俺の愚息はすくすくと硬く育っていく。
「っは、やば……」
楽しげな先輩の声がする。あんた、人のちんこ舐めてそんな声出さないでくださいよ。そう言いたいのをぐっと堪えた。
「お前、膨張率やばいな」
綺麗な唇が、ムードもクソもないことを言う。褒めてるつもりなんだろうか。
「でかい」
先輩の声が、やけにねっとりと鼓膜を震わせた。
まあ、好きな人にそんなこと言われて、嬉しくない奴なんていないと思う。あざす。
先輩はうっとりと、聳り立つそれを見つめた。目つきが蕩けている。頬も心なしか赤い気がする。興奮してる、んだろうか。
先輩の白い指が幹を握って上下に擦る。先からは透明な液体が溢れて止まらない。カウパーはだらしなく垂れて先輩の手を濡らしている。そのせいで、先輩の手が動くたびにいやらしい音が立つ。
簡単に血を集めて硬く反り返るそれは、緩く扱かれているだけで気持ちいい。限界はそんなに遠くなさそうだった。
あんなに恋焦がれた存在が、聳り立つ自分のそれに触れている。こんなの、興奮しない方がおかしい。
「まって、先輩」
「なんだよ」
邪魔すんなとでも言いたげな先輩は、僅かに眉を寄せた。そうは言いますけど、いきなり顔射とかしたら怒るでしょ、絶対。
「……いきそう」
「出せよ、飲んでやるから」
散々俺を弄んだ唇が笑みの形に変わる。
ちゅ、と音を立てて先輩の柔らかい唇が丸く張った亀頭に吸い付く。
溶けそうなくらい柔らかい唇に包まれて涎を塗され、腹の底から熱いものが上がってくるのを感じた。
「っ、でる」
先輩の頭を押さえつけたいのを必死に堪えて、シーツを握り、先輩の熱い口の中に射精した。何度も脈打って、幹がびくびくと揺れる。先輩の舌が裏筋をざらりと擦って、腰が震えた。舌先にぬるりと先端を撫でられて、思わず呻いた。
少しして射精が落ち着いた頃、先輩の喉がこくんと鳴った。
は? この人、俺のザーメン飲んだの?
「ん、濃いな」
濃いのは一週間くらいしていなかったせいだろう。最近ちょっと面倒臭くてしてなかった。
「飲んだんすか」
「飲んだよ」
口に出させてくれるだけで感動なのに、先輩は更に飲んでくれたらしい。
その証拠に、ということだろうか。先輩は、べ、と舌を見せる。赤い舌の上にはもう白濁は残っていなかった。そういうことするの、エロ本の中だけじゃないんすね。
「腹、壊さないんすか」
素朴な疑問を口にすると、先輩はなんてことないような口ぶりで言う。
「こっちなら大丈夫」
「は」
「あーお前、知らねーか」
先輩はニヤリと笑った。さーせん、童貞なもんで。
「ケツに出したら後始末しねーと腹壊すけど、こっちなら大丈夫なんだよ」
先輩はさっきまで俺を咥え込んでいた唇をぺろりと舐めた。
もう何をしても先輩はかわいかった。
「いい子だ。まだ萎えんなよ」
勃ち上がったままの俺のちんこをひと撫でして、先輩は身体を起こした。
「は、先輩」
まだ何かする気でいるらしい先輩を目で追う。
「フェラで終わるわけねーだろ。最後まで相手してもらうぞ」
するりとネクタイを緩めたその表情は獰猛な雄そのものなのに。纏う空気は妖しく、晒される肌は艶かしく、笑みは淫靡だった。
「お前の童貞、食ってやるって言っただろうが」
先輩はさっさと制服を脱ぎ捨てる。俺も続いて制服を脱いでいく。
下着まで脱ぎ捨てた先輩は裸になった俺をベッドに押しつけ、太腿の辺りに跨った。
先輩のあまり日焼けしていない肌が晒されている。運動部だろうか。華奢だけど程よくついた筋肉で引き締まった身体をしている。
平らな胸には、くすんだピンクの乳首が見える。
その光景だけで、また下半身に血が集まる。
先輩は慣れた手つきで俺にゴムを付けて、自分のにも付けた。
「お前の、でかいやつじゃないときつそうだな」
小分けのローションを垂らしながら、指先がしゃくり上げる肉棒を撫でる。まあ、なんとなくきつい気はするけど、こんなもんじゃないんすか。
「誰か、好きな女子のことでも考えとけよ」
急に真剣な顔をする先輩。あんた俺の話聞いてました?
「は、何言ってんすか、目の前にいるのに」
思わず言ってしまった。
「あんたが誰かしらねー先輩とやってるの見てから、あんたでしか勃たねーんですよ」
言ってしまった。
先輩は面食らったようだったけれど、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「は、じゃあ、よーく見とけよ、童貞」
所謂M字開脚の体勢になって、先輩は全部を俺の目の前に晒した。薄い陰毛も、形の良い綺麗な色のちんこも、全部。俺の先っちょに触れた先輩のアナルはひくひくと震えていた。しゃぶられてるみたいで、背中も腰もぞくぞくする。
「お前がオカズにしてた先輩に、食われるとこ」
俺のちんこに手を添えて、ゆっくりと、先輩は腰を落としていく。
「は、やば……」
そんな言葉しか出てこなくて、思わず笑ってしまう。いや、笑っている余裕なんてない。
先輩の中に、埋まっていく。飲み込まれていく。
ローションでぬるつくそこは、柔らかくうねって気持ちが良すぎて。正直、気を張っていないとすぐにいきそうだった。
「先輩」
縋るように先輩を呼ぶ。
「ちょっと、黙ってろ」
眉を寄せ、悩ましげな表情で、先輩は腰を落としていく。苦しげに息をする先輩の中に、俺の昂りがゆっくりと埋まっていく。
「は、ぁ」
やばい。写真、撮りたい。
「先輩、撮っていいっすか」
「は、ダメ。きっちり、その目に焼き付けとけよ」
「……っす」
そんなこと言われなくても、そのつもりだ。
「う、く」
先輩の中の、行き当たりの場所まで入った。
先輩は少し苦しそうで、それでも漏れる声は少しばかり甘い響きが含まれているような気がした。
「ふ、これで、卒業、だな」
俺を見下ろして先輩が笑う。瞼が少し落ちて、蕩けそうな笑みだった。
「っ、ふ、奥まで、きてる」
先輩はそのままのおれの胸に手をついてリズミカルに腰を上下に揺らす。
甘ったるい声を漏らしながら快感を追う姿は、見ているだけで俺を煽る。
それに合わせて、とろとろの中が締め付けてくるので堪らない。俺はよれたシーツを握るしかなかった。
「先輩、やば、い、から」
「いきたきゃ、いけよ」
先輩の口から、素気ないお許しが出た。
息を詰め、誘われるままに先輩の中に吐き出す。何度も脈打ち、熱いザーメンを注いだ。
出ているのは先輩もわかっているらしく、ゆっくりと搾り取るように腰を揺らした。
「まだ、できるよな?」
荒い呼吸を繰り返す俺を見下ろして、先輩は目を細めた。
その後は、夢みたいだった。
先輩が自分の上で腰を振る。一定のリズムで揺らして、時々腰をを円を描くように回して、見せつけるみたいにゆっくり動かして。
亀頭が、こつこつと奥にあたって、全部入ってないのに、気持ちよくて、すぐにいった。
なのに先輩はやめなくて、そのまま二回、いかされた。
それでようやく、先輩は満足したらしい。
先輩が腰を上げてずるりと俺のちんこを引き抜くと、うっすら口を開けたアナルから泡立ったローションが垂れ落ちてなんとも言えないいやらしさだった。
先輩は、そのまま脇に座り込んで後始末を始めた。
一方の俺はというと、全力疾走した後みたいに、心臓が煩く鳴っていた。全身に倦怠感が絡みついて、一ミリも動きたくなかった。そんな俺の傍らで先輩はケロッとしている。
「先輩、運動部すか」
「そ。バスケ部。もう引退したけど」
バスケ部。そりゃあ元気ですわ。
先輩はベッドの上に胡座をかいて、慣れた手つきで精液の溜まったゴムの始末をしていく。俺の分も、自分の分も。いつの間にか先輩もいったようで、先輩のゴムにも白いものが溜まっていた。先輩もいったみたいで、少し安心した。
先輩は手際が良い。こういうことに慣れてるのがわかって、ちょっと悔しい。
「鴫野、俺のセフレになれよ」
使用済みのゴムを包んだティッシュを丸めてゴミ箱に放って、ちょっとコンビニ行ってこいくらいのノリで言う。セフレって、セックスフレンドのことっすよね。セックスする友達? 俺が? 俺でいいの?
「彼氏、じゃないんすか」
念のため訊いた。そうならいいのに、という期待を込めて。
「重いだろ、そういうの」
ぽつりと、聞こえた。
そういうの気にするタイプなんすね。全然そんなことないのに。
「重くないです。責任取るって言ったじゃないすか」
「いいって、そういうの」
少しだけ、気のせいかもしれないけど、絞り出すような声。つれない。全然そういう風に聞こえないのに。
「だいたい、あんた、さっきなんであんな泣いたんですか」
「あー……」
少しだけ黙り込んで、先輩はまたぽろぽろと涙をこぼしはじめた。
また泣き出すなんて思っていなかったから、俺は慌てた。この件は地雷だな。もう触らない。絶対触らない。心に決めた。
「っせ、先輩」
先輩は膝を抱えて小さくなっていた。
「あいつ、さっき、彼女連れてきて、目が合ったんだ。俺が見つけた場所なのに、あいつ」
さっき、って、フェラ未遂の時? マジか。
先輩は鼻声になっていた。重症だと思う。それだけでよっぽど好きだったんだとわかる。
俺なんかで慰めになるとは思わないけど、怠い身体を起こして先輩の腕を掴んで引き寄せて抱きしめた。
もうだいぶエアコンが効いているのに、先輩の身体はあったかい。
先輩は腕の中で大人しくしている。猫みたいだった。
「腹減りません? 腹減ってるの、あんま良くないっすよ。俺、何か作りますから」
「やるのに、飯食ってなかった……。腹の中、綺麗にしたから」
「大変なんすね」
めちゃくちゃ純愛じゃん、と思ったのは内緒だ。
飯が食えないのは、育ち盛りの男子高校生にはだいぶしんどいと思う。それなのにこの人は、好きな奴とやるために我慢している。
こういうかわいいところ、ずるいと思う。
あいつって誰か知らんけど、こんなかわいい人振ったのか? バカか?
ちょっと頭にきて元気が出た。身体を起こすと、下着とベッドの隅に放ってあった部屋着を着た。
「飯、用意するんでちょっと待っててください」
台所に下りて、冷凍のご飯と、冷凍の牛丼の素を温めて牛丼を作る。温玉を乗せて、おまけにプリンも部屋に持っていく。
部屋では、まだ先輩はベッドの上だった。
牛丼をテーブルに置く。
「先輩、食べられます?」
蹲っていた先輩は匂いに釣られてベッドから下りてきた。裸のまま。
「先輩、服」
「いい」
先輩はよくても、俺はよくないんすよ。
そんな俺の内心などどうでもいいらしい先輩は、裸のまま俺の正面に座って、手を合わせてちゃんといただきますを言ってから黙々と牛丼を食べていく。
箸遣いも綺麗だった。お手本みたいな、綺麗な箸の持ち方で牛丼を美味しそうに平らげた。
「ご馳走様」
「レトルトですけど」
「はは、ありがとな」
薄く笑った先輩は、今日一の可愛さだった。
「先輩、プリンは」
「食わせて」
突然言われて、面食らった。今この人なんて言った?
そんな俺の内心の揺れなど知らん顔で、食わせろと言わんばかりに先輩は口を開けてみせる。
「……っす」
そうなれば、俺には拒否権はない。
プラスチックのスプーンで掬ったとろけそうな柔らかいプリンを口元に持っていくと、柔らかい唇に吸い込まれる。
「んまい」
「コンビニのやつですけど」
もう一口分、掬って口元に持っていく。先輩は雛鳥のように口を開けて、プリンに食いつく。
そうやって食べさせて、プリンはすぐなくなった。
甘いものもいけるんだなとか、甘えてくるの可愛いなとか。収穫は多かった。
プリンまで完食した先輩はごちそうさまでしたと手を合わせた。
腹が膨れたのか、表情も落ち着いたように見えた。
「飯、んまかった。じゃーな」
牛丼と、俺の手からプリンを食べて、満足したのか先輩は制服を着て帰っていった。
結局、セフレなのか恋人になれるのか、どちらなのか有耶無耶なまま、先輩は帰ってしまった。
「あの、落ち着きました?」
胸の辺りで抱きしめた先輩からは、ずっと、いい匂いがしている。先輩の香水だろうか。
胸に押し付けて頭やら背中やらを撫でて、やっと落ち着いたらしい先輩は、目元を赤くして鼻を啜る。さっきまで元気だったのに、別人みたいに大人しくなってしまった。
この人を振ったセフレというのは、俺が初めて見た時に一緒にいた相手だろうか。それとも別の誰かだろうか。どちらにせよ、この人は今どうしようもなく傷心で、自棄になって俺の童貞をを食おうとしている。
「お前んち、どこ」
少し鼻声の先輩は拗ねたように言った。どこか幼さを感じる声色が愛おしい。
「ここから、五分くらいです」
「は、近」
「そこの、コンビニの、裏です」
「……案内、しろよ」
先輩はまだやる気みたいだった。俺の気も知らないで。
気まずい、よりも心配だった。本当なら、こんなことしてないで美味いもんでも食べてさっさと寝るとか、カラオケに行くとか、そういうことをした方がいい。絶対その方がいい。
そりゃあ、一年間オカズにし続けた先輩が童貞卒業させてくれるなら願ったり叶ったりだが、タイミングが悪い。傷心の先輩の心の隙に付け入るみたいで気は進まない。
まぁそもそも俺が写真を撮らなければこうはならなかった訳で、このことに関して、俺はもう先輩に従うしかなかった。先輩が気の済むように、誠心誠意尽くすしかないと思った。
結局、部室に荷物を取りに行って、そのまま家に帰った。先輩を連れて。
家には誰もいない。そういうことをするなら、チャンス以外の何物でもない。仕事が忙しくて家を空けがちな両親とすでに独立した兄たちには感謝しかない。
まだ目元の赤い先輩を家に案内する。
「いまなら、誰もいないんで」
玄関のドアを開けて先輩を通す。もっと気の利いたことでも言えればよかったけど、何も思いつかなかった。
「お前、いちおー聞くけど、俺でいいの」
靴を脱ぎながら、先輩が言う。
「いいです。あの、俺の責任なんで。それより、ほんと、俺でいいんすか」
「はは、お前、面白いな」
先輩は笑った。笑う余裕が戻ってきたみたいで、少し安心した。
台所で麦茶を用意して、先輩を部屋まで案内する。二階の、一番手前の部屋だ。先輩は黙ってついてきた。
階段を登って、部屋のドアを開けて先輩を先に通す。カーテンを閉め切った薄暗い部屋は蒸し暑くて、慌ててエアコンをつけた。ふわりと涼しい風が吹き始める。ついでに扇風機もつけた。
先輩は部屋に入るなり、荷物を放り出して俺のベッドに座った。
俺は飲む気のなさそうな麦茶をローテーブルに置いて、リュックも下ろす。
「先輩、あの、名前。なんて呼んだらいいすか」
俺のことは、多分掲示板で見たんだと思う。先輩は俺の名前を知っていたけど、自己紹介もしていなかったことを思い出した。俺はまだこの先輩の名前を知らなかった。
男にしては綺麗な顔立ちの、先輩。目はぱっちりした二重、男にしては長いまつ毛。髪はアッシュブラウンのショートボブ。色素が薄めなのか、瞳の色も少し薄い。
「蓮見洸太郎。好きに呼べよ」
やっと、あの人の名前がわかった。
はすみ、こうたろう。いい名前だ。
「蓮見先輩」
「しぎの」
蓮見先輩は笑った。さっきまでの強硬さが嘘みたいな、柔らかい笑顔で、あの時の顔を思い出して心臓が跳ねた。
「仕切り直し、すんぞ」
人のベッドで我が物顔の先輩は、悪びれた様子もなく手招きする。
「こいよ」
おそるおそる近寄ると、腕を掴まれベッドに引き倒されて、身体が密着する。手慣れすぎだろ。男子高校生二人分の体重を受け止めさせられたベッドが苦しげな音を立てた。
やばい。今はまだ九月で、少なからず汗をかいている。そんな状態で、先輩とどうこうするのは気が引けた。
「ちょ、まって、シャワー、とか」
「今更気にすんなよ」
「先輩はよくても俺が気にするんすよ。10分でいいんで、待っててください」
「……わーったよ」
先輩は渋い顔をしたが、すんなり解放してくれた。
ベッドを下りてダッシュで風呂場に行って、身体を洗って部屋に戻ると、先輩はベッドに寝転がってすっかりくつろいでいた。勝手に人のマンガ読んでるし。
「お待たせしました」
「はは、本当に十分で帰ってきた」
マンガを置いて、代わりにスマートフォンの時計をちらりと見て、先輩は満足げだった。
「あの」
「来いって」
俺のベッドなのに。俺の部屋なのに。もうこの空間は先輩が支配していた。
「ほら、脱げよ」
先輩は簡単に言うが、先輩とはさっき会ったばかり。初対面の人間の前で脱げと言われてそうそう脱げるわけがなかった。もたもたしている俺に焦れたのか、先輩は身体を起こして俺の腕を掴んだ。
「もー、いいから、そのままこい」
引き倒され、またベッドが軋んだ。
シーツに押し付けられ、俺は覚悟を決めた。
先輩は手慣れた手つきで俺のベルトを外していく。下着のゴムを引っ張って、ずり下げる。
「さっきも思ったけど、お前、毛、濃いのな」
先輩が抑揚のない声で言う。
「すんません」
責めるつもりではないんだろうけど、思わず謝ってしまう。
「いいよ、おれ、濃いの好きだし」
そんな性癖をさらりと暴露をされて呆気に取られている間に、先輩は綺麗に通った鼻筋の先をなんの躊躇いもなく濃い茂みに突っ込む。
正直、それだけで十分に刺激的だった。
脳裏にはずっと、あの日の先輩のフェラ顔が焼き付いていた。それがいま、別アングルで生で拝めるのだから。
その下、うっすら兆した俺のちんこに、溶けてしまうんじゃないかと思うくらい柔らかい唇が触れて、離れる。それだけで、そこに血が集まるようだった。
そこをさらに舌でべろりと舐められる。
ざらりとぬるりと、そのどちらもあるような先輩の舌が、根元から先端までゆっくりと這い上がる。
「っ」
舐められるのも初めての感覚で、腰の辺りがむずむずする。先輩は歯を立てず唇だけでくにくにと幹を揉む。その刺激で俺の愚息はすくすくと硬く育っていく。
「っは、やば……」
楽しげな先輩の声がする。あんた、人のちんこ舐めてそんな声出さないでくださいよ。そう言いたいのをぐっと堪えた。
「お前、膨張率やばいな」
綺麗な唇が、ムードもクソもないことを言う。褒めてるつもりなんだろうか。
「でかい」
先輩の声が、やけにねっとりと鼓膜を震わせた。
まあ、好きな人にそんなこと言われて、嬉しくない奴なんていないと思う。あざす。
先輩はうっとりと、聳り立つそれを見つめた。目つきが蕩けている。頬も心なしか赤い気がする。興奮してる、んだろうか。
先輩の白い指が幹を握って上下に擦る。先からは透明な液体が溢れて止まらない。カウパーはだらしなく垂れて先輩の手を濡らしている。そのせいで、先輩の手が動くたびにいやらしい音が立つ。
簡単に血を集めて硬く反り返るそれは、緩く扱かれているだけで気持ちいい。限界はそんなに遠くなさそうだった。
あんなに恋焦がれた存在が、聳り立つ自分のそれに触れている。こんなの、興奮しない方がおかしい。
「まって、先輩」
「なんだよ」
邪魔すんなとでも言いたげな先輩は、僅かに眉を寄せた。そうは言いますけど、いきなり顔射とかしたら怒るでしょ、絶対。
「……いきそう」
「出せよ、飲んでやるから」
散々俺を弄んだ唇が笑みの形に変わる。
ちゅ、と音を立てて先輩の柔らかい唇が丸く張った亀頭に吸い付く。
溶けそうなくらい柔らかい唇に包まれて涎を塗され、腹の底から熱いものが上がってくるのを感じた。
「っ、でる」
先輩の頭を押さえつけたいのを必死に堪えて、シーツを握り、先輩の熱い口の中に射精した。何度も脈打って、幹がびくびくと揺れる。先輩の舌が裏筋をざらりと擦って、腰が震えた。舌先にぬるりと先端を撫でられて、思わず呻いた。
少しして射精が落ち着いた頃、先輩の喉がこくんと鳴った。
は? この人、俺のザーメン飲んだの?
「ん、濃いな」
濃いのは一週間くらいしていなかったせいだろう。最近ちょっと面倒臭くてしてなかった。
「飲んだんすか」
「飲んだよ」
口に出させてくれるだけで感動なのに、先輩は更に飲んでくれたらしい。
その証拠に、ということだろうか。先輩は、べ、と舌を見せる。赤い舌の上にはもう白濁は残っていなかった。そういうことするの、エロ本の中だけじゃないんすね。
「腹、壊さないんすか」
素朴な疑問を口にすると、先輩はなんてことないような口ぶりで言う。
「こっちなら大丈夫」
「は」
「あーお前、知らねーか」
先輩はニヤリと笑った。さーせん、童貞なもんで。
「ケツに出したら後始末しねーと腹壊すけど、こっちなら大丈夫なんだよ」
先輩はさっきまで俺を咥え込んでいた唇をぺろりと舐めた。
もう何をしても先輩はかわいかった。
「いい子だ。まだ萎えんなよ」
勃ち上がったままの俺のちんこをひと撫でして、先輩は身体を起こした。
「は、先輩」
まだ何かする気でいるらしい先輩を目で追う。
「フェラで終わるわけねーだろ。最後まで相手してもらうぞ」
するりとネクタイを緩めたその表情は獰猛な雄そのものなのに。纏う空気は妖しく、晒される肌は艶かしく、笑みは淫靡だった。
「お前の童貞、食ってやるって言っただろうが」
先輩はさっさと制服を脱ぎ捨てる。俺も続いて制服を脱いでいく。
下着まで脱ぎ捨てた先輩は裸になった俺をベッドに押しつけ、太腿の辺りに跨った。
先輩のあまり日焼けしていない肌が晒されている。運動部だろうか。華奢だけど程よくついた筋肉で引き締まった身体をしている。
平らな胸には、くすんだピンクの乳首が見える。
その光景だけで、また下半身に血が集まる。
先輩は慣れた手つきで俺にゴムを付けて、自分のにも付けた。
「お前の、でかいやつじゃないときつそうだな」
小分けのローションを垂らしながら、指先がしゃくり上げる肉棒を撫でる。まあ、なんとなくきつい気はするけど、こんなもんじゃないんすか。
「誰か、好きな女子のことでも考えとけよ」
急に真剣な顔をする先輩。あんた俺の話聞いてました?
「は、何言ってんすか、目の前にいるのに」
思わず言ってしまった。
「あんたが誰かしらねー先輩とやってるの見てから、あんたでしか勃たねーんですよ」
言ってしまった。
先輩は面食らったようだったけれど、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「は、じゃあ、よーく見とけよ、童貞」
所謂M字開脚の体勢になって、先輩は全部を俺の目の前に晒した。薄い陰毛も、形の良い綺麗な色のちんこも、全部。俺の先っちょに触れた先輩のアナルはひくひくと震えていた。しゃぶられてるみたいで、背中も腰もぞくぞくする。
「お前がオカズにしてた先輩に、食われるとこ」
俺のちんこに手を添えて、ゆっくりと、先輩は腰を落としていく。
「は、やば……」
そんな言葉しか出てこなくて、思わず笑ってしまう。いや、笑っている余裕なんてない。
先輩の中に、埋まっていく。飲み込まれていく。
ローションでぬるつくそこは、柔らかくうねって気持ちが良すぎて。正直、気を張っていないとすぐにいきそうだった。
「先輩」
縋るように先輩を呼ぶ。
「ちょっと、黙ってろ」
眉を寄せ、悩ましげな表情で、先輩は腰を落としていく。苦しげに息をする先輩の中に、俺の昂りがゆっくりと埋まっていく。
「は、ぁ」
やばい。写真、撮りたい。
「先輩、撮っていいっすか」
「は、ダメ。きっちり、その目に焼き付けとけよ」
「……っす」
そんなこと言われなくても、そのつもりだ。
「う、く」
先輩の中の、行き当たりの場所まで入った。
先輩は少し苦しそうで、それでも漏れる声は少しばかり甘い響きが含まれているような気がした。
「ふ、これで、卒業、だな」
俺を見下ろして先輩が笑う。瞼が少し落ちて、蕩けそうな笑みだった。
「っ、ふ、奥まで、きてる」
先輩はそのままのおれの胸に手をついてリズミカルに腰を上下に揺らす。
甘ったるい声を漏らしながら快感を追う姿は、見ているだけで俺を煽る。
それに合わせて、とろとろの中が締め付けてくるので堪らない。俺はよれたシーツを握るしかなかった。
「先輩、やば、い、から」
「いきたきゃ、いけよ」
先輩の口から、素気ないお許しが出た。
息を詰め、誘われるままに先輩の中に吐き出す。何度も脈打ち、熱いザーメンを注いだ。
出ているのは先輩もわかっているらしく、ゆっくりと搾り取るように腰を揺らした。
「まだ、できるよな?」
荒い呼吸を繰り返す俺を見下ろして、先輩は目を細めた。
その後は、夢みたいだった。
先輩が自分の上で腰を振る。一定のリズムで揺らして、時々腰をを円を描くように回して、見せつけるみたいにゆっくり動かして。
亀頭が、こつこつと奥にあたって、全部入ってないのに、気持ちよくて、すぐにいった。
なのに先輩はやめなくて、そのまま二回、いかされた。
それでようやく、先輩は満足したらしい。
先輩が腰を上げてずるりと俺のちんこを引き抜くと、うっすら口を開けたアナルから泡立ったローションが垂れ落ちてなんとも言えないいやらしさだった。
先輩は、そのまま脇に座り込んで後始末を始めた。
一方の俺はというと、全力疾走した後みたいに、心臓が煩く鳴っていた。全身に倦怠感が絡みついて、一ミリも動きたくなかった。そんな俺の傍らで先輩はケロッとしている。
「先輩、運動部すか」
「そ。バスケ部。もう引退したけど」
バスケ部。そりゃあ元気ですわ。
先輩はベッドの上に胡座をかいて、慣れた手つきで精液の溜まったゴムの始末をしていく。俺の分も、自分の分も。いつの間にか先輩もいったようで、先輩のゴムにも白いものが溜まっていた。先輩もいったみたいで、少し安心した。
先輩は手際が良い。こういうことに慣れてるのがわかって、ちょっと悔しい。
「鴫野、俺のセフレになれよ」
使用済みのゴムを包んだティッシュを丸めてゴミ箱に放って、ちょっとコンビニ行ってこいくらいのノリで言う。セフレって、セックスフレンドのことっすよね。セックスする友達? 俺が? 俺でいいの?
「彼氏、じゃないんすか」
念のため訊いた。そうならいいのに、という期待を込めて。
「重いだろ、そういうの」
ぽつりと、聞こえた。
そういうの気にするタイプなんすね。全然そんなことないのに。
「重くないです。責任取るって言ったじゃないすか」
「いいって、そういうの」
少しだけ、気のせいかもしれないけど、絞り出すような声。つれない。全然そういう風に聞こえないのに。
「だいたい、あんた、さっきなんであんな泣いたんですか」
「あー……」
少しだけ黙り込んで、先輩はまたぽろぽろと涙をこぼしはじめた。
また泣き出すなんて思っていなかったから、俺は慌てた。この件は地雷だな。もう触らない。絶対触らない。心に決めた。
「っせ、先輩」
先輩は膝を抱えて小さくなっていた。
「あいつ、さっき、彼女連れてきて、目が合ったんだ。俺が見つけた場所なのに、あいつ」
さっき、って、フェラ未遂の時? マジか。
先輩は鼻声になっていた。重症だと思う。それだけでよっぽど好きだったんだとわかる。
俺なんかで慰めになるとは思わないけど、怠い身体を起こして先輩の腕を掴んで引き寄せて抱きしめた。
もうだいぶエアコンが効いているのに、先輩の身体はあったかい。
先輩は腕の中で大人しくしている。猫みたいだった。
「腹減りません? 腹減ってるの、あんま良くないっすよ。俺、何か作りますから」
「やるのに、飯食ってなかった……。腹の中、綺麗にしたから」
「大変なんすね」
めちゃくちゃ純愛じゃん、と思ったのは内緒だ。
飯が食えないのは、育ち盛りの男子高校生にはだいぶしんどいと思う。それなのにこの人は、好きな奴とやるために我慢している。
こういうかわいいところ、ずるいと思う。
あいつって誰か知らんけど、こんなかわいい人振ったのか? バカか?
ちょっと頭にきて元気が出た。身体を起こすと、下着とベッドの隅に放ってあった部屋着を着た。
「飯、用意するんでちょっと待っててください」
台所に下りて、冷凍のご飯と、冷凍の牛丼の素を温めて牛丼を作る。温玉を乗せて、おまけにプリンも部屋に持っていく。
部屋では、まだ先輩はベッドの上だった。
牛丼をテーブルに置く。
「先輩、食べられます?」
蹲っていた先輩は匂いに釣られてベッドから下りてきた。裸のまま。
「先輩、服」
「いい」
先輩はよくても、俺はよくないんすよ。
そんな俺の内心などどうでもいいらしい先輩は、裸のまま俺の正面に座って、手を合わせてちゃんといただきますを言ってから黙々と牛丼を食べていく。
箸遣いも綺麗だった。お手本みたいな、綺麗な箸の持ち方で牛丼を美味しそうに平らげた。
「ご馳走様」
「レトルトですけど」
「はは、ありがとな」
薄く笑った先輩は、今日一の可愛さだった。
「先輩、プリンは」
「食わせて」
突然言われて、面食らった。今この人なんて言った?
そんな俺の内心の揺れなど知らん顔で、食わせろと言わんばかりに先輩は口を開けてみせる。
「……っす」
そうなれば、俺には拒否権はない。
プラスチックのスプーンで掬ったとろけそうな柔らかいプリンを口元に持っていくと、柔らかい唇に吸い込まれる。
「んまい」
「コンビニのやつですけど」
もう一口分、掬って口元に持っていく。先輩は雛鳥のように口を開けて、プリンに食いつく。
そうやって食べさせて、プリンはすぐなくなった。
甘いものもいけるんだなとか、甘えてくるの可愛いなとか。収穫は多かった。
プリンまで完食した先輩はごちそうさまでしたと手を合わせた。
腹が膨れたのか、表情も落ち着いたように見えた。
「飯、んまかった。じゃーな」
牛丼と、俺の手からプリンを食べて、満足したのか先輩は制服を着て帰っていった。
結局、セフレなのか恋人になれるのか、どちらなのか有耶無耶なまま、先輩は帰ってしまった。
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