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宗慈編
山を富ませる子
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「帰りたくなったら、すぐに言いなさい」
もう帰る場所がどこなのか思い出せない宗慈に、ミロクは優しく言う。
帰る場所はあったような気がするが、もう、どうでも良くなった。
自分ががどうしてここへ来たのかも、わからなくて構わなかった。
「宗慈」
ただ、堪らなく目の前の美しい存在が欲しかった。
もっと名前を呼んでほしい。
たくさん注いでほしい。
この胎に。
胸に生まれてくるのは、そんな思いばかりだった。
それから、宗慈の身体は丁寧に清められ、愛でられた。
柔らかな布団に横たえられ、一糸纏わぬ引き締まった身体にミロクの唇が余すところなく触れ、甘い声が吹き込まれる。
何度も美しい声が宗慈を呼んだ。男の声だというのに甘く宗慈の鼓膜を震わせ、甘美な快感を呼び起こす。宗慈はすっかりその声の虜だった。
「ミロクさま、ミロクさま」
宗慈が縋るようにミロクを呼ぶと、ミロクは嬉しそうに微笑みを返した。金色の目を細め、美しい桜のような色の唇を笑みの形にして。
それだけで宗慈の胸は甘く震えた。
こんな感覚は初めてだった。
名を呼ばれるだけで体の芯まで蕩けるような快感の漣が起きる。そんなものに耐性の無い宗慈は、容易く飲み込まれた。
ミロクから与えられる愛撫は優しく丁寧で、慈しむような素振りさえ見える。
宗慈の身体は蕩け、胎の奥は甘く疼いた。
ミロクの唇が、臍の上に触れた。
「ふふ、宗慈は私の子を産んでくれるのかい?」
ミロクの甘やかな声に、宗慈は性急に答えを返した。
「っ、はい。う、産みたい、です」
出まかせではない、心から出た素直な言葉だった。うっすらと感じていたミロクの子を産み落とすことに対する恐れも、今となっては見る影もない。
「かわいいね、宗慈。嬉しいよ。でも、お前の胎はまだ人のものだから、慣らしてやらないと身体が耐えられないからね」
宗慈の引き締まった腹を、ミロクが撫でる。白い指先が、くすぐるように撫でていく。
「あ……」
「焦らなくていいよ、宗慈。ゆっくり慣らしていこう」
宥めるような声に、宗慈の表情からは不安が消える。
「何度でもお前を抱いて、よくしてあげる。たくさん私の精を注いで、お前の中を私でいっぱいにして、ね」
ミロクはうっとりと宗慈を見下ろしながら、その美しい手を宗慈の身体に這わせた。
「たくさん良くなって、たくさん産んでおくれ、宗慈」
ミロクの穏やかな言葉が染み込んでくる。
愛おしい。
この美しい存在が、愛おしい。
この美しいミロクのものになりたい。
ただそればかりが宗慈の中に残っていた。
それから五度、宗慈はミロクの子を産んだ。山を豊かにするための、黒い蛇のような子だ。
一度に五匹程度だった子の数は回を重ねるごとに増え、五度目には十匹産まれるようになった。
出産を重ねるごとに、快感は強くなっていた。ミロクから漂う白檀の香りも濃くなり、触れられて感じる快感も、中を擦られて生まれる快感も、桁違いに強くなった。肌も粘膜も、ミロクに触れられる場所がどうしようもなく気持ちがよくて、宗慈は身も世も無く喘いだ。
絶え間なく与えられる快感に、躊躇いなど、すぐに消し飛んだ。
そして六度目。
たっぷりと粘液で濡らされ、拓かれた胎に、触手から卵が送り込まれる。数が多いのは宗慈にもそれとなくわかった。
腹が、今までよりも大きく膨らんでいる。
「あ、う」
幾つもの卵を抱え込み膨らんだ腹。大きく拡げられた脚の間、宗慈の性器は硬く反り返り、はしたなく涎を垂らす。すっかり受け入れることを覚えた後孔には逞しいミロクの雄を深々と咥え込み、陥落を許した奥の小部屋へと熱いものを注がれる。
ミロクの力強い脈動は、胎のずっと奥まで夥しい量の精を送り込んだ。何度もしゃくりあげながら、熱い迸りが柔い肉壁を打ち、より奥へと流れ、胎に満ちていく。それが馴染むと程なくして胎動が始まり、軟い殻を破って、また、あれが生まれてくる。
張った腹の表面を歪に盛り上がらせ、その身を捩りながら腹から外へと出てくる。
すっかり慣れた宗慈の胎からは、十五の子が産まれた。
痛みのない、嵐のような快感だけの出産。
宗慈の身体はすっかりその虜だった。
最後の一匹を産み落とし、宗慈は意識を飛ばした。その身体は体液に塗れ、余韻に震える。
ミロクに与えられる快感は宗慈を芯まで蕩かした。魂まで、その甘い毒が染み込んでいくようだった。
もう帰る場所がどこなのか思い出せない宗慈に、ミロクは優しく言う。
帰る場所はあったような気がするが、もう、どうでも良くなった。
自分ががどうしてここへ来たのかも、わからなくて構わなかった。
「宗慈」
ただ、堪らなく目の前の美しい存在が欲しかった。
もっと名前を呼んでほしい。
たくさん注いでほしい。
この胎に。
胸に生まれてくるのは、そんな思いばかりだった。
それから、宗慈の身体は丁寧に清められ、愛でられた。
柔らかな布団に横たえられ、一糸纏わぬ引き締まった身体にミロクの唇が余すところなく触れ、甘い声が吹き込まれる。
何度も美しい声が宗慈を呼んだ。男の声だというのに甘く宗慈の鼓膜を震わせ、甘美な快感を呼び起こす。宗慈はすっかりその声の虜だった。
「ミロクさま、ミロクさま」
宗慈が縋るようにミロクを呼ぶと、ミロクは嬉しそうに微笑みを返した。金色の目を細め、美しい桜のような色の唇を笑みの形にして。
それだけで宗慈の胸は甘く震えた。
こんな感覚は初めてだった。
名を呼ばれるだけで体の芯まで蕩けるような快感の漣が起きる。そんなものに耐性の無い宗慈は、容易く飲み込まれた。
ミロクから与えられる愛撫は優しく丁寧で、慈しむような素振りさえ見える。
宗慈の身体は蕩け、胎の奥は甘く疼いた。
ミロクの唇が、臍の上に触れた。
「ふふ、宗慈は私の子を産んでくれるのかい?」
ミロクの甘やかな声に、宗慈は性急に答えを返した。
「っ、はい。う、産みたい、です」
出まかせではない、心から出た素直な言葉だった。うっすらと感じていたミロクの子を産み落とすことに対する恐れも、今となっては見る影もない。
「かわいいね、宗慈。嬉しいよ。でも、お前の胎はまだ人のものだから、慣らしてやらないと身体が耐えられないからね」
宗慈の引き締まった腹を、ミロクが撫でる。白い指先が、くすぐるように撫でていく。
「あ……」
「焦らなくていいよ、宗慈。ゆっくり慣らしていこう」
宥めるような声に、宗慈の表情からは不安が消える。
「何度でもお前を抱いて、よくしてあげる。たくさん私の精を注いで、お前の中を私でいっぱいにして、ね」
ミロクはうっとりと宗慈を見下ろしながら、その美しい手を宗慈の身体に這わせた。
「たくさん良くなって、たくさん産んでおくれ、宗慈」
ミロクの穏やかな言葉が染み込んでくる。
愛おしい。
この美しい存在が、愛おしい。
この美しいミロクのものになりたい。
ただそればかりが宗慈の中に残っていた。
それから五度、宗慈はミロクの子を産んだ。山を豊かにするための、黒い蛇のような子だ。
一度に五匹程度だった子の数は回を重ねるごとに増え、五度目には十匹産まれるようになった。
出産を重ねるごとに、快感は強くなっていた。ミロクから漂う白檀の香りも濃くなり、触れられて感じる快感も、中を擦られて生まれる快感も、桁違いに強くなった。肌も粘膜も、ミロクに触れられる場所がどうしようもなく気持ちがよくて、宗慈は身も世も無く喘いだ。
絶え間なく与えられる快感に、躊躇いなど、すぐに消し飛んだ。
そして六度目。
たっぷりと粘液で濡らされ、拓かれた胎に、触手から卵が送り込まれる。数が多いのは宗慈にもそれとなくわかった。
腹が、今までよりも大きく膨らんでいる。
「あ、う」
幾つもの卵を抱え込み膨らんだ腹。大きく拡げられた脚の間、宗慈の性器は硬く反り返り、はしたなく涎を垂らす。すっかり受け入れることを覚えた後孔には逞しいミロクの雄を深々と咥え込み、陥落を許した奥の小部屋へと熱いものを注がれる。
ミロクの力強い脈動は、胎のずっと奥まで夥しい量の精を送り込んだ。何度もしゃくりあげながら、熱い迸りが柔い肉壁を打ち、より奥へと流れ、胎に満ちていく。それが馴染むと程なくして胎動が始まり、軟い殻を破って、また、あれが生まれてくる。
張った腹の表面を歪に盛り上がらせ、その身を捩りながら腹から外へと出てくる。
すっかり慣れた宗慈の胎からは、十五の子が産まれた。
痛みのない、嵐のような快感だけの出産。
宗慈の身体はすっかりその虜だった。
最後の一匹を産み落とし、宗慈は意識を飛ばした。その身体は体液に塗れ、余韻に震える。
ミロクに与えられる快感は宗慈を芯まで蕩かした。魂まで、その甘い毒が染み込んでいくようだった。
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