ぜんぶのませて

はち

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いっぱいのませて

後片付け

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 起きてからは、羽鳥は惨状の広がる寝室の後始末をした。
 シーツはどろどろで、二重に仕込んであった防水シーツのお陰でなんとかマットレスが守られていた。毛布も色々なものがこびりついていて、洗濯機行きは免れない状態だった。
 それはシーツの上に寝そべる吉井もで、吐き出した体液やら羽鳥のミルクやらでベタベタになっていた。ぬるま湯で濡らしたタオルで拭いてやると、くすぐったいらしくくすくすと笑っていた。
 ベッドを整えた後、床に散らばった服をかき集めて洗濯機を回した。シーツや毛布と合わせて、結局二回回すことになった。
 吉井が起きられるようになったのはその日の夜だった。
 吉井の身体を洗い、ゆったりとバスタブに浸かった。
 吉井は羽鳥に後ろから抱き抱えられ、リラックスした様子でもたれかかっている。
 吉井は終始上機嫌だった。

「ね、保さん、俺のこと呼び捨てにして」
「っえ」

 いつもは柔らかな羽鳥の低音が、不意に上擦った。

「ヒートのとき、呼ばれてすごい気持ちよかったから。ダメ?」

 肩に頭を乗せて、吉井が羽鳥を見上げる。

「あれ、俺、無意識で」

 本当に記憶がなかった。起きてから、噛んでいないか慌てて吉井の項を確認したくらいだ。

「保さんも、トんでたんだ」
「うん、誉くんも?」
「ん、ずっと気持ちよくて、やばかった」

 吉井は少しだけ俯いて、吉井が小さく身動ぎする。思い出したのか、もぞりと腰を揺らす。

「ね、誉って呼んで」

 期待に満ちた瞳が真っ直ぐに見上げてくる。吉井は甘えるのが上手だ。羽鳥は観念して吉井の耳元に唇を寄せ、いつもの声色を思い出しながら吉井を呼んだ。

「誉」

 変に緊張していた。
 恐る恐る吉井の顔を覗き込む。

「ありがと、保さん。嬉しい」

 少しだけ頬を赤くして、吉井が柔らかく笑う。それを見たら、どうでもよくなった。

「ね、保さん、やっぱり卒業祝い欲しい」
「ふふ、いいよ。何がいい?」
「搾乳器」
「さ、搾乳器?」

 羽鳥は思わず聞き返した。吉井がそんなものを欲しがるなんて、思いもしなかった。

「やってるとき、全然吸えないから」
「ふふ、欲張りだね」
「だって、保さんの、いつもより濃くてえっちな味だったし」
「そうなの?」
「そうですよ」

 吉井が振り返り、ちゃぷ、と水面が波立った。

「保さんのミルク、全部飲みたいって言ったでしょ。全部飲ませて」
「ふふ、わかった」

 脳髄まで痺れるような吉井の言葉に、羽鳥は蕩ける笑みを返した。



 そんな二人が搾乳器を手に入れるのは、もう少し先の話。
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