ぜんぶのませて

はち

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αのミルクとΩの恋心

エイド

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 羽鳥の家に着くと、吉井は冷蔵庫からミネラルウォーターを用意して、ソファに座らせた羽鳥のジャケットを脱がせた。

「うわ……、ちょ、これは……」

 吉井は言葉を失う。
 インナーはおろかワイシャツまで、身体の前側の部分が透けて張り付くほどに濡れていた。甘い匂いもいつもより強く、それは吉井により濃い飢餓感を呼び起こす。抗い難い誘惑に、眩暈がした。

「うう」

 羽鳥は俯いて鼻を啜る。眉を下げ、目も潤んでいる。羽鳥の意思に反してこうなっているので責めるつもりもないが、本人は相当気にしているようだった。

「保さん、大丈夫? とりあえず、お水飲んで」

 これだけミルクを出していると消耗もなかなかのものだろう。母乳は血液由来のものだと聞いたことがあった。だからせめて水分だけでもと思い、冷蔵庫から出したミネラルウォーターのペットボトルを開けて渡した。

「ありがとう」

 羽鳥はそれを受け取ると、こくんと喉を鳴らして水を飲んだ。
 その間に、吉井は脱がせたスーツをリビングの端のコートハンガーに掛ける。羽鳥のスーツは裏地までじっとりとミルクで濡れていた。クリーニング行きかなと思いながらソファに戻ってきて羽鳥の隣に座ると、伸びてきた腕が吉井を捕まえた。
 そっと腕を掴まれ、引き寄せられて羽鳥の膝の上に座らされていた。
 甘い匂いが濃くなって、吉井の心臓が跳ねる。
 濡れたまつ毛が見える距離で、潤んだ鳶色の瞳が吉井を見つめていた。

「むね、痛い。ほまれくん、吸って」

 羽鳥の甘えるような声は吉井の胸をくすぐるように響いた。
 ヒートを迎えたΩのフェロモンに当てられたところに吉井が来たのだから、こうなっても仕方ない。こうなると分かっていても自分を呼んでくれた羽鳥が愛おしかった。
 羽鳥からの極上の誘惑に、吉井が逆らえるはずもない。

「ん、いいよ」

 吉井は羽鳥のネクタイを解き、シャツとインナーを脱がせていく。
 羽鳥はされるがまま、うっとりと吉井に身を委ねている。
 ミルクを吸い込んですっかり重たくなったシャツとインナーを床に放ると、水分を吸った生地が落ちる重たい音がした。
 吉井は羽鳥をソファに押し付けると、しっかりと筋肉のついた逞しい胸板に唇を寄せた。
 インナーとシャツにそれなりの量を吸われているのに未だ流れ出てくる白い蜜は、そう簡単には止まりそうになかった。
 羽鳥の慎ましい乳首は赤く色付いて膨らみ、震えながら白い蜜をとろとろと吐き出していた。

「辛かったね、保さん」

 吉井は迷わず吸い付く。
 片方は手で揉み、もう片方は舌先で乳首を優しく捏ね、噴き上がる白い蜜を啜った。羽鳥の胸筋は脱力しているせいか程良い弾力がありながらも柔らかい。吉井はその弾力を楽しむように羽鳥胸を揉んだ。一方で溢れ続ける白い蜜を舌で掬い、零さないように飲んでいく。
 甘くて濃い匂いとそれに劣らない濃い甘さで、口にすると飢餓感が薄まっていった。

「あう、ほまれくん、きもちい……っ」

 羽鳥の甘く溶けた声が降ってくる。
 視線を持ち上げると、欲情をたっぷりと滲ませ蕩けた鳶色の瞳が、吉井を映す。
 興奮に染まった浅い呼吸が聞こえる。

「ふ、よかった」

 汗の滲んだ胸板に頬を寄せ、手を濡らす白い蜜を舐め取る。

「ん、たもつさん、いっぱい出るね」

 舌先で肉粒を撫でると、蜜が吹き出し、羽鳥は甘い声を漏らす。
 吉井は目を細め、両胸を交互に吸い上げ、溢れる白い蜜を丁寧に啜る。
 啜って味わって飲み込む度に、吉井は自分が満たされていくのがわかった。それなのに腹の底では貪欲なΩが喉を鳴らしている。

「ん、っ、ほまれくん」
「気持ちいいね、たもつさん」
「止まんない、ほまれくん、のんで、ぜんぶ、のんで」

 甘い声が譫言のように繰り返し、羽鳥の手が髪を梳いて、頭を抱えるように抱く。

「っふ、いいよ、ぜんぶ、飲んであげる」

 甘え縋る羽鳥に求められるまま、吉井はすっかり熟れた肉粒にやんわりと歯を立て、舌先で撫で回してきつく吸い上げる。

「あ! んう」

 じゅ、と音を立てて吸うと、刺激が強かったのか、羽鳥は吉井の頭にしがみつく。

「あう、きもちい、ほまれく」

 舌足らずな溶けた声を上げ、羽鳥は吉井の頭を抱く。年上の、しかもαの羽鳥が、こうやってΩで年下の自分に縋って甘えてくれるのが嬉しい。

「ほら、こっちも」
「ふあ」

 濡れた音を立てて反対の肉粒も吸うと温かな蜜が溢れ、吉井はそれを喉を鳴らして飲み込んだ。

「は、ぁ、ほまれくん」

 羽鳥の腕が緩む。
 吉井は名残惜しげにゆっくりと口を離した。
 震える小さな膨らみから薄い唇へ、唾液とミルクが混ざったものが細い糸を引いてぷつりと切れた。

「いっぱい出せたね、たもつさん」

 赤く熟れた肉粒が張りのある胸板の上で震えている。波が落ち着いたのか、白い蜜は、わずかに滲むくらいになっていた。
 二人分の浅い呼吸がリビングに密やかに響く。
 吉井が見上げると羽鳥の上気した頬が見えた。

「ほまれくん、こっちも限界かも」

 羽鳥の手が、ミルクでベタベタになった吉井の手を取り、不恰好に押し上げられたスラックスの前に導いた。もうスーツが汚れるとか、そんなことを気にかける理性は残っていなかった。

「あ……、ガチガチになってる」

 羽鳥のスラックスの前は張り詰め、窮屈そうに布を押し上げていた。吉井は輪郭を確かめるように手のひらで撫でる。布越しにもそこが血を集めて熱く硬くなっているのがわかって、吉井は息を呑んだ。
 羽鳥の匂いが濃くなる。
 羽鳥が興奮している。その目が、猛禽のようにぎらりと光って、吉井の心臓が震えた。

「ほまれくん、いい匂いする」

 欲情を隠しもしない濡れた瞳に、甘く低い声。柔らかく名前を呼ばれ、吉井の体温が上がる。腹の奥が甘く疼いて、吉井の後孔はじわりと愛液を滲ませていた。

「続き、ベッドでしようか」

 羽鳥の声に、吉井の唇が震える。手も、身体も、これから羽鳥に与えられる快感を期待して震えた。
 吉井は黙ったまま、こくりと頷くだけだった。
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