かみうみ異譚

はち

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秘めやかに注ぐあい2

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「マガツヒ、おなかは減らないの?」

 寝所でイザナギの膝の上に乗せられ、痩せた平らな腹を撫でられる。うっすらと肋が浮き、平らな腹の真ん中には臍が小さな窪みを作っている。

「おな、か」

 臍の周りをイザナギの手が撫でる。

「皆、何かを食べるんだけどね、ナオビが心配しているよ」
「イザナギさまは」

 マガツヒはイザナギを見上げる。

「私も食べるよ」
「あ……」

 マガツヒは不安げに金の瞳を揺らした。
 自分が異質であることを知っているマガツヒは、他の者と異なることを何よりも恐れた。
 そんなマガツヒの心の揺れを察したイザナギは、マガツヒをそっと抱き締めて宥めるように腹を撫でた。

「まだ、身体が馴染んでいないのかな。無理に食べるものでもないから、ゆっくり慣れていけばいいよ」

 腹を優しく撫でられ、安堵したのも束の間、マガツヒの胎は物欲しげにひくつく。

「イザナギさま」

 マガツヒの声には媚びるような甘さが混じる。

「おなか、痛かったり辛かったりしない?」

 マガツヒは黙ったまま頷いた。
 痛いところはなかったが、何かを食べたいとは思わなかったし、必要だとも思わなかった。

「じゃあ、わたしが注いであげた方がいいかな。ねえ、マガツヒ」

 イザナギが悪戯ぽく唇の端を持ち上げ、朝焼け色の形の良い唇が笑みの形に歪む。
 マガツヒは期待にこくんと喉を鳴らした。
 欲しいと思うのは、イザナギのことばかりだった。胎に熱いものを注がれるのは気持ちがよかった。最奥を突かれて味わう快楽は身も心も灼かれるようで怖かったが、それ以上に何もかも甘く痺れるようで好きだった。

 そんなマガツヒの期待を知っているのか、イザナギはマガツヒを寝台に横たえた。
 脚を拡げられ、臍の下で花芯のように勃ち上がったものも、その下に息づく蕾も、イザナギの金色の瞳にすべて映される。

「あ……」

 イザナギに見られていることに、胸が高鳴る。身体の芯に火が入ったように熱くなった。
 身体が昂るのがわかって、マガツヒは喉を鳴らす。
 胎の中が熱く湿っている。肉洞は物欲しげに戦慄き、イザナギに貫かれるのを待ち望んでいる。

「イザナギさま」

 媚びるようなマガツヒの声に、イザナギは応える代わりに目を細める。
 衣擦れの音がしてイザナギが身を包んでいた衣が寝台の下へと滑り落ちた。
 イザナギの白い身体が晒される。眩い身体の、引き締まった腹の下には肉槍が天を仰いで控えている。

「ほしい、イザナギさま」

 マガツヒが震える声でねだった。媚びることを覚え、ざらつく声はすっかり甘く濡れていた。

「いいよ。たくさん、たくさん、胎に注いであげる」

 イザナギの笑みは柔らかく、それでいて獰猛だった。
 胎の内からはぬめりが滲み出て、ひくつく蕾を濡らす。
イザナギが飲み込む準備ができたそこへ丸く張った先端を押し当てると、微かに濡れた音が立った。
 そのまま押し込まれ、蕾はゆっくりと張り出した部分を飲み込んでいく。

「ッア、う……ン」

 うっすら開いたマガツヒの口からは、悩ましげな声が漏れた。金色の瞳はとろりと溶けて、縋るようにイザナギを見上げている。

「マガツヒの中は気持ちいいね」
「っひ」

 無慈悲に肉壁越しにあるしこりを押しつぶされ、マガツヒは喉を引き攣らせた。
 イザナギの肉槍は熱く潤んだ肉壁を広げながら奥へ進み、窄まりに到達する。

「マガツヒ、ここの口も開けてごらん」

 イザナギが甘く低い声で囁く。張った先端で捏ね回し、時折優しく突き上げ、ここを開けろとせがむように襞を叩く。

「っ、ン、ふぅ」

 マガツヒは腹に力を入れてみるが、うまくいかない。とんとんと優しく叩かれている場所はわかるのに、どうしたらその場所が動かせるのかわからなかった。
 イザナギの白い指先が、臍の周りを撫でる。

「ほら、マガツヒ、ここだよ」

 指の触れる場所に意識を集める。

「ン、う」

 押し付けられた先端が、緩んだ襞の奥に潜り込む。

「ーーッ!」

 引き攣った喉から、声にならない声が上がる。
 世界が白く弾ける。全身を、甘い痺れが、熱が、駆け抜ける。
 痩せた背がしなり、喉を晒して、マガツヒは夜色の身体を震わせた。
 聳り立つ花芯からは透明な迸りを散らし、胎の中はきゅんきゅんとうねりながらイザナギを食い締める。

「マガツヒ、上手だね」

 一度開いた襞は簡単にイザナギを飲み込み、きつくイザナギを締め付ける。最奥は、歓喜してイザナギの鋒にしゃぶりついた。

「こんなに、欲しがって」

 イザナギの低く唸るような声がした。
 柔い最奥の肉壁を突かれて、腹が歪に盛り上がる。

「マガツヒ、いくよ」

 最奥めがけて、熱いものが注がれる。
 胎の奥に、熱い奔流が何度も放たれる。繋がった部分から溢れるほど、中は熱いもので満たされていた。
 痩せたマガツヒの腹は今やうっすらと膨らみ、苦しさすらあった。

「ぃあ、ン、ぅ」

 腹には、イザナギに注がれた精が満ちている。
すっかり弛んだマガツヒの身体は震えながら、与えられた快感に深く感じ入っているようだった。
 引き抜いてもいまだ天を仰ぐイザナギの肉槍は、ひくひくと震えている。

「マガツヒ、お腹いっぱいになった?」
「あ……」

 くたりと肢体を寝台に投げ出し、余韻に震えるマガツヒは、ぼんやりとイザナギを見上げていた。

「口からも、あげようか」
「ほしい……」

 マガツヒの震える唇が言葉を紡ぐ。
 イザナギに身体を起こされ、抱き寄せられたマガツヒは、うっとりとした表情でイザナギの下腹に顔を埋め、肉槍にしゃぶりつく。

「んう」

 夜色の唇から時折暗い赤の舌が覗く。

「は、ぁ、いざなぎ、さま」

 口を開け、舌を突き出して深い赤の粘膜を晒す。

「上手だね、マガツヒ」

 マガツヒは、ちゅ、ちゅく、と溢れる涎を絡めながら、丸く張った先端を必死にしゃぶった。

「飲めるかい? マガツヒ」

 舌の上で涎を絡めながら肉槍を擦り、マガツヒはこくんと頷く。
 熱の塊から、熱い奔流が放たれる。何度も脈打ち、マガツヒの口の中に灼けるような熱が注がれる。
 とぷんとぷんと口の中を満たしていくイザナギの精はひどく甘く、喉を鳴らして飲み込むとどろりと喉を流れ、はらわたに落ちて全身に染み渡っていく。

 マガツヒは薄暗い金の瞳を潤ませ、流れ込む白い奔流を飲み干した。
 小さな音を立てて吸い上げると、ゆっくりと引き抜かれる。

「こぼさず上手に飲めたね、マガツヒ」

 白い手に頬を撫でられ、夜色の唇を白く汚してマガツヒは淫靡に微笑んだ。



 あれから数日。少し肉がついたのだろうか。夜色の肌の明らかに骨の浮いた所は少なくなったように思える。
 身体を丸めて眠る夜色の神を見て、ナオビはずっと感じていた罪悪感のようなものが軽くなったような気がした。

「マガツヒ、起きろ」

 ナオビの声に、痩せた背中がもぞりと動いた。

「んぁ、なおび」

 ゆっくりと身体を起こし、マガツヒはまだ半分瞼が落ちた目でナオビを見上げた。

「湯浴みの時間だ」

 ナオビの声に、マガツヒは柔らかく笑った。

 湯浴みを終えてマガツヒを寝所に送り届けた後、ナオビはイザナギの元に向かった。

「イザナギさま、マガツヒは食べるようになったのですか」
「うん、わたしの手から食べてくれるようになったよ。もうじき、自分で食べるようになるさ」

 イザナギがそう言うなら大丈夫だろう。ナオビはイザナギの言葉に、表情を和らげた。マガツヒを見て感じた安堵が気のせいではなかったことに胸を撫でおろす。
 イザナギの笑みを、ナオビは疑うことを知らない。
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