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ぜんぶのませて
真夜中に
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気づけばとうに終電も終わった時刻で、吉井は帰宅を諦めた。どのみち着ていた服は羽鳥の胸を夢中で吸った時にミルクをたくさん垂らしていて、そのままではとても帰れそうになかった。羽鳥は洗濯するから泊まっていきなよと言うので、素直に甘えることにした。
「誉くん、ごめんね。大丈夫?」
風呂上がりの羽鳥は、吉井の髪を拭きながら顔を覗き込んだ。
結局、一ラウンドでは済まず、三ラウンドまでもつれた。吉井も羽鳥も精液やらミルクやらでベタベタになってしまったので二人でシャワーを浴び、服は洗濯機に放り込んだ。
「大丈夫です。なんか、すみません」
すっかり正気に戻った吉井は必死にミルクを吸ったのを思い出して、思わず顔が熱くなった。自分は理性的な人間だと思っていたのに、初対面の人間にそんなことをしてしまった。
しまいには羽鳥のフェロモンに当てられて身体を重ねる始末。吉井はαとのセックスは初めてだったし、セックスという行為自体も初めてだった。なし崩し的にしてしまったが、不思議と後悔はなかった。お陰で今こうやって発情状態も落ち着いている。
「もう落ち着いた?」
「はい。あ……羽鳥さんは?」
「ん、俺も、大丈夫」
「その、病院は行ったんですか?」
「うん、でも原因がわからなくて。こんなふうになったのも初めてだし」
また病院行かなきゃなとぼやく羽鳥を、吉井は真っ直ぐ見つめた。
「あの、羽鳥さん」
吉井の声に、羽鳥も吉井を見た。
吉井のまっすぐな視線を、無防備に受け止める羽鳥。その姿に、吉井の胸は甘く高鳴るのを止められない。
吉井は呼吸をひとつして、口を開いた。
「よかったら、また会えませんか」
本当は、近寄らない方がいいのだと思うが、自分の気持ちに嘘をつくのも嫌だった。
「また飲みたいんです、羽鳥さんのミルク。他の人に飲ませたくない。全部、俺に飲ませてくれませんか」
吉井は頭の中にある事を全部言った。嫌だと言われたら仕方ない。変態と罵られるかもしれない。でも、行為中の羽鳥には、そんな様子はなかった。もしかしたら、大丈夫かもしれない。そう思って、考えていた事を正直に吐き出した。
こんなに、誰かを独占したいと思うのは初めてだった。
羽鳥は驚いているようだった。
少しだけ目を見開いた後、ふわりと柔らかく笑った。
「ふふ、熱烈だな。これも何かの縁だし、いいよ。その、相性も良さそうだし、誉くんさえよかったら」
柔らかな声と笑みに、吉井は思わず頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「よろしくね、誉くん」
顔を上げると、羽鳥が笑って頭を撫でてくれた。
連絡先を交換した二人が付き合うようになるのは、もう少し先の話。
「誉くん、ごめんね。大丈夫?」
風呂上がりの羽鳥は、吉井の髪を拭きながら顔を覗き込んだ。
結局、一ラウンドでは済まず、三ラウンドまでもつれた。吉井も羽鳥も精液やらミルクやらでベタベタになってしまったので二人でシャワーを浴び、服は洗濯機に放り込んだ。
「大丈夫です。なんか、すみません」
すっかり正気に戻った吉井は必死にミルクを吸ったのを思い出して、思わず顔が熱くなった。自分は理性的な人間だと思っていたのに、初対面の人間にそんなことをしてしまった。
しまいには羽鳥のフェロモンに当てられて身体を重ねる始末。吉井はαとのセックスは初めてだったし、セックスという行為自体も初めてだった。なし崩し的にしてしまったが、不思議と後悔はなかった。お陰で今こうやって発情状態も落ち着いている。
「もう落ち着いた?」
「はい。あ……羽鳥さんは?」
「ん、俺も、大丈夫」
「その、病院は行ったんですか?」
「うん、でも原因がわからなくて。こんなふうになったのも初めてだし」
また病院行かなきゃなとぼやく羽鳥を、吉井は真っ直ぐ見つめた。
「あの、羽鳥さん」
吉井の声に、羽鳥も吉井を見た。
吉井のまっすぐな視線を、無防備に受け止める羽鳥。その姿に、吉井の胸は甘く高鳴るのを止められない。
吉井は呼吸をひとつして、口を開いた。
「よかったら、また会えませんか」
本当は、近寄らない方がいいのだと思うが、自分の気持ちに嘘をつくのも嫌だった。
「また飲みたいんです、羽鳥さんのミルク。他の人に飲ませたくない。全部、俺に飲ませてくれませんか」
吉井は頭の中にある事を全部言った。嫌だと言われたら仕方ない。変態と罵られるかもしれない。でも、行為中の羽鳥には、そんな様子はなかった。もしかしたら、大丈夫かもしれない。そう思って、考えていた事を正直に吐き出した。
こんなに、誰かを独占したいと思うのは初めてだった。
羽鳥は驚いているようだった。
少しだけ目を見開いた後、ふわりと柔らかく笑った。
「ふふ、熱烈だな。これも何かの縁だし、いいよ。その、相性も良さそうだし、誉くんさえよかったら」
柔らかな声と笑みに、吉井は思わず頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「よろしくね、誉くん」
顔を上げると、羽鳥が笑って頭を撫でてくれた。
連絡先を交換した二人が付き合うようになるのは、もう少し先の話。
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