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つがいになる日
前夜
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諸々の準備を終えて迎えた、ヒートの予定日の前夜。
ベッドの準備は二人で一緒にした。吉井の希望だった。いつもと変わらない羽鳥の家の寝室なのに、吉井はまるでこれから二人で旅行にでも行くように気持ちが昂るのを感じていた。
吉井はクローゼットから、綺麗に畳まれたシーツを持ってきた。
「保さん、シーツ、これにしよ」
「いいよ」
ベッドメイクをしていた羽鳥は快く受け取ると、防水シーツを敷いたマットレスの上に掛けた。
「へへ、これ、一番保さんの匂いがするやつ」
吉井が嬉しそうに笑うと、羽鳥は不思議そうに吉井を見た。
「俺の匂い?」
「そ。俺の好きな匂い」
「ふふ。じゃあ誉くん、とろとろになっちゃうね」
羽鳥の甘やかな低音が揶揄うように吉井の鼓膜を震わせる。それすら愛おしくて、吉井はその表情を蕩かした。抱きつきたいのを我慢して、吉井は羽鳥と一緒にマットレスに皺なくシーツを掛けていく。枕を並べ、几帳面に畳まれた薄手の毛布を置くとベッドの支度はおしまいだった。
「おいで、誉くん」
羽鳥に手招きされ、ベッドを回り込んで羽鳥のそばへ行くと抱きしめられ、そのまま準備したばかりのベッドに倒れ込んだ。
羽鳥の匂いに包まれ、吉井の頭の中は忽ちぼやけてしまう。
「明日、楽しみだね」
溜め息のように吉井が囁くと、羽鳥は優しく笑みを返した。
窓の外は弱い雨が降っていた。世界を白く霞ませ、優しく穏やかに降る雨は音もなく街を濡らしていた。天気予報では、二、三日はこんな天気らしかった。
ベッドの準備は二人で一緒にした。吉井の希望だった。いつもと変わらない羽鳥の家の寝室なのに、吉井はまるでこれから二人で旅行にでも行くように気持ちが昂るのを感じていた。
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「いいよ」
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「へへ、これ、一番保さんの匂いがするやつ」
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「俺の匂い?」
「そ。俺の好きな匂い」
「ふふ。じゃあ誉くん、とろとろになっちゃうね」
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「おいで、誉くん」
羽鳥に手招きされ、ベッドを回り込んで羽鳥のそばへ行くと抱きしめられ、そのまま準備したばかりのベッドに倒れ込んだ。
羽鳥の匂いに包まれ、吉井の頭の中は忽ちぼやけてしまう。
「明日、楽しみだね」
溜め息のように吉井が囁くと、羽鳥は優しく笑みを返した。
窓の外は弱い雨が降っていた。世界を白く霞ませ、優しく穏やかに降る雨は音もなく街を濡らしていた。天気予報では、二、三日はこんな天気らしかった。
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