【完結】ゼジニアの白い揺籠

はち

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止められない熱*

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「あう」

 ジェジーニアの甘い声がアウファトを呼ぶ。

 胸の上から退いたジェジーニアは動くことのできないアウファトに覆い被さった。
 深く息をつくと、熱に澱んだ瞳がアウファトを見下ろしていた。物言いたげな金色の瞳に、アウファトは言葉を失う。どうして、そんな目で見るのか。かけるべき言葉も見つからず、切羽詰まったせつなげな瞳を、アウファトは見上げるしかできなかった。

 柔らかな唇がアウファトに重なる。
 深く重なった唇をこじ開けられ、舌を絡め取られ、混ざり合った唾液を啜られた。
 ジェジーニアの唾液は甘い。口の中に広がる甘みは嫌なものではなく、アウファトは無意識に舌を伸ばしていた。
 ざらりと舌が擦れ合う感覚に腰が震えた。

 それが快感だと、アウファトはようやく気がつく。甘美な熱を孕んだそれは、簡単にアウファトの脳髄まで痺れさせた。

 思考が止まる。
 離れたジェジーニアの唇はそのまま首筋に這い降り、熱い舌が汗の滲んだ首筋を舐め上げた。
 ほしい。
 朦朧とする意識の中、胸に浮かんでは消えるその感情の出どころがわからず、アウファトは縋るようにジェジーニアを見た。

 熱に冒されたジェジーニアの金の瞳は、アウファトから逸らされることはない。
 ジェジーニアの手がアウファトの寝間着を捲り上げ、薄い腹が、平らな胸が晒される。筋肉の少ない、薄い身体だ。
 ジェジーニアはアウファトの肌を味わうように、余すところなく舌を這わせていく。
 くすぐったいのに、それはなんだか気持ちが良くて、それがまたアウファトの身体に火をつけていった。

 胸を炙るような劣情を、アウファトは初めて知った。
 元々色恋沙汰にも興味はなく、性欲も薄かった。ミシュアには面白みのない男だと言われたが、どうすることもできなかった。
 美しい女性を見て心が弾むようなことはあれど、それ以上の感情には育つことはなかった。
 それなのに。
 内から湧いてくる得体の知れないものにアウファトは戸惑う。

 ジェジーニアの唇は臍まで這い降りていた。
 脚衣を不格好に押し上げる自分の性器。自分で触れるのはごくたまにで、それで事足りていた。なのに。こんなことをされてそこが昂るなんて理由がわからない。
 戸惑っている間に下履きごとずり下げられて、頭を擡げる性器が晒された。普段誰かに晒すことなどないその場所が、ジェジーニアの美しい目に映るのがなんとも居た堪れない。

 ジェジーニアは何の躊躇いもなくそれにしゃぶりついた。
 自分でそれに触れるのもごくたまにで、こんな刺激には慣れていない。熱く柔らかな粘膜に包まれ、厚い舌にじっくりと根本から舐め上げられて、刺激に慣れていないアウファトは容易く達した。
 白濁が何度もジェジーニアの温かな口の中に散る。

「っは、あ」

 心臓が煩く鳴っている。
 吐精の余韻は長く尾を引いて、簡単には落ち着きそうもない。荒い吐息の音が、鳴り止まない鼓動と一緒に自分の中に反響している。
 果てても、湧いてくる熱は止まることはない。

 疼く熱源はずっと腹の奥にあるようだった。早くそれをどうにかしたいと思うのに、それが何処なのかわからない。
 身体に力が入らない。
 先ほど飲まされたあれは人の身体には毒なのだろうかとぼんやり考える。そんな話は聞いたことがなかった。

 だとしたら、このまま死ぬのか。
 アウファトは力の入らない身体を投げ出し、ぼんやりとジェジーニアを見上げる。
 自分はどうなってしまうのか不安だった。どう足掻いても、ジェジーニアには力では抵抗できない。このまま、あの異形の性器に犯されるのか。

 こわい。こわいのに、胸の奥にあるのは薄暗く温かな期待だ。
 自分はどうしてしまったのか。これがつがいになるということなのか。
 答えのない問答を続けるアウファトの脚に、ジェジーニアの手が触れた。
 脚に引っかかるように残された下履きと脚衣は取り払われ、ジェジーニアの大きな手が、投げ出されたアウファトの脚を大きく広げる。

 先程の吐精で芯を失った性器と、尻のあわいの窄まりが晒される。
 アウファトの肌を羞恥が染めていく。こわいのに、恥ずかしい格好をさせられているのに、昂る気持ちが止められない。
 ジェジーニアの身体が覆い被さるようにアウファトに近付く。じゅく、と後孔に濡れた感触が触れた。

「っあ、だめ、だ、そんなところ」

 そこは排泄のための器官だ。それ以外の使い方なんて知らない。その孔に、ジジは熱く逞しい昂りを押し当てた。

「だめ、だ、ジジ」

 古竜語を話す余裕もない。くすんだ空色の瞳には涙が浮かぶ。
 先端から溢れる蜜のような粘液が、何度も窄まりに塗りつけられる。これからそこをこじ開けられるのだと、嫌でもわかる。
 アウファトは力なく首を横に振った。眦を涙が伝い落ちる。
 熱いジェジーニアの手がアウファトの腰をしっかり掴んだ。擦り付けているそれを、アウファトのその孔に入れるつもりなのだと理解した。

 こわい。こわい。
 全身が恐怖に強張る。誰かと交わることなど、ジェジーニアが初めてだった。受け入れる側も初めてだ。
 熱く張り詰めた先端が無垢な窄まりをこじ開け、無慈悲に沈んだ。
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