ミロクの山

はち

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宗慈編

山神の褥

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 薄暗い部屋だった。部屋の中央に一組だけ敷かれた布団は、昨日宗慈が寝たものよりもふっくらとしているように見える。
 ミロクに手を引かれ、敷いてあった布団に横たえられる。宗慈に覆い被さるようにしてミロクが宗慈を覗き込み、その名を呼ぶ。

「宗慈」

 美しい低音が鼓膜を震わせる。見上げたミロクの顔は慈しむような、穏やかな表情をしている。

「気持ちいいことしかしないよ。だから、気持ちいいときはちゃんと教えておくれ。お前が受けた快楽は、子の糧になる。我慢してはいけないよ」

 未知の領域に踏み込もうとしているのに、恐怖心は不思議とない。
 心臓はうるさく喚いているのに、心の中は驚くほど静かだった。

「はじめていいかい?」
「はい」

 宗慈の返事に、ミロクは微笑んだ。甘く柔らかな笑みに、宗慈は張り詰めた気持ちが解けていくのを感じた。

「怖かったり、痛かったりしたら、言いなさい」

 その声に頷くと、白い指に頬を撫でられる。

「力を抜いて、私に委ねて」

 ミロクの唇が、固く引き結んだ宗慈の唇を柔らかく食む。
 触れる唇は溶けそうな柔らかさで、腰が震えた。

「宗慈、口を開けて」
「あ……」
「いい子だね」

 唇が深く重なり、濡れた熱い舌が入ってくる。
 舌をゆったりと絡められ、歯列を、口蓋をなぞられ、背筋が震えた。
 気持ちがいい。
 ミロクの甘く柔らかな匂いが意識をぼやかす。
 最後にこうしたのはいつだったか、相手は誰だったか、もう思い出せない。
 口の中で温かな唾液が混ざり合い、体温が混ざる。ミロクの唾液は甘い。
 飢えに似た感覚に、口に溜まったそれを思わず飲み込む。

「っう、あつ、い……?」

 身体が、奥の方からじわじわと熱くなってくる。

「宗慈、舌を出して」

 言われまま、舌を突き出す。

「そう、上手だよ、宗慈」

 ちゅ、と音を立てて舌を吸われ、またとろりとミロクの唾液が流れ込んでくる。甘い。特別甘いものが好きなわけではなかったが、ずっと飲んでいたいと思う。
 喉を鳴らして、宗慈は与えられるままにミロクの唾液を飲んだ。

「たくさんお飲み、身体が楽になるよ」

 優しい声に促されるまま、宗慈は口に溜まった唾液を喉を鳴らして飲み込む。

「あ、ふ」

 ミロクの唇が離れ、宗慈は小さく喘いだ。

「みろくさま、はら、が」

 腹の奥が熱い。甘く疼く。
 自分の身体なのに、自分のものではなくなったような未知の快感に、宗慈は身体を震わせた。
 こんなふうになるのは初めてだった。

「ふ、良くなってきたかい、宗慈」

 頬を撫でられるだけで肩が跳ねた。

「腹が、熱い、です」
「どれ、見せてごらん」

 ミロクの手が優しく、無遠慮に浴衣の合わせを開く。
 引き締まった腹筋はひくひくと震え、下生えの下の性器はすっかり勃ち上がり、先端から透明な雫をいく筋も滴らせている。

「あぁ、気持ちいいね、宗慈」
「あ……」

 まだ唇を合わせただけだというのに、宗慈の身体ははしたなく涎を垂らしていた。こんなにしっかり反応しているのを見て、嘘はつけない。

「気持ちいい、です」
「いい子だね、宗慈」

 ミロクに笑みとともにあやされる。
 見られている羞恥はあるが、それよりも腹の底から湧き上がってくる甘い熱が意識を支配しつつあった。こんな感覚は初めてだった。

「宗慈、ここに」

 ミロクが白い指に唾液を絡ませて、性器の更に下、窄まりに指を当てた。
 ぬるりと窄まりを撫でられ、宗慈は意思に関係なくひくつかせてしまう。

「私の卵を入れるからね」

 卵、と言われて身体が甘く疼いた。
 だから清めたのか、と合点がいく。
 しかし、どうやって入れられるのか見当がつかない。浴室で見たミロクの身体に、そんなところは見当たらなかった。
 ミロクが着物の腰帯を解く。
 うっすらと筋肉の浮く腹に小さく窪んだ臍の下、白銀の下生えの下には、人のそれとは違う形の肉色の性器が見えた。
 宗慈は息を呑んだ。
 蛇の交接器のようなそれは太く、逞しい幹には幾つもの凹凸が見える。亀頭のあたりには尖った棘のようなものも見えた。しゃくり上げながら先端からは透明な液を垂らしている。
 先ほどの浴室では気が付かなかった。
 グロテスクさすらある異形の性器を見た途端、宗慈の腹の奥が疼いた。
 そんな宗慈の胸中を見透かすようにミロクが微笑む。

「ふふ、これは後でね」

 ミロクの白い美しい指が見せつけるように逞しい昂りを撫で上げる。
 宗慈は目が離せない。人のものではないミロクのそれに、視線が縫い付けられてしまったかのようだった。胸が勝手に高鳴り、喉が渇く。

 どうしてこうなっているのかわからない。ただ、身体は恐怖や嫌悪を感じる前に期待を抱いていた。
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