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牙を剥く悪意
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午後になると、アウファトのもとに王宮から謁見許可の書類が届いた。明日の午後だ。いよいよ、王にジェジーニアを会わせることができる。
心地好い緊張感がアウファトを包む。今日は早く帰って身支度をしなくてはならない。ジェジーニアもだ。
書類を受け取った後、アウファトの研究室には忙しなく来客が来るようになった。どうやらジェジーニアの存在をどこかから聞きつけたようだった。
「だめだ。帰ってくれ」
アウファトは十人目の客を追い返したところだった。
髪の毛をひと房欲しい、血を調べさせて欲しい、爪のかけらが欲しい。案の定、科学科の研究員たちがこぞってやってきた。
そして、十一度目の扉を叩く音が響いた。
さすがにアウファトも辟易していた。昼を過ぎてから、戸口での対応しかしていない。シエナは使いに出してしまったので、アウファトが対応せざるを得なかった。
「いい加減にしてくれ」
扉を開けるなり、アウファトは客人を鋭く睨み、唸るような声を上げた。
「おっと、ずいぶんとご機嫌斜めだな」
「ヴェルネスト」
そこにいたのは科学科主席研究員、ヴェルネストだった。流れるような美しい金髪に、涼しげな深い青の瞳、背はアウファトと同じくらいの、人間の男だ。
リガトラ王国、特にメイエヴァードではでは学問が盛んだ。アウファトの所属する史学科、ヴェルネストの所属する科学科、他にも文学科、数学科が存在する。
ヴェルネストは科学科の首席研究員だ。
「うちの研究員たちに失礼があったようだな。すまない」
アウファトの様子を見て、ヴェルネストは苦笑いして頭を下げた。
ヴェルネストがしおらしいことを言うので、アウファトは怒りのやり場をなくしてため息をひとつついた。
「言葉を交わすくらいなら構わないか」
低く落ち着いた声で、ヴェルネストは伺いを立てる。ジェジーニアが嫌がることでなければいいだろう。怪しいそぶりを見せたらつまみ出せばいい。
「わかった、手短にしてくれ」
「ふふ、感謝するよ、アウファト」
アウファトはヴェルネストを部屋に招き入れた。
ジェジーニアは応接席でうとうとしていた。昼食の後だ、無理もない。
「君が、竜王の子か。はじめまして、わたしはヴェルネスト」
ヴェルネストはジェジーニアのそばに膝をつき、視線を合わせた。ジェジーニアは目を擦りながらヴェルネストを見た。
「俺はジェジーニア」
「ジェジーニアか。素敵な名前だ」
ジェジーニアは不思議そうにヴェルネストを見つめる。それほど人見知りはしないのだろうか。
「君は、黒き竜王の子?」
「ン、そう。ヴェルネストは、あうの、おとうと?」
「私はアウファトの友だちだ」
アウファトは釈然としない気持ちでヴェルネストを見た。できる男だが、得体の知れないところがある。
アウファトは黙って二人を見守った。
「あうのともだち」
「そう。綺麗な髪だね」
「ン」
「手を見せてくれるかい?」
「いいよ」
「黒い爪か」
ヴェルネストの手に、ジェジーニアの手のひらが乗っている。
ジェジーニアは不思議そうに瞬きをした。
「ありがとう、ジェジーニア。飴は好きかい?」
「あ、め?」
「あめを、知らないのか」
ヴェルネストは懐から紙に包まれた小さな何かを取り出した。
「これだ」
前に、同じようなところに遭遇した。確か、あれは。
「待て」
アウファトの独り言のような声は二人には届いていない。
「口を開けてごらん」
言われるままにジェジーニアが口を開ける。放り込まれたのは、金色の飴玉だ。
それはだめだ。
記憶にある。それは。
ジェジーニアが眉を寄せる。
「っえ」
ジェジーニアが口を開け、舌を出す。
ジェジーニアの舌の上から唾液で濡れた飴玉が零れ落ちる。
床に金色の飴玉が転がる。
「にが……」
ジェジーニアが眉を顰める。何が起きたかわかっていないようだった。
「おや……すごいな、これだけでわかるのか」
ヴェルネストは包み紙にくるんで飴玉を拾い上げる。
アウファトは咄嗟にヴェルネストに駆け寄り、胸ぐらを掴んだ。
腹の底から湧くのは、煮えたぎるような怒りだ。
ヴェルネストはアウファトの目の前で、ジェジーニアに毒入りの飴玉を食べさせた。
「おまえ、また」
以前にも同じようなことがあった。
王都を訪れたウィルマルトを紹介したときだ。
あのときも、ヴェルネストは毒入りの飴をウィルマルトに食わせた。ウィルマルトは怒らなかったが、ヴェルネストは謹慎処分になった。
反省したと思っていたが、それはアウファトが思っていただけのようだった。
「驚いた。竜王の子は、防衛本能も強いんだな。竜人は食うまでわからなかったようだが」
「帰れ、ヴェルネスト」
アウファトは低く唸るような声を上げた。
「その飴、今ここで食べてみろ」
「心配するな、身体に影響は出ない」
ヴェルネストは悪びれた様子もない。
アウファトは薄い青の瞳で鋭く睨む。その目にははっきりと憎悪が滲んでいた。
「この子に何かあれば、お前を追放してやるからな」
「わかった、帰るよ」
両手を挙げ薄く笑ったヴェルネストは、静かに後退る。
「お邪魔しました。またね、ジェジーニア」
「ん、またね、ヴェルネスト」
ジェジーニアは素直に応える。
アウファトはヴェルネストが部屋を出るまで視線を離さなかった。
ヴェルネストの後ろ姿が扉の向こうに消え、部屋には静寂が訪れた。
「あう、怒ってる。ヴェルネストのことが嫌い? 俺がいけないことをした?」
「ジジ、あいつからはものをもらってはだめだ」
ジェジーニアは頷く。
「身体は大丈夫か?」
「ん、苦かっただけ」
「口を濯ごうか。動けるか」
「ン」
アウファトはジェジーニアの手を取ると手洗い場へとジェジーニアを連れて行った。
うがいをさせて、部屋に戻る。
応接用のソファに座らせると、アウファトはジェジーニアに視線を合わせ跪く。
「ヴェルネストは、ウィルマルトに毒を食わせるようなやつだ。おれの不注意だ。すまない、ジジ」
ジェジーニアは、薄く笑って首を横に振った。
以前、ウィルマルトを紹介したときのことだった。アウファトの目を盗んで、ヴェルネストはウィルマルトに毒入りの飴を食べさせた。大事には至らなかったが、ウィルマルトはしばらく体調を崩した。
自分がついていながら、ジェジーニアを危険な目に遭わせてしまった。アウファトは不甲斐なさに胸が痛んだ。
ジェジーニアに向けられる悪意からも護らなくてはならない。王都には、様々な人間がいる。善良な人間ばかりではない。悪意を持った人間も多い。それらから、ジェジーニアを護らなくてはならない。
「帰るか。パンを買って帰ろう」
「ン」
ジェジーニアの瞼が自然と落ちた。
「ジジ?」
寝息が聞こえる。
「ジジ」
規則正しい寝息。穏やかな寝顔。起こすのも可哀想で、アウファトはジェジーニアを応接用のソファに寝かせた。
先程の毒の飴の影響だろうか。アウファトの胸を不安がよぎる。
すぐに吐き出したし、うがいもさせた。ウィルマルトはしばらく寝込んだが、体調はすぐに戻った。ジェジーニアもそうであってほしいと思う。
こんなことなら連れてこなければよかったと思う。結果としてジェジーニアに苦しい思いをさせてしまった。
もっと気を配らなくてはならない。
ジェジーニアは竜王の子。竜王になるものだ。
白き王がそうしたように、アウファトもジェジーニアを守らなくてはならない。
ジェジーニアはいずれ竜王としてこの地を守るようになるのだろうか。そうなるともうこんなふうに、気軽に話したりできないのだろう。
そう思うとアウファトの胸を冷たい風が撫でた。
寂しい。
そんな思いを抱くのは久しぶりだった。
ジェジーニアがいなくなるのは寂しい。
眠るジェジーニアの傍らで、アウファトはそんなことをぼんやりと考えた。
執務机で追加分の報告書をまとめるアウファトのもとに、シエナが戻ったのはジェジーニア日が大きく西に傾いた頃だった。
「アウファト様、戻りました」
「おかえり、シエナ」
「眠ってしまったんですか」
応接席で眠るジェジーニアに気が付いたシエナは少し寂しそうだった。朝、パンをもらってから、ジェジーニアはシエナが気に入ったようでよく懐いていた。たくさん話もしていたので、無理もない話だった。
「ああ、ヴェルネストが、毒の飴を食わせた」
「っえ、大丈夫なんですか」
「うがいもさせたから大事ないとは思う」
「そうでしたか。飲み物をもらってきます」
「ありがとう、シエナ」
使いから戻ったシエナは水をもらってきてくれた。
今日のやることは全て終わったので、シエナは帰らせた。
ジェジーニアはまだ眠っている。
日差しは大きく西に傾き、西向きの研究室には色付いた日差しが差し込む。
差し込む夕陽を眺めて、アウファトはため息をひとつついた。
ジェジーニアの邪魔にならないよう、カーテンを引く。
差し込む夕陽のなくなった部屋は黄昏時の暗さになった。
今夜はここで眠ることになるかもしれない。
毛布はどこにしまっただろうかと、アウファトは記憶を探った。
心地好い緊張感がアウファトを包む。今日は早く帰って身支度をしなくてはならない。ジェジーニアもだ。
書類を受け取った後、アウファトの研究室には忙しなく来客が来るようになった。どうやらジェジーニアの存在をどこかから聞きつけたようだった。
「だめだ。帰ってくれ」
アウファトは十人目の客を追い返したところだった。
髪の毛をひと房欲しい、血を調べさせて欲しい、爪のかけらが欲しい。案の定、科学科の研究員たちがこぞってやってきた。
そして、十一度目の扉を叩く音が響いた。
さすがにアウファトも辟易していた。昼を過ぎてから、戸口での対応しかしていない。シエナは使いに出してしまったので、アウファトが対応せざるを得なかった。
「いい加減にしてくれ」
扉を開けるなり、アウファトは客人を鋭く睨み、唸るような声を上げた。
「おっと、ずいぶんとご機嫌斜めだな」
「ヴェルネスト」
そこにいたのは科学科主席研究員、ヴェルネストだった。流れるような美しい金髪に、涼しげな深い青の瞳、背はアウファトと同じくらいの、人間の男だ。
リガトラ王国、特にメイエヴァードではでは学問が盛んだ。アウファトの所属する史学科、ヴェルネストの所属する科学科、他にも文学科、数学科が存在する。
ヴェルネストは科学科の首席研究員だ。
「うちの研究員たちに失礼があったようだな。すまない」
アウファトの様子を見て、ヴェルネストは苦笑いして頭を下げた。
ヴェルネストがしおらしいことを言うので、アウファトは怒りのやり場をなくしてため息をひとつついた。
「言葉を交わすくらいなら構わないか」
低く落ち着いた声で、ヴェルネストは伺いを立てる。ジェジーニアが嫌がることでなければいいだろう。怪しいそぶりを見せたらつまみ出せばいい。
「わかった、手短にしてくれ」
「ふふ、感謝するよ、アウファト」
アウファトはヴェルネストを部屋に招き入れた。
ジェジーニアは応接席でうとうとしていた。昼食の後だ、無理もない。
「君が、竜王の子か。はじめまして、わたしはヴェルネスト」
ヴェルネストはジェジーニアのそばに膝をつき、視線を合わせた。ジェジーニアは目を擦りながらヴェルネストを見た。
「俺はジェジーニア」
「ジェジーニアか。素敵な名前だ」
ジェジーニアは不思議そうにヴェルネストを見つめる。それほど人見知りはしないのだろうか。
「君は、黒き竜王の子?」
「ン、そう。ヴェルネストは、あうの、おとうと?」
「私はアウファトの友だちだ」
アウファトは釈然としない気持ちでヴェルネストを見た。できる男だが、得体の知れないところがある。
アウファトは黙って二人を見守った。
「あうのともだち」
「そう。綺麗な髪だね」
「ン」
「手を見せてくれるかい?」
「いいよ」
「黒い爪か」
ヴェルネストの手に、ジェジーニアの手のひらが乗っている。
ジェジーニアは不思議そうに瞬きをした。
「ありがとう、ジェジーニア。飴は好きかい?」
「あ、め?」
「あめを、知らないのか」
ヴェルネストは懐から紙に包まれた小さな何かを取り出した。
「これだ」
前に、同じようなところに遭遇した。確か、あれは。
「待て」
アウファトの独り言のような声は二人には届いていない。
「口を開けてごらん」
言われるままにジェジーニアが口を開ける。放り込まれたのは、金色の飴玉だ。
それはだめだ。
記憶にある。それは。
ジェジーニアが眉を寄せる。
「っえ」
ジェジーニアが口を開け、舌を出す。
ジェジーニアの舌の上から唾液で濡れた飴玉が零れ落ちる。
床に金色の飴玉が転がる。
「にが……」
ジェジーニアが眉を顰める。何が起きたかわかっていないようだった。
「おや……すごいな、これだけでわかるのか」
ヴェルネストは包み紙にくるんで飴玉を拾い上げる。
アウファトは咄嗟にヴェルネストに駆け寄り、胸ぐらを掴んだ。
腹の底から湧くのは、煮えたぎるような怒りだ。
ヴェルネストはアウファトの目の前で、ジェジーニアに毒入りの飴玉を食べさせた。
「おまえ、また」
以前にも同じようなことがあった。
王都を訪れたウィルマルトを紹介したときだ。
あのときも、ヴェルネストは毒入りの飴をウィルマルトに食わせた。ウィルマルトは怒らなかったが、ヴェルネストは謹慎処分になった。
反省したと思っていたが、それはアウファトが思っていただけのようだった。
「驚いた。竜王の子は、防衛本能も強いんだな。竜人は食うまでわからなかったようだが」
「帰れ、ヴェルネスト」
アウファトは低く唸るような声を上げた。
「その飴、今ここで食べてみろ」
「心配するな、身体に影響は出ない」
ヴェルネストは悪びれた様子もない。
アウファトは薄い青の瞳で鋭く睨む。その目にははっきりと憎悪が滲んでいた。
「この子に何かあれば、お前を追放してやるからな」
「わかった、帰るよ」
両手を挙げ薄く笑ったヴェルネストは、静かに後退る。
「お邪魔しました。またね、ジェジーニア」
「ん、またね、ヴェルネスト」
ジェジーニアは素直に応える。
アウファトはヴェルネストが部屋を出るまで視線を離さなかった。
ヴェルネストの後ろ姿が扉の向こうに消え、部屋には静寂が訪れた。
「あう、怒ってる。ヴェルネストのことが嫌い? 俺がいけないことをした?」
「ジジ、あいつからはものをもらってはだめだ」
ジェジーニアは頷く。
「身体は大丈夫か?」
「ん、苦かっただけ」
「口を濯ごうか。動けるか」
「ン」
アウファトはジェジーニアの手を取ると手洗い場へとジェジーニアを連れて行った。
うがいをさせて、部屋に戻る。
応接用のソファに座らせると、アウファトはジェジーニアに視線を合わせ跪く。
「ヴェルネストは、ウィルマルトに毒を食わせるようなやつだ。おれの不注意だ。すまない、ジジ」
ジェジーニアは、薄く笑って首を横に振った。
以前、ウィルマルトを紹介したときのことだった。アウファトの目を盗んで、ヴェルネストはウィルマルトに毒入りの飴を食べさせた。大事には至らなかったが、ウィルマルトはしばらく体調を崩した。
自分がついていながら、ジェジーニアを危険な目に遭わせてしまった。アウファトは不甲斐なさに胸が痛んだ。
ジェジーニアに向けられる悪意からも護らなくてはならない。王都には、様々な人間がいる。善良な人間ばかりではない。悪意を持った人間も多い。それらから、ジェジーニアを護らなくてはならない。
「帰るか。パンを買って帰ろう」
「ン」
ジェジーニアの瞼が自然と落ちた。
「ジジ?」
寝息が聞こえる。
「ジジ」
規則正しい寝息。穏やかな寝顔。起こすのも可哀想で、アウファトはジェジーニアを応接用のソファに寝かせた。
先程の毒の飴の影響だろうか。アウファトの胸を不安がよぎる。
すぐに吐き出したし、うがいもさせた。ウィルマルトはしばらく寝込んだが、体調はすぐに戻った。ジェジーニアもそうであってほしいと思う。
こんなことなら連れてこなければよかったと思う。結果としてジェジーニアに苦しい思いをさせてしまった。
もっと気を配らなくてはならない。
ジェジーニアは竜王の子。竜王になるものだ。
白き王がそうしたように、アウファトもジェジーニアを守らなくてはならない。
ジェジーニアはいずれ竜王としてこの地を守るようになるのだろうか。そうなるともうこんなふうに、気軽に話したりできないのだろう。
そう思うとアウファトの胸を冷たい風が撫でた。
寂しい。
そんな思いを抱くのは久しぶりだった。
ジェジーニアがいなくなるのは寂しい。
眠るジェジーニアの傍らで、アウファトはそんなことをぼんやりと考えた。
執務机で追加分の報告書をまとめるアウファトのもとに、シエナが戻ったのはジェジーニア日が大きく西に傾いた頃だった。
「アウファト様、戻りました」
「おかえり、シエナ」
「眠ってしまったんですか」
応接席で眠るジェジーニアに気が付いたシエナは少し寂しそうだった。朝、パンをもらってから、ジェジーニアはシエナが気に入ったようでよく懐いていた。たくさん話もしていたので、無理もない話だった。
「ああ、ヴェルネストが、毒の飴を食わせた」
「っえ、大丈夫なんですか」
「うがいもさせたから大事ないとは思う」
「そうでしたか。飲み物をもらってきます」
「ありがとう、シエナ」
使いから戻ったシエナは水をもらってきてくれた。
今日のやることは全て終わったので、シエナは帰らせた。
ジェジーニアはまだ眠っている。
日差しは大きく西に傾き、西向きの研究室には色付いた日差しが差し込む。
差し込む夕陽を眺めて、アウファトはため息をひとつついた。
ジェジーニアの邪魔にならないよう、カーテンを引く。
差し込む夕陽のなくなった部屋は黄昏時の暗さになった。
今夜はここで眠ることになるかもしれない。
毛布はどこにしまっただろうかと、アウファトは記憶を探った。
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