ミロクの山

はち

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悠真編

花嫁の身体

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「皆、門から花嫁を迎え、腹に精を注ぐ。そうやって子をなす。私の父もそうだった。母を迎え、子をなした。それが私だ」

 ミロクの口から穏やかな声で語られたのは、ミロクたち神の営みのようだった。

「その、花嫁の名は」

 その花嫁の名が気になった。近年の遭難者なら、名前がわかるからだ。

「ソウジ」

 その名を聞いて思い当たるのは一人だけだった。
 槙野宗慈、五年前、ミロク山で行方不明になった男と同じ名だ。偶然とは思えなかった。
 だが、五年では計算が合わない。彼はどう見ても二十は越えた年齢のように見える。
 困惑を色濃く浮かべる悠真の内心を見透かすように、ミロクは微笑んだ。

「私は、産まれて五年ほどになる」

 悠真の頭に浮かんだ疑念を見透かすかのような言葉に、悠真の背を冷たいものが這い降りた。

「ご、ねん……」

 本当に、槙野宗慈が花嫁となり、産んだのだろうか。もしそうなら自分も、同じように子を産むことになるのだろうか。
 そんな怯えとも戸惑いともつかない感情が悠真の胸を埋める。
 心臓はずっと鼓動をうるさく響かせていた。

「若輩者だが、不満か?」

 ミロクの目が、笑むようにそっと細められた。
 甘い花の香りがする。
 梔子の花のような甘く優しい香りだった。
 その匂いを吸い込むと、どういうわけか身体が熱を帯び始めた。
 息をするだけで、腹の底が熱を持って疼く。初めての感覚だった。
 まだ食事はたくさん残っているのに。
 身体が熱い。
 服の下で、性器が熱く硬くなっているのがわかる。触ってもいないのに、悠真にはどうしてこうなっているのかわからなかった。
 この、花の匂いのせいだろうか。
 唇から漏れる吐息は火傷しそうな熱さだった。

「どうした?」
「っは、身体、変」
「ユウマ」

 ミロクが隣に座る。
 目上げた先、美しい金の瞳が真っ直ぐに見下ろしている。
 縋るように見上げると、ミロクが目を細めた。

「大丈夫か、ユウマ」
「ん」

 ミロクの手が、頬を撫でる。上気した頬に触れるひんやりした手のひらが心地好い。

「熱いな。のぼせてしまったか」

 ちがう。
 そう言いたいのに、声が出ない。
 悠真が首を横に振ると。

「どうしたらいいか教えてくれるか、ユウマ。お前を楽にしてやりたい」
「あ……」

 それを言ってしまっていいのか、悠真は考える。甘い香りに鈍った頭で、必死に考える。

「さわ、って」

 相手は、おそらく神様だ。そんなことをしていい相手なのかわからない。そんな迷いは、茹だった頭では無いも同然だった。
 悠真はミロクの手を取って、昂る股座に押し当てた。

「さわって、ミロクさま」

 言ってしまった。漏れ出た声は甘く蕩けて、自分の発したものだとは思えなかった。胸の奥も頭の芯も甘く蕩けて、止めることなどできなかった。

「いいよ、ユウマ」

 悠真の身体は軽々とミロクの膝の上に抱き上げられ、後ろから抱き込まれた。

「っは、あ」

 下履きをずり下ろしたミロクの手は、悠真の性器を握って擦る。芯の入った花芯はすっかり先走りで濡れそぼっていた。

「お前のここは愛らしいな、ユウマ」

 そんなふうに言われて恥ずかしいのに、昂った身体にはそれすら興奮材料になっていた。
 ミロクの白い手が反り返る性器を擦る。
 気持ちいい。
 視界がぼやける。口はだらしなく開き、唇の端からは唾液が垂れ落ちた。

「っあ、いく、みろくさま」

 悠真は腰を揺らし、ミロクの手で果てた。吐精は一度では止まらず、出しても出しても、白濁が噴き出た。ミロクの手の中で、悠真の昂りは芯を失うことなく、脈打つ。

「っ、あ、かえらな、きゃ」

 譫言のように悠真が漏らす。

「ふふ、帰るのなら、門まで送ろう」

 そう言いながらも、ミロクは手を止めてはくれない。

「お前が望むなら、何度でもあの門を開こう。お前だけに、ね」

 ミロクは帰してくれようとしている。なのに。
 ミロクからする甘い花の香りは、悠真の思考を優しく溶かしていく。
 ずっと腹が熱い。帰らなきゃいけない。レポートもある。なのに。

「みろくさまぁ」

 声まで甘く蕩け、身体はミロクを欲しがってやまない。

「ふあぁ、いく、いく」

 堪らず、悠真はミロクの手に自らの手を重ねる。
 性器を擦って慰めても治らない。
 身体がすっかりおかしくなってしまったような気がする。
 ミロクに触れられたい。
 奥深くまで、ミロクが欲しい。

「もっと、ほしい。ミロクさま」

 唇が震える。

「奥まで、ミロクさまがほしい」

 そこの言葉を紡いだのが自らの唇だと、悠真は言ってから気がついた。
 ミロクは、甘やかに微笑み、悠真の頬を優しく撫でた。
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