ぜんぶのませて

はち

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きみのくちびるで

デザート

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 羽鳥のおすすめを一頻り頼んで腹の膨れたところで、羽鳥が小さく身体を震わせた。

「保さん、大丈夫?」

 心なしか顔が赤い。酒はそれほど飲んでいないので思い当たる原因は一つだけだった。

「ん、大丈夫。そろそろ、帰ろうか」
「うん」

 会計をして、店を出た。会計は羽鳥の奢りで、吉井は財布を出す隙すら与えられなかった。
 こんなことができてしまうんだから、モテないはずがないのに、羽鳥は自分といてくれる。
 Ωでなくても惹かれそうな羽鳥が、いままで一人でいたのがますます不思議に思えてくるが、理由はまだ聞けないでいた。何か言いづらいことがあるのかもしれない。そう思うと、無理に聞き出そうとは思わなかった。

「おいしかった、ありがとう、保さん。ごちそうさまでした」

 吉井は隣の羽鳥を見上げる。少し顔が赤いが、体調は大丈夫そうで安堵した。

「喜んでくれてよかった」

 笑みとともに羽鳥が言う。その柔らかな低音に、胸がざわつく。
 こんな聖人のような柔らかな笑みを剥がしたいと、吉井の内の獰猛な部分が騒ぎだす。羽鳥に出会ってから気付いた、自分でも知らなかった一面だった。
 吉井がそっと羽鳥の腕を掴んで、引き寄せると肩が触れ合う。

「保さん、はやく帰ろ。デザート、食べたい」

 耳元で吉井が羽鳥にだけ聞こえる声で低く囁くと、羽鳥はその意図を察して目を伏せた。

「そう、だね」

 心なしか嬉しそうな羽鳥の声に、吉井は頬を緩ませた。
 吉井を誘うように、ふわりと甘い匂いがする。
 吉井の中の眠れる雄を揺り起こすようで、腹は満たされたはずなのに、渇きに似た何か物足りない感覚が湧いてきた。



 帰宅して、二人はリビングのソファの上にもつれるように倒れ込む。
 床にジャケットを落とし、ネクタイを解き、ワイシャツのボタンを外して羽鳥をソファに押し付ける。

「ふ、びしゃびしゃだね」

 胸元の濡れたシャツの前をはだけると、ミルクで濡れて張り付いたインナーが露わになる。逞しい胸板を覆う薄い生地はじっとりと濡れて色を変えていた。
 吉井はその上から、控え目に主張する乳首を舐る。舐めれば舐めただけ溢れてくる白い蜜は羽鳥にもっとしてと求められているようで、吉井は夢中で吸い付いた。
 濡れて張り付いたインナーの生地越しに吉井の舌先が肉粒を丁寧に捏ね回すと、羽鳥が背をしならせ、小さく呻いて胸を突き出した。
 欲しがるように突き出された胸から、吉井は濡れたインナーをたくし上げる。張りのある逞しい胸筋が露わになり、白く濡れた乳首が空気に晒され小さく震えた。

「っ、ほまれ」

 行為中、羽鳥は名前で呼び捨てにするようになった。元々吉井が願ったことで、吉井はそれを聞くたびに羽鳥のものになったような甘い気分で胸が満たされた。

「たもつさん」

 吉井が尖らせた舌先で肉粒を弾くと、白い蜜が散った。
 散々胸の飾りを嬲られた羽鳥の表情はすっかり蕩け、頬を紅潮させて吉井を見つめる。
 その視線に応えるように、吉井は目を細めた。

「おいしい、保さん。デザート我慢してよかった」

 吉井は優しく吸って、すっかり尖った乳首を舌先で撫で回す。

「んう、よか、た」

 悩ましげに眉を寄せながら、羽鳥は微笑む。喜びを滲ませるその表情に、吉井の嗜虐心は容易く煽られる。羽鳥には吉井を煽っている自覚もないのだろう。ただ与えられる快感に素直に身体を震わせた。
 吉井はすっかり芯を持った肉粒を唇に挟んで舌先で押し潰す。赤みを増した肉粒はいじらしく白い蜜を溢れさせ、吉井の舌を濃厚な甘みで楽しませた。
 吉井のフェロモンに反応して、羽鳥の身体は白い蜜を止めどなく溢れさせ、ほったらかしにした方はすぐに白いリボンになるほど蜜を垂らしてしまう。
 吉井は震える肉粒を交互に舐めしゃぶって、白い蜜を啜る。その度に羽鳥は甘い声を上げて身体を震わせた。
 Ωの吉井が、αの羽鳥を翻弄できる数少ない瞬間だった。
 ソファに熱くなった身体を預け、呼吸を乱す羽鳥は愛おしかった。
 吉井は胎の奥がじゅくじゅくと湿るのを感じてため息を漏らす。羽鳥の白い蜜は、否応無しに吉井の理性を削いでΩとしての本能を駆り立てる。抗いがたい誘惑に、身体は素直に羽鳥を受け入れる準備を始めて、期待に熱を上げる。
 その一方で羽鳥は舐めて吸われて感度の上がった肉粒を執拗に愛でられ、身体を震わせ、艶のある嬌声を漏らす。その声がまた、吉井を煽った。

「あう、きもちい」

 羽鳥は胸を愛撫する吉井の頭を抱きしめて胸に押し付け、甘くふやけた声で続きをねだる。

「ん、ほまれ、もっと、吸って」

 甘い声の望み通り、吉井はきつく吸い上げる。甘い蜜が溢れ、羽鳥は噛み殺した喘ぎを零した。
 吉井が唇を離すと、赤く充血して震える小さな肉粒が顔を出した。
 初めての頃に比べれば、少しばかり大きくなった肉粒は、色も少し濃く赤くなったような気もする。
 反対側はほったらかされてとろとろと白いリボンを垂らしている。吉井は全部舐めとって、同じようにきつく吸い上げる。
 飲み込んだ白い蜜が、とろりと喉を滑り落ちていく。鼻に抜ける甘い匂いも、口に残る甘味も、何もかもが吉井の雄を、Ω性を、同時に刺激する。獰猛で淫らな本能が、削げ落ちかけた理性を揺さぶる。

「っふ、ぅ」

 羽鳥は吉井の頭に縋り付き、甘い吐息を漏らした。

「たもつ、さん」

 見上げる吉井を潤んだ目で見つめる羽鳥は、うっすらと唇を開けて荒い呼吸を繰り返している。

「ほまれ」

 物欲しげな羽鳥の声が、鼓膜を震わせる。吉井の太腿に当たるスラックス越しの羽鳥の熱に、吉井はそろりと手を伸ばした。
 布越しに触れた羽鳥の昂りの熱さに、吉井は後孔をきゅんと疼かせた。Ωの本能が、ほしいと喚く。最奥まで貫く熱を知ってしまった身体は、浅ましく胎をひくつかせて、思わず溢れたため息は熱く唇を撫でていく。
 吉井の性器もスラックスを押し上げるほど主張を始めていて、それには羽鳥も気がついたようだった。

「ほまれ、続き、する?」

 羽鳥の手が、誘うように吉井の昂りを撫でる。吉井を見つめる鳶色はすっかり欲情に濡れてちらちらと妖しくきらめいていた。
 輪郭を確かめるように手を動かされ、吉井は腰を震わせた。
 今更、しないなんて考えられなかった。

「ん、する」

 甘い蜜に本能を暴かれ、吉井は羽鳥に擦り寄る。吉井は軽い発情状態になって、もう主導権は羽鳥のものだった。

「お風呂、入ろうか」

 耳元に甘やかな声を吹き込まれ、次に行われることを脳裏に描いて吉井は身体を震わせた。身体は導かれるように熱を上げ、理性はぐずぐずに崩れ落ちていた。脳髄まで本能に染め上げられ、吉井は頷くしかできなかった。
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