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09.ここのつめ

07.戦いの果てに(その7)

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邪神(龍王)は、光の柱の中から姿を現した。

神々しい白い龍の姿をしていた。

「みんな、邪神(龍王)が姿を現した。」

「気を引き締めてくれ。こここあらが本当の戦いだ!」

この場で戦っている全ての仲間へ念話を送った。

「さて、強力なブレスでも放ってくるのか。」

榊は、守りの宝珠を握りしめた。

榊が複製した宝珠(レプリカ)は、闇龍に対しては有効だった。

だが、邪神(龍王)に対して有効なのかは未知数だ。

邪神(龍王)との対決に榊達は身構えたが、邪神(龍王)は、空から降りてはこなかった。

暗いどんよりとした雷雲の空を大きな円を描く様に巨大な浮島の上をぐるぐると飛んでした。

やがてその円のに、残った闇龍達が集まり出し、闇龍と邪神(龍王)である白い龍の作り出す大きな円ができていた。

榊は、探査の魔術で大きな円を描きながら飛ぶ邪神(龍王)を追っていた。

「邪神(龍王)は、あんな円を描きながら空を飛んで何をやってるんだ。」

榊は、探査の魔術に映し出される邪神(龍王)と闇龍の行動にどんな意味があるかを注意深く探った。

そして、この行動が意味するところにようやくと気が付いた。

「…闇龍の数が減っている!」

榊は、暗いどんよりとした雷雲の空を大きな円を描く様に飛ぶ、闇龍と邪神(龍王)を凝視した。

邪神(龍王)は、目の前に現れる闇龍に対して黒い霧の様なブレスを放っていた。

闇龍は、邪神(龍王)が放った黒いブレスを浴びると、体が霧上となり姿が消えていった。

「まさか、仲間の闇龍を喰らって…、いや、闇龍の生命エネルギーを自分に取り込んでいるのか。」

「つまり、最初に黒いローブを纏った者達が人々を拉致した。」

「拉致した人々の命は、"生命の泉"に集められそこから闇龍が生まれた。」

「闇龍が世界で人々の生命を集め、"生命の泉"に"命"を蓄え、さらに闇龍を誕生させた。」

「邪神(龍王)は、闇龍を喰らって生命エネルギーを得る。」

「ほう、だとするとディオネとレアが破壊?した"生命の泉"とやらが無くなった今となっては、目の前にいる闇龍を喰らいつしたら最後、邪神(龍王)は、生命エネルギーの補給ができなくなる訳か。」

榊は、悩んでいた。

このまま目の前の光景を黙って見ているべきか。

それとも、邪神(龍王)が闇龍の生命エネルギーを喰らうのを邪魔した方がよいのかと。

だが、邪神(龍王)が闇龍の生命エネルギーを喰らえば喰らうほど、邪神(龍王)が強くなるのは当然の結果だ。

邪神(龍王)が全ての闇龍の生命エネルギーを吸い尽くす前に決着を付けると決断した。

そして、皆に念話で指示を出そうとした時だった。

「闇龍がいなくなったね。」

「そうね、邪神(龍王)が闇龍を全部食べてしまったようね。」

巨大な浮島から戻ってきたディオネとレアが、榊の横でぼぞりとつぶやいた。

榊は、決断の時を逸してしまったのだ。

「あっ、しまった。」

榊は、間抜けな言葉を放っていた。

暗くどんよりとした雲の下で、闇龍を喰らいつくした邪神(龍王)は、榊達を見ていた。

榊は、邪神(龍王)の姿を見て、直にでも攻撃してくると判断した。

そして、邪神(龍王)の大きな口が開かれると、先ほどまで闇龍達に放っていたブレスとは明らかに異なる光のブレスを放った。

「まずい、みんな固まれ。」

榊は、そう叫ぶとアイテムバックから守りの宝珠(レプリカ)を鷲掴みにして頭上に守りの宝珠(レプリカ)を掲げた。

榊は、とっさの行動で守りの宝珠(レプリカ)を10個も同時に頭上に掲げてしまった。

守りの宝珠(レプリカ)は、あまり多く複製していなかった。

それを同時に10個も使ってしまったのだ。

しかし、既に守りの宝珠(レプリカ)は、発動してしまった。

そんな榊の間抜けな行動とは関係なく、邪神(龍王)が放った光のブレスは、容赦なく榊達の元へ一直線に向かっていた。

邪神(龍王)が放った光のブレスは、榊達を容赦なく襲った。

守りの宝珠(レプリカ)がそれを遮った。

だが、事はそう簡単ではなかった。

榊が頭上に掲げた守りの宝珠(レプリカ)が音を放って破裂したのだ。

パン、パン、パン。

守りの宝珠(レプリカ)は次々と破裂しては、榊の手の中から粉となって地上に落ちていった。

榊は、慌てた。

「まずい!邪神(龍王)のブレスが強力すぎて守りの宝珠(レプリカ)では、過負荷を起こしているんだ。」

パン、パン、パン。

守りの宝珠(レプリカ)の破裂は尚も続いていた。

榊は左手でアイテムバックの中を漁った。

だが、焦れば焦る程、守りの宝珠(レプリカ)が左手からこぼれていった。

榊達の頭上には、守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界の魔法陣が現れては次々と消し飛んでいた。

守りの宝珠(レプリカ)が天界した結界の魔法陣は、残り3個、2個、1個。

その時、邪神(龍王)が放った光のブレスがやんだ。

10個目の守りの宝珠(レプリカ)が榊の手の中で割れた。

守りの宝珠(レプリカ)は、なんとか榊達を守りきった。

だが、守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界は、邪神(龍王)が放った光のブレスを食い止めた訳ではなかった。

守りの宝珠(レプリカ)が展開した結界は、邪神(龍王)が放った光のブレスを後方へと弾いていたのだ。

榊は、後方から聞こえて来る凄まじい破壊音を耳にした。

榊達は、恐る恐る後ろを振り向いた。

すると、遥か彼方の山脈が炎に包まれ爆音と共に崩壊していく姿が目に映っていた。

「姉さん、さすが邪神(龍王)だね。」

「そうね。ブレスで山脈を吹き飛ばすなんてすごいわね。」

「私達もあの技が欲しいわね。」

「そうだよね、邪神(龍王)を倒したら教えてもらおうよ。」

榊の脇でディオネとレアが緊張感のない話に盛り上がっていた。

榊は、暗くどんよりとした空を飛ぶ邪神(龍王)を凝視した。

榊には、邪神(龍王)が笑っているように見えた。

そして邪神(龍王)の大きな口がまた開いた。

「まずい。みんな散開しろ。」

「あのブレスは、守りの宝珠(レプリカ)を10個を1度に消費する。」

「これでは、手持ちの守りの宝珠(レプリカ)が直に底をつくぞ。」

榊と人化した神器達は、召喚した"風神"の雲に飛び乗ると一気に空へと舞い上がった。

ディオネ、レア、ベティ、漆黒の龍も、一斉に空に舞い上がると散開を始めた。

榊は、焦っていた。

守りの宝珠(レプリカ)は、邪神(龍王)の光のブレス1発で10個も消費した。

では、破滅の宝珠(レプリカ)は邪神(龍王)に対して有効なのかと。

しかし、目の前には邪神(龍王)がいるのだ。

友人と将棋をさしてしる訳ではない。

"まった"はないのだ。

「ディオネ、レア、ベティ。悪いが破滅の宝珠(レプリカ)を邪神(龍王)に使ってくれ。」

「もし、ダメそうなら直に逃げてくれ。」

榊は、ディオネ、レア、ベティの火龍に念話を送った。

だが、恐らくだが破滅の宝珠(レプリカ)は、邪神(龍王)には有効ではないだろう。

榊の脳裏に"敗北"という言葉が浮かんで来ていた。
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