上 下
112 / 119
09.ここのつめ

07.戦いの果てに(その7)

しおりを挟む

邪神(龍王)は、光の柱の中から姿を現した。

神々しい白い龍の姿をしていた。

「みんな、邪神(龍王)が姿を現した。」

「気を引き締めてくれ。こここあらが本当の戦いだ!」

この場で戦っている全ての仲間へ念話を送った。

「さて、強力なブレスでも放ってくるのか。」

榊は、守りの宝珠を握りしめた。

榊が複製した宝珠(レプリカ)は、闇龍に対しては有効だった。

だが、邪神(龍王)に対して有効なのかは未知数だ。

邪神(龍王)との対決に榊達は身構えたが、邪神(龍王)は、空から降りてはこなかった。

暗いどんよりとした雷雲の空を大きな円を描く様に巨大な浮島の上をぐるぐると飛んでした。

やがてその円のに、残った闇龍達が集まり出し、闇龍と邪神(龍王)である白い龍の作り出す大きな円ができていた。

榊は、探査の魔術で大きな円を描きながら飛ぶ邪神(龍王)を追っていた。

「邪神(龍王)は、あんな円を描きながら空を飛んで何をやってるんだ。」

榊は、探査の魔術に映し出される邪神(龍王)と闇龍の行動にどんな意味があるかを注意深く探った。

そして、この行動が意味するところにようやくと気が付いた。

「…闇龍の数が減っている!」

榊は、暗いどんよりとした雷雲の空を大きな円を描く様に飛ぶ、闇龍と邪神(龍王)を凝視した。

邪神(龍王)は、目の前に現れる闇龍に対して黒い霧の様なブレスを放っていた。

闇龍は、邪神(龍王)が放った黒いブレスを浴びると、体が霧上となり姿が消えていった。

「まさか、仲間の闇龍を喰らって…、いや、闇龍の生命エネルギーを自分に取り込んでいるのか。」

「つまり、最初に黒いローブを纏った者達が人々を拉致した。」

「拉致した人々の命は、"生命の泉"に集められそこから闇龍が生まれた。」

「闇龍が世界で人々の生命を集め、"生命の泉"に"命"を蓄え、さらに闇龍を誕生させた。」

「邪神(龍王)は、闇龍を喰らって生命エネルギーを得る。」

「ほう、だとするとディオネとレアが破壊?した"生命の泉"とやらが無くなった今となっては、目の前にいる闇龍を喰らいつしたら最後、邪神(龍王)は、生命エネルギーの補給ができなくなる訳か。」

榊は、悩んでいた。

このまま目の前の光景を黙って見ているべきか。

それとも、邪神(龍王)が闇龍の生命エネルギーを喰らうのを邪魔した方がよいのかと。

だが、邪神(龍王)が闇龍の生命エネルギーを喰らえば喰らうほど、邪神(龍王)が強くなるのは当然の結果だ。

邪神(龍王)が全ての闇龍の生命エネルギーを吸い尽くす前に決着を付けると決断した。

そして、皆に念話で指示を出そうとした時だった。

「闇龍がいなくなったね。」

「そうね、邪神(龍王)が闇龍を全部食べてしまったようね。」

巨大な浮島から戻ってきたディオネとレアが、榊の横でぼぞりとつぶやいた。

榊は、決断の時を逸してしまったのだ。

「あっ、しまった。」

榊は、間抜けな言葉を放っていた。

暗くどんよりとした雲の下で、闇龍を喰らいつくした邪神(龍王)は、榊達を見ていた。

榊は、邪神(龍王)の姿を見て、直にでも攻撃してくると判断した。

そして、邪神(龍王)の大きな口が開かれると、先ほどまで闇龍達に放っていたブレスとは明らかに異なる光のブレスを放った。

「まずい、みんな固まれ。」

榊は、そう叫ぶとアイテムバックから守りの宝珠(レプリカ)を鷲掴みにして頭上に守りの宝珠(レプリカ)を掲げた。

榊は、とっさの行動で守りの宝珠(レプリカ)を10個も同時に頭上に掲げてしまった。

守りの宝珠(レプリカ)は、あまり多く複製していなかった。

それを同時に10個も使ってしまったのだ。

しかし、既に守りの宝珠(レプリカ)は、発動してしまった。

そんな榊の間抜けな行動とは関係なく、邪神(龍王)が放った光のブレスは、容赦なく榊達の元へ一直線に向かっていた。

邪神(龍王)が放った光のブレスは、榊達を容赦なく襲った。

守りの宝珠(レプリカ)がそれを遮った。

だが、事はそう簡単ではなかった。

榊が頭上に掲げた守りの宝珠(レプリカ)が音を放って破裂したのだ。

パン、パン、パン。

守りの宝珠(レプリカ)は次々と破裂しては、榊の手の中から粉となって地上に落ちていった。

榊は、慌てた。

「まずい!邪神(龍王)のブレスが強力すぎて守りの宝珠(レプリカ)では、過負荷を起こしているんだ。」

パン、パン、パン。

守りの宝珠(レプリカ)の破裂は尚も続いていた。

榊は左手でアイテムバックの中を漁った。

だが、焦れば焦る程、守りの宝珠(レプリカ)が左手からこぼれていった。

榊達の頭上には、守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界の魔法陣が現れては次々と消し飛んでいた。

守りの宝珠(レプリカ)が天界した結界の魔法陣は、残り3個、2個、1個。

その時、邪神(龍王)が放った光のブレスがやんだ。

10個目の守りの宝珠(レプリカ)が榊の手の中で割れた。

守りの宝珠(レプリカ)は、なんとか榊達を守りきった。

だが、守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界は、邪神(龍王)が放った光のブレスを食い止めた訳ではなかった。

守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界は、邪神(龍王)が放った光のブレスを後方へと弾いていたのだ。

榊は、後方から聞こえて来る凄まじい破壊音を耳にした。

榊達は、恐る恐る後ろを振り向いた。

すると、遥か彼方の山脈が炎に包まれ爆音と共に崩壊していく姿が目に映っていた。

「姉さん、さすが邪神(龍王)だね。」

「そうね。ブレスで山脈を吹き飛ばすなんてすごいわね。」

「私達もあの技が欲しいわね。」

「そうだよね、邪神(龍王)を倒したら教えてもらおうよ。」

榊の脇でディオネとレアが緊張感のない話に盛り上がっていた。

榊は、暗くどんよりとした空を飛ぶ邪神(龍王)を凝視した。

榊には、邪神(龍王)が笑っているように見えた。

そして邪神(龍王)の大きな口がまた開いた。

「まずい。みんな散開しろ。」

「あのブレスは、守りの宝珠(レプリカ)を10個を1度に消費する。」

「これでは、手持ちの守りの宝珠(レプリカ)が直に底をつくぞ。」

榊と人化した神器達は、召喚した"風神"の雲に飛び乗ると一気に空へと舞い上がった。

ディオネ、レア、ベティ、漆黒の龍も、一斉に空に舞い上がると散開を始めた。

榊は、焦っていた。

守りの宝珠(レプリカ)は、邪神(龍王)の光のブレス1発で10個も消費した。

では、破滅の宝珠(レプリカ)は邪神(龍王)に対して有効なのかと。

しかし、目の前には邪神(龍王)がいるのだ。

友人と将棋をさしてしる訳ではない。

"まった"はないのだ。

「ディオネ、レア、ベティ。悪いが破滅の宝珠(レプリカ)を邪神(龍王)に使ってくれ。」

「もし、ダメそうなら直に逃げてくれ。」

榊は、ディオネ、レア、ベティの火龍に念話を送った。

だが、恐らくだが破滅の宝珠(レプリカ)は、邪神(龍王)には有効ではないだろう。

榊の脳裏に"敗北"という言葉が浮かんで来ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

処理中です...