海祇の岬

はち

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ウツホシ編

ウツホシの宮2

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「シュン、ここが、俺とシュンの部屋だよ」

 部屋へ着いて、ようやくウツホシはシュンを下ろしてくれた。
 大広間のような天井の高い広い部屋だった。決して派手ではないが、上品な調度品が設えられていた。
 中央には、布団が一組敷かれていた。ベッドでいう、キングサイズのような大きさだった。

 ウツホシは大きい。シュンから見たら見上げなくてはいけないくらい背が高い。シュンに比べたら三十センチほど大きい。背丈はおそらく二メートルはあるだろう。布団が大きいのも頷けた。
 ここが海の中だということを忘れそうな広い部屋。
 奥には丸い大きな窓が見え、その向こうはひたすらに青い。
 部屋というにはあまりに広い空間は開放感すらあって、そこに二人きりとはいえ、シュンは居た堪れなくなってその手で股間を隠す。

「うぅ、ね、ウツホシ、ふく、は」
「ふふ、シュンは着物が必要だったね」

 ウツホシが手を叩くと、シュンの目の前に葛籠が現れた。魔法か何かだろうか。ウツホシは神様のようなので、魔法が使えてもおかしくない。

「開けてご覧」

 ウツホシに促されて、シュンは座り込むと葛籠の蓋を両手で持ち上げた。

「あ……」

 中には着物と帯が入っていた。透け感のある、青みがかった銀色の生地の着物だった。

「綺麗だな」

 シュンは溜め息のように声を漏らした。本当に綺麗だと思った。着るものにさほどこだわる方ではなかったが、見たことがない生地で高そうだと思った。

「シュンのための着物だよ。着せてあげる」

 シュンの傍らに跪くと、ウツホシは慣れた手つきでシュンに着物を着せていく。
 肌に触れるとさらりとした生地だった。透け感のある生地なので着たところで何となく身体のラインはわかってしまうが、何も無いよりは雲泥の差だった。袖を通して身体を覆うものがあると安心する。人として生きてきた、染みついた習慣はそうそう変わらないようで少し複雑な気分だった。
 帯を締められ、着付けは終わった。
 いつどうやって拵えられたのか、丈もサイズ感もシュンにぴったりだった。

「よく似合うね、シュン。脱がせてしまうのが勿体無いな」

 嬉しそうな笑みとともにそう言われて、シュンの意識はすぐにこの後に行われるであろう行為に向いた。唾液が溢れて、シュンは思わず喉を鳴らして飲み込んだ。

「ありがとう、ウツホシ」

 すぐに脱がされることになっても構わなかった。もう胎が甘く疼いて、ウツホシが欲しくて堪らない。シュンはそんな物欲しげな目をウツホシに向ける。

「さあ、こっちへ」

 その視線を優しい笑みで受け止め、ウツホシの手が着物に包まれたシュンの腰に添えられる。それだけでシュンは胸を高鳴らせた。

「ここなら、誰にも邪魔されないよ。俺とシュンの二人だけ。たくさん、たくさん、愛してあげる」

 広すぎて慣れないが、それでも建物の中にいると少し安心する。外のように他の誰かに見られる心配が無いのは大きい。気持ちいいのは好きだが、恥ずかしいのは苦手だった。下着はつけてもらえなかったが着物はあるし、布団もある。
 そんな状態で、きっとこれからウツホシにたっぷりと愛されるのだ。
 シュンは恍惚に染まった表情でウツホシを見上げた。

 布団の側まで導かれたシュンの身体を、ウツホシの逞しい腕が優しく抱き上げて布団の上へと横たえた。
 布団は、シュンがよく知るあの感触だった。柔らかくふかふかしたそれに、海の中だということをすっかり忘れてしまいそうだった。

「布団だ」

 シュンは手のひらで自分を受け止めている敷布団を撫でた。懐かしい。またこの感触に触れられるなんて思っていなかったシュンは内心ではしゃいでいた。

「ふふ、シュンはこれが好き?」

 ウツホシは覆い被さり、シュンの顔を覗き込む。

「うん」
「俺のことは?」

 ウツホシは情欲に濡れた金の目を細める。それを受け止めるシュンもまた、それに気付き、胎の奥が甘く震えるのを感じた。

「好きだよ」
「嬉しい。シュン」

 唇が重なる。啄むように、触れるだけの口づけを何度も繰り返す。
 それは少しずつ深くなり、舌を絡め合う、貪るようなものに変わっていく。

「ん、は、うつほし」
「ふふ、シュン、その可愛い舌を出して」

 ウツホシに言われるまま、口を開けて舌を突き出す。

「ン、ぇ」

 シュンが限界まで舌を伸ばすと、ウツホシにじっくりと舐めしゃぶられる。舌をフェラされてるみたいだとぼんやり思う。舌を、ウツホシの舌と粘膜が包み込んで執拗に撫で回す。
 気持ちがよくて、シュンは鰓をひくりと震わせた。
 シュンは口に溜まったウツホシの唾液を飲み込み、捩じ込まれるウツホシの肉厚な舌に甘えるように吸い付いた。

「んむ、ぅ」

 舌を絡ませ、唾液を混ぜ合う。粘膜を擦り合わせるだけで頭がぼんやりする。
 ずっと、こうしていたい。ウツホシと触れ合って、粘膜を擦り合わせて、溶け合うみたいに、身体を重ねていたい。
 シュンは胎の奥がウツホシを求めて戦慄くのを感じた。
 ウツホシが欲しい。
 シュンの身体はすっかりウツホシを欲しがるようになっていた。

 唇を離したウツホシは、舌を静かにシュンの顎へと滑らせた。そのまま首筋を滑り降りると、身体を覆う薄衣を割り開き、露わになった鎖骨をなぞって痩せた胸板へと辿り着いた。
 せっかくウツホシが着せてくれた着物はすっかりはだけ、痩せた胸板がウツホシの目に晒される。
 ウツホシの舌先が、幼い色の肉粒に触れる。

「ン、あ」

 ぬるりと舐め上げ、尖らせた舌先で捏ね回すとシュンは甘い息を漏らす。

「ふふ、この柔らかい粒、サンゴの卵みたいだ」

 舌に撫でられ潰されてむずむずした感覚は、徐々に快感へと変わっていく。シュンはそこで快感を得るのは初めてだった。

「あ、ふ、ウツホシ」
「ここも気持ちがいいの?」
「ん」
「シュンの身体はどこも可愛らしいね」

 ウツホシの唇が、舌が、サンゴの卵のようだと言った愛らしい肉粒を撫で回す。
 そんなところで快感を得たことのないシュンは戸惑いながらも、生まれる快感を享受していた。シュンにとって、それは何のためについているのかわからないただの肉粒だった。そこで快感を得たことなど一度もなかったし、自分がそこで快感を得るようになるとも思っていなかった。それが、ウツホシの手によって大きく変えられている。愛らしく未熟な色の肉粒は、ウツホシの唇と舌によって着実に性感帯として目覚め始めていた。
 その証拠に、まだ胸を弄られただけだというのにシュンの性器はすっかり昂り、着物の腹の下の部分を不格好に押し上げていた。

「あは、シュンのちんぽ、元気になった」

 それをちんぽと呼ぶことを覚えたのか、ウツホシは嬉々として声を上げた。
 ウツホシにそう言われるのは恥ずかしかったが、あんまり楽しそうにするので、シュンは何も言わなかった。
 ウツホシはシュンの腰に巻かれた帯を解き、着物をシュンの体から落とした。
 隠すものの無くなったシュンの性器は天を仰ぎ、震えながら涎を垂らしていた。
 ウツホシはうっとりとその視線をシュンの昂りに絡ませ、夜色の指先を這わせる。

「ふふ、硬くなった。卵、出したいの?」

 卵。その言葉を聞いただけで、シュンの体は白濁とともに吐き出すあの甘美なものを思い出して熱を上げる。ウツホシに身体を作り替えられて出せるようになった、海を富ませるための卵。

「んぅ、出したい。びゅーって、きもちくなりたい」

 シュンが浅ましい欲望を言葉にすると、ウツホシは笑みを深めた。小さな粒に尿道を擦られる快感は、すっかりシュンを魅了していた。

「ふふ、いいよ。もっといっぱい、出せるようにしてあげる」
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