ミロクの山

はち

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ヤツハ編

シラハの花嫁

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「ヤツハ、胎の支度をするぞ」

 シラハの手のひらが腹をさする。Tシャツの裾から入ってきた手はヤツハよりも少し冷たい。
 下着ごとハーフパンツがずり下ろされ、下肢がひやりとした空気に晒される。
 窄まりがひくつく。硬く閉ざされたそこに、何かが押し当てられた。シラハから伸びる肉色の触手だ。
 窄まりに圧を感じるくらい押し付けられ、とくんとくんと脈打つ触手からは、温かなものが注がれている。
 ゆっくりと腹を満たされていく感覚に、ヤツハは眩暈を感じた。身体を作り替えられているような、不思議な感覚だった。腹の中の熱なんて、今まで意識したこともなかった。
 うっすらと腹が張ったような感覚に、ヤツハは苦しげに浅い息を吐く。

「もう、いいか」

 ため息のようなシラハの声がした。ヤツハの脱げかけの服は取り払われてしまう。
 とぐろを巻く、長いシラハの身体の上に座らされるのは不思議な感覚だった。
 シラハもまた、纏う着物を一枚ずつ落としていく。
 腹の下、白い肌に鱗が見え始めた辺りの下に、横に裂け目が見え、そこから二股の性器が上下に並び立つ。楠の下で見た、シラハの性器より大きいものが、二本。
 ヤツハは喉を鳴らした。
 これから、それを受け入れるのか。
 そう思うと、ずくずくと腹が疼いた。

「ヤツハ」

 シラハの指先が、窺うように頬を撫でる。

「しらは、大丈夫、だよ」

 ヤツハはシラハの指先を握る。

「こわくない、から」

 ヤツハの声に、シラハは嬉しそうに端正な顔を綻ばせた。



「あ、う」

 背面座位のような形で脚を開いて抱えられたヤツハは、上側の猛りを後孔に受け入れた。下側はすっかり芯を持ったヤツハの性器に添えられていた。

 こんなに大きいものを受け入れられるとは思わなかった。あの蜜のようなもののおかげだろうか。ヤツハの後孔は、ろくに慣らしもせずシラハの怒張を飲み込んだ。裂けることもなく、痛みもない。はらわたを埋められるような苦しさはあるが、それもすでに後からやってきた快感に飲まれつつあった。

「ヤツハ、ヤツハ」

 首筋に、うなじに、シラハの裂けた舌が甘えるように這う。くすぐるように薄い肌を撫でられ、ヤツハは身体を震わせた。
 ゆったりとシラハが身体を波うたせる。
 揺すられるたびに、シラハの猛りが腹の中でしゃくりあげるのがわかる。
 ヤツハの昂りはシラハの性器の凹凸に擦れ、狂おしい快感を生む。

「しらは、しらは、きもちいい」

 頭の芯まで快感に染められて、溶けてしまいそうだ。腹の中に感じる脈動にシラハの劣情を感じて、ヤツハの鼓動が騒ぐ。

「あ、う」

 中を擦られ、ヤツハは甘えるような声を上げる。
 熟れきった中は悦び、シラハを締め上げている。
 自分の身体では無くなったみたいで怖いのに、それでも生まれる快感に抗うことはできず、ヤツハは揺すられるまま、甘い声で啼いた。
 浅瀬から奥の行き当たりまで、熱い質量に埋められている。それでねだるように奥の無垢な襞まで叩かれて、ヤツハは身体を震わせた。

「ヤツハ、入らせて」

 無垢な襞を甘えるように捏ね回される。
 シラハ声に応えるように襞は綻び始め、逞しいシラハの猛りに吸い付く。

「ヤツハ」

 ねだるような甘く低い声が耳殻をくすぐっていく。身体が緩み、奥の襞をこじ開けられた。
 背がしなる。
 腹が熱く濡れ、臍の下がうっすらと盛り上がる。そこまで、シラハのものが入っている。
 柔い肉壁を捏ねる、熱い怒張。絡みつく粘膜を擦る、弾力のある凹凸。
 腹の中全部が気持ちいい。擦られるたびに生まれる快感は濃厚で、脳髄まで溶かすようだった。
 柔い腹の奥を突き破られそうだ。

 最奥で熱が爆ぜた。どぷ、とくぐもった音が聞こえそうなくらい、濃厚な奔流が柔い腹の奥を打ち据える。それは何度も放たれ、ヤツハの中を満たし、熱く染めていく。

「っは、あ」

 ヤツハの胎は悦びに震え、深々と埋まったシラハの怒張をきつく締め上げる。中で脈打つ熱を感じながら、ヤツハはシラハに身を委ね、意識を手放した。

「愛している。ヤツハ」

 低く甘く吹き込まれるシラハの声が、聞こえた気がした。



 秋の足跡が山里に近付く頃、一人の青年が山で姿を消した。
 いつも通りに箒を持って、山へと向かった彼が帰ってくることはなかった。
 白羽神社の境内には、彼の持って行った箒だけが残されていた。
 姿を消す直前まで、彼に変わった様子はなかった。神社の掃除を終えて帰ってくる彼は、いつも楽しげな笑みを浮かべていた。

 行方不明になったヤツハは山に呼ばれたのだと、シラハさまに迎えられたのだと言われた。
 シラハさまはミロクさまの眷族。白い大きな蛇で、ときどき人を迎える代わりに、山を豊かにする神様だ。
 誰が迎えられるのかは、誰も知らない。
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