10 / 63
フィオディカ伝承
しおりを挟む
神は世界を等しく見守るために七人の竜王を遣わせた。竜王は神の目となり手となり、時に声となった。竜王は神より言葉を預かり、竜人に伝えた。
竜人は地上で人を見守った。
竜人は人に知恵を授け、文明を授けた。
世界には序列があった。
神がいて、その下に神の代弁者である竜王、それに仕える神獣と竜、精霊が侍り、その下に竜人が並び、そして、人がいた。
竜人は高い知能と高い魔力、高い身体能力、空を駆ける翼を持っていた。
竜人をまとめたのは、白き王フィオディーク。竜王の声を聞く者、黒き竜王に愛されし者であった。
王は白き都を築き、人と共存する国を作った。
序列を踏み越えたのは人だった。
人を見守っていた竜人族に、反旗を翻した人は数で圧倒し、蹂躙した。
白き都は血に染まった。
捕えられた白き王は王都の中央、王宮の前で処刑された。首を落とされ、胸を裂かれ、惨たらしく壊された。
その心臓を喰らう者がいた。
はらわたを喰らう者がいた。
美しい瞳を奪う者がいた。
それを止めず、見守り、囲っていたのは、人だった。
黒き竜王は白き王を悼み、地に降り立ち、奪われた瞳と、はらわたと、心臓を取り返した。
しかし竜王は、王の心臓を喰らった者によって殺された。竜王を殺したのは、はじまりの竜殺し、エンタロトといった。
黒き竜王を殺した剣は、奇しくも王の処刑に使われたものと同じ剣であった。白き王が黒き竜王より賜った剣であるその剣はジエクノウスと呼ばれた。
黒き竜王は死に際、その槍を地に突き立て、呪詛を吐いた。
王を奪った者たちよ。王をこわし、貶めた者たちよ、お前たちは未来永劫、己の罪を悔い、嘆き、苦しめ、と。
そして竜王は死んだ。竜王と王を殺し、奪った者とその一族たちは、皆短命であった。
人は強欲であった。
人を守り導いた竜人を貶め、奴隷とし、多くの竜を殺した。
一方で、密かに王と黒き竜王を弔った者たちがいた。名は残っていない。王都に咲いた白い花と共に、王と黒き竜王をの亡骸を埋め、祈りを捧げた。白き花の一族と呼ばれる。それ以降、白き花の一族は人でありながら竜王の加護を受けているという。
白き王と黒き竜王の死後、神は嘆き悲しみ、雨を降らせた。やがてこの地は冷え、雨は雪へと変わった。黒き竜王の呪詛だといわれている。
白い都は昏く冷たく閉ざされ、あらゆるものを拒むようになった。
神託を与える者は消え、神代は終わった。
白き王と黒き竜王を屠った咎人の死に絶えた後。
白き花の一族は世に身を潜めた。
これが王都リウストラの終わりの物語、神代の終わりの物語である。
竜人は地上で人を見守った。
竜人は人に知恵を授け、文明を授けた。
世界には序列があった。
神がいて、その下に神の代弁者である竜王、それに仕える神獣と竜、精霊が侍り、その下に竜人が並び、そして、人がいた。
竜人は高い知能と高い魔力、高い身体能力、空を駆ける翼を持っていた。
竜人をまとめたのは、白き王フィオディーク。竜王の声を聞く者、黒き竜王に愛されし者であった。
王は白き都を築き、人と共存する国を作った。
序列を踏み越えたのは人だった。
人を見守っていた竜人族に、反旗を翻した人は数で圧倒し、蹂躙した。
白き都は血に染まった。
捕えられた白き王は王都の中央、王宮の前で処刑された。首を落とされ、胸を裂かれ、惨たらしく壊された。
その心臓を喰らう者がいた。
はらわたを喰らう者がいた。
美しい瞳を奪う者がいた。
それを止めず、見守り、囲っていたのは、人だった。
黒き竜王は白き王を悼み、地に降り立ち、奪われた瞳と、はらわたと、心臓を取り返した。
しかし竜王は、王の心臓を喰らった者によって殺された。竜王を殺したのは、はじまりの竜殺し、エンタロトといった。
黒き竜王を殺した剣は、奇しくも王の処刑に使われたものと同じ剣であった。白き王が黒き竜王より賜った剣であるその剣はジエクノウスと呼ばれた。
黒き竜王は死に際、その槍を地に突き立て、呪詛を吐いた。
王を奪った者たちよ。王をこわし、貶めた者たちよ、お前たちは未来永劫、己の罪を悔い、嘆き、苦しめ、と。
そして竜王は死んだ。竜王と王を殺し、奪った者とその一族たちは、皆短命であった。
人は強欲であった。
人を守り導いた竜人を貶め、奴隷とし、多くの竜を殺した。
一方で、密かに王と黒き竜王を弔った者たちがいた。名は残っていない。王都に咲いた白い花と共に、王と黒き竜王をの亡骸を埋め、祈りを捧げた。白き花の一族と呼ばれる。それ以降、白き花の一族は人でありながら竜王の加護を受けているという。
白き王と黒き竜王の死後、神は嘆き悲しみ、雨を降らせた。やがてこの地は冷え、雨は雪へと変わった。黒き竜王の呪詛だといわれている。
白い都は昏く冷たく閉ざされ、あらゆるものを拒むようになった。
神託を与える者は消え、神代は終わった。
白き王と黒き竜王を屠った咎人の死に絶えた後。
白き花の一族は世に身を潜めた。
これが王都リウストラの終わりの物語、神代の終わりの物語である。
0
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説

【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています
天冨七緒
BL
僕は幼い頃から男の子が好きだった。
気が付いたら女の子より男の子が好き。
だけどなんとなくこの感情は「イケナイ」ことなんだと思って、ひた隠しにした。
そんな僕が勇気を出して高校は男子校を選んだ。
素敵な人は沢山いた。
けど、気持ちは伝えられなかった。
知れば、皆は女の子が好きだったから。
だから、僕は小説の世界に逃げた。
少し遠くの駅の本屋で男の子同士の恋愛の話を買った。
それだけが僕の逃げ場所で救いだった。
小説を読んでいる間は、僕も主人公になれた。
主人公のように好きな人に好きになってもらいたい。
僕の願いはそれだけ…叶わない願いだけど…。
早く家に帰ってゆっくり本が読みたかった。
それだけだったのに、信号が変わると僕は地面に横たわっていた…。
電信柱を折るようにトラックが突っ込んでいた。
…僕は死んだ。
死んだはずだったのに…生きてる…これは死ぬ瞬間に見ている夢なのかな?
格好いい人が目の前にいるの…
えっ?えっ?えっ?
僕達は今…。
純愛…ルート
ハーレムルート
設定を知る者
物語は終盤へ
とあり、かなりの長編となっております。
ゲームの番外編のような物語です、何故なら本編は…
純愛…ルートから一変するハーレムルートすべての謎が解けるのはラスト。
長すぎて面倒という方は最終回で全ての流れが分かるかと…禁じ手ではありますが

耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚
竜鳴躍
BL
マナ=クレイソンは公爵家の末っ子だが、耳が聞こえない。幼い頃、自分に文字を教え、絵の道を開いてくれた、母の友達の子爵令息のことを、ずっと大好きだ。
だが、自分は母親が乱暴されたときに出来た子どもで……。
耳が聞こえない、体も弱い。
そんな僕。
爵位が低いから、結婚を断れないだけなの?
結婚式を前に、マナは疑心暗鬼になっていた。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
助けた竜がお礼に来ました
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
☆6話完結済み☆
前世の記憶がある僕が、ある日弱った子供のぽっちゃり竜を拾って、かくまった。元気になった竜とはお別れしたけれど、僕のピンチに現れて助けてくれた美丈夫は、僕のかわいい竜さんだって言い張るんだ。それで僕を番だって言うんだけど、番ってあのつがい?マッチョな世界で野郎たちに狙われて男が苦手な無自覚美人と希少種の竜人との異種間恋愛。 #ほのぼのしてる話のはず
☆BLランキング、ホットランキング入り本当に嬉しいです♡読者の皆さんがこの作品で楽しんで頂けたのかなととても励みになりました♪
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる