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07.ななつめ
09.漆黒の龍(その4)
しおりを挟む「どうだった。」
"炎の女神(免停中)"が"破滅の楽園"を放った後、小さな体の白蛇が"漆黒の龍"の額にある"宝珠"の状態を確認しに行った。
白蛇がディオネとレアの元へと帰ってくると、漆黒の龍の状況を説明を始めた。
「"漆黒の龍"の額の宝珠には、昨日よりも大きな亀裂が入っておった。」
「明らかに攻撃は、通じておる。しかもじゃ、攻撃を喰らった後の回復に昨日の何倍もの時間をかけておった。」
皆がお互いの顔を見合っていると、最初にアイスが口を開いた。
「これならいけるんじゃないでしょうか。」
続いディオネが口を開いた。
「そうね、ただ、どうせやるなら"漆黒の龍"の額にある"宝珠"を直接攻撃できないかしら。」
「"炎の女神(免停中)"が攻撃を放った後に、脆くなった"宝珠"を狙い撃ちするのよ。」
「でも、そんな芸当なんて誰もできないよ。」
でも、姉のディオネの意見にレアが反論した。それは当然であった。
ディオネ、レア、アイスは、ピンポイント攻撃などやった事などないかった。当然ながら3人のスキルもそういった類のもでもなかったのだ。
ディオネは、ふと気が付いた。
ここにいる4人には、そんな芸当はできない。でも、私達の元にときたま来る彼女には、その芸当ができたのだ。
「いえ。いる。1ヶ所を狙い撃ちできる者がひとりだけいるわ。」
次の日。
雲の切れ間から見える街並みは、一見何の変哲もない街並みに見えた。
しかし、高度を下げてみると街が廃墟と化している事が見てとれた。
この街は、"漆黒の龍"により街の住民がいなくなり、さらに"炎の女神(免停中)"が放った"破滅の楽園"により廃墟と化した街並みが広がっていた。
そんな街の上空に1体の飛竜とその飛竜を駆る少女が飛来した。
名前は、ティアナ。
ディオネとレアを上司と呼び、ふたりに食料やら旅の支援物資を定期的に届けに来ていた。
ティアナは、ディオネとレアの実家でもある火龍神殿で竜騎士見習いをしている。
いつもは、火龍神殿の警護にあたっているのだが、それ以外にとある人物から請け負った荷物の運搬業務も行っていた。
火龍神殿は、他国の空を通過する許可を得ていた。
まあ、得ていなくても火龍が空を飛んでいたら誰も攻撃などしないのが常識だった。自分から災いを招き入れるバカはいないのだ。
ところが、飛竜は別である。王国によっては、竜騎士部隊を配備している国もあり、そういった王国ほどプライドが高く勝手に入ってきた飛竜を見つけると親の敵とばかりに、寄ってたかって攻撃を仕掛けてくるのがもっぱらであった。
※話がそれた。
「ディオネ様、レア様。最近、連絡がないので心配していました。」
「これから現状を説明するから。それと、こちらもあまり時間がないので、説明が終わったら早速だけど作戦開始よ。」
ティアナは、ディオネからの念話によりこの街の現状と漆黒の龍を討伐する作戦を伝えられた。
「つまり私は、"漆黒の龍"が動けなくなったら、その龍の額にある"宝珠"を槍で撃ち抜けばよいのですね。」
「そう。ただ、普通に槍を放っても威力が足りないと思うから、上空から急降下して一気に"漆黒の龍"の"宝珠"を貫いて欲しいの。」
「了解しました。」
「でも気を付けて。"漆黒の龍"の目が赤く光ったら、体が霧散して終わりよ。」
「そうならないように"漆黒の龍"が動けないようにしておくから。」
「はい。では、私は、上空で待機しています。」
ティアナは、ディオネからの念話を終わらせると、廃墟と化した街の上空、いや、雲の上を飛んでいた。
ディオネが言っていた"漆黒の龍"の目というのが、どれくらいの距離まで有効なのかが分からない以上、無駄な危険を冒す事は極力避けようと思ったのだ。
ティアナが、街の上空で待機している頃、地上では"漆黒の龍"の討伐作戦が開始された。
ディオネ、レア、アイス、ラディの4人は、アイスが書き記した観光案内の地図に追記した地下道マップを頼りに、"漆黒の龍"の後方へ出られる地下室へ繋がる地下道を進んでいた。
"漆黒の龍"がときたま廃墟の街を俳諧するため、地下道の天井からは、時折埃や土が落ちてくる事もあり、あまりのんびりしているといつ地下道が崩れるかもしれない状況だった。
ディオネ、レア、アイス、ラディは、地下通路からとある地下室の扉をゆっくりと開けた。
地上の建物が崩れて、地下室に入れないところもあり、地下室に入ったはいいが、いきなり崩れてくるという事もたびたびだった。
今日はこれで何度目かの移動だった。地下室から静かに移動すると建物の1階へと出る扉を静かに開けた。
建物は、半分ほど壊れていたがそれでも"漆黒の龍"の後方の絶好の位置に出る事ができた。
ディオネは、事前に打ち合わせをした通りに作戦開始の合図を送った。
第1戦目。
ディオネとレアは"漆黒の龍"へ"龍の業火"を放った。
幾重もの炎の柱が絡まる蛇のように"漆黒の龍"の体を包み込み、まるで生きているかの様な炎の蛇は、"漆黒の龍"を逃がすまいと執拗に絡みついた。
"漆黒の龍"の体は、炎の包まれ翼は燃え落ち、龍の鱗は剥げ落ち、黒い体液を体中から噴き出した。
しかし、ディオネの放った"龍の業火"の炎の勢いが衰えると、"漆黒の龍"の体は、徐々に再生を始めた。
焼け落ちた翼は復活し、剥げ落ちた鱗は、次々と再生していった。
第2戦目。
ラディは、猛毒の塊を"漆黒の龍"の顔へ投げつけた。ほんの少量だが猛毒が口の中へと入った。
"漆黒の龍"の口から入った猛毒は、龍の体内で猛威を振るい始めた。
"漆黒の龍"は、もがき苦しみ地面へと倒れ込むと全身が痙攣を始めた。
だが、しばらくすると"漆黒の龍"はよろよろと立ち上がった。ただ、まだ毒の影響が残っているようで、おぼつかない足取りをさらしていた。
第3戦目。
"炎の女神(免停中)"は、"破滅の楽園"を放った。"漆黒の龍"の目の前、ちょうど額の"宝珠"の正面だった。
地上は、炎の地獄と化していた。
白い光の塊が一瞬で巨大な火球と化すと、数千度の高熱と衝撃波をまき散らした。
ディオネ、レア、アイス、ラディは、"破滅の楽園"が放たれる前に身を隠している建物の地下室へと退避していた。
凄まじい爆音と高熱が地上を蹂躙していた。
街の住民や街を守る兵士の命を奪ったのは"漆黒の龍"だ。だが、この街を破壊したのは、"炎の女神(免停中)"の"破滅の楽園"だった。でも、それに文句を言う者は誰もいない。もう街の住民は誰もいないのだから。
"漆黒の龍"の体の表面は殆ど焼けただれて炭化していた。
それでも"漆黒の龍"の回復力は、龍の死を受け入れずに強引に"漆黒の龍"の体の再生を始めた。
"漆黒の龍"は、再生してはいるが、もがき苦しんでいる様にも見えた。
それは、再生に伴う苦痛なのか、何か別のものなのかは分からなかった。
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