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05.いつつめ

03.人化の道(その1)

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火龍神殿に生まれた火龍の幼生。
名前は、ディオネとレア。
ディオネがお姉さん、レアが弟。

火龍神殿の主である火龍のベティが、火龍神殿の主となって間もなく散歩がてら訪れた火龍神殿の裏山の洞窟に訪れた。
断崖絶壁の中腹にある洞窟は、いかにも龍が好みそうな場所だった。

その洞窟に入ってみると古びた龍の巣があった。ベティもつい最近までこの様な巣で生活をしていた。
ベティがその巣の中を除いてみたところ、巣の中に2つの龍の卵が放置されていた。
巣にも卵にも埃がたり、ここで生活をしている龍が存在しないことを告げていた。
火龍神殿の主のベティは、その龍の卵を火龍神殿に持ち帰り孵化させることが出来た。



火龍(ベティ)は、とある山奥で静かに暮らしていた。
火龍(ベティ)は、人族の村や街を襲う訳でもなく、山や草原で魔獣を狩って暮らしていた。

しかし、火龍が出没する話を聞きつけた冒険者達は、次々と火龍(ベティ)を狩って名声と大金を手に入れる夢を見た。
それからというもの、火龍(ベティ)の巣がある洞窟には、世界中から龍を討伐すると意気込んでやって来た冒険者や、龍討伐のためにその国の軍隊が派遣された。

だが、火龍(ベティ)は強かった。
いつのまにか、火龍(ベティ)の巣の傍らには、討伐にきた冒険者や兵隊の武具が山の様に積み上げられていた。

ある日、武具の回収にひとりの男とふたりの女がやって来た。
その者達は、火龍(ベティ)を討伐に来た訳ではなくベティの巣の傍らに積み上げられた武具の中からとある武具を回収するためにやってきたのだ。

火龍(ベティ)は、いつもの様に目の前の冒険者を食い殺そうとした。
しかし、気が付くと火龍の姿から人の姿へと変えられていた。

ベティ(火龍)は、冒険者に抗議した。
人族に変えられてしまった火龍は、ひとりでは生きては行けない。だから食物と生活の場を用意しろ。代わりに仲間になってやると。

その抗議は、その男にあっさりと聞き入れられた。
それ以来、ベティ(火龍)は、その冒険者チームの一員となって旅をした。

魔族国の度重なる侵略にも立ち向かい、何十万という魔族と魔獣を倒した。
そんな折、ある国の山中に誰も訪れない神殿に武具の回収に訪れた。

そこでベティは、神殿に放置されていた火龍の認証の珠に触れてしまい、神殿に"勝手"に主として認めてしまった。
それ以来、ベティ(火龍)は、火龍神殿の主の"アルバイト"を始めた。

ベティ(火龍)は、神殿のある小さな国の村や町を巡り、魔獣の討伐を行う事で人々の信頼と信仰を得ていった。
気が付くとベティ(火龍)は、龍としては若くして龍神へと昇華していた。

以来、ベティ(火龍)は、"アルバイト"で神殿の主を行っていたはずが、龍神として正式に火龍神殿の主となっていた。
※詳細は、「誰にでもできる簡単なお仕事」で語られています。


火龍神殿の礼拝の時、火龍の幼生のディオネとレアは、礼拝堂に集まった礼拝者の頭上を小さな体から生えた小さな翼を一生懸命に羽ばたかせながら飛び回った。

小さな口からは、可愛い炎のブレスを吐く様になっていた。
礼拝者の頭上で炎のブレスを吐くたびに、姉である火龍のベティから小さな頭を叩かれては、抗議の鳴き声を発していた。

火龍神殿に来る礼拝者からは、火龍の幼生は人気者だった。
火龍の幼生など一生見る事などできない存在なのだが、火龍神殿に来れば、頭上を自由に飛び回っているのだ。

火龍神殿に来る信徒や参拝者から火龍の幼生が飛ぶ度に喝采が沸き上がっていた。



ディオネとレアが生まれて数年が経ったある日、ディオネがある疑問を抱いた。
神殿に来る人々は、人族の姿をしていた。

神殿で自分達の事を甲斐甲斐しく世話をしてくれる神官達も人族の姿をしていた。
姉のベティ(火龍)は、昼は人族の姿しているが夜遅くになると火龍の姿に戻り、夜の空を縦横無尽に飛んでいた。

姉は、人族にも火龍にもなれた。
しかし、姉弟は人族の姿にはなれなかった。


なぜだろう?


ディオネは、姉にその事を訪ねた。

「わしは、龍神じゃからな。人族にも火龍のもなれるのじゃ。」

「おぬしらが人族に変身できる様になるのは、龍神になってからじゃ。じゃが、龍神にはそう簡単にはなれんぞ。」

つまり人族の姿には、なれないということだった。
ディオネは、面白くなかった。

人族は、空を飛べない。でも火龍なら簡単に空を飛べた。
しかし、空を飛べない人族を見ていると、とても不自由には見えずとても楽しそうだった。
それを見ていたベティは、空を飛べない事など些細な事でどうでもよいように思えた。

人族は、神殿でよく願い事をしていた。
それは、姉のベティに懇願したり女神という存在に対して。
しかし、女神という存在が本当にいるのか不思議でならなかった。

姉は、火龍だ。
だから人々が姉に懇願する願いは、姉が実現できるものが殆どだった。

姉は、懇願されると直に実行に移した。
だから余計、人々から信頼され信仰された。

では、女神という存在は?

姿など見た事はない。
でも、人族は見たことのない女神に願い事を託す。
わからない。存在しない者に何を願うというのか。

それとも、実は見えないだけでその女神という者は、本当は存在しているのか?
なら願ってみようとベティは考えた。

「人族の姿になれますように。いや、人族の姿にもなれるし火龍の姿にも戻れるようになりたいです。」

ディオネは、いささかわがままだった。
だから女神様にお願いをして人族になった後、火龍の姿に戻れないのは嫌だと考えた。

そんな事を何度か願ったある日、寝ているディオネは夢を見た。
ディオネの頭の中に話かけて来た者は、ディオネに人化の術を授けるというのだ。

ただし、物事には対価が必要だとも告げられた。
ディオネの頭の中に話かけて来た者は、女神ラティアと名乗った。

女神ラティは、対価として女神の仕事の一部を手伝って欲しいというのだ。
火龍の幼生のディオネには、女神の仕事の一部など出来る訳がない。

すると女神ティアは、仕事の一部を手伝ってもらうのは、もっと大きくなってからでよいと言う。
ディオネは、承諾した。ただし、自分だけでなくレアにも人化の術を授けて欲しいと。
女神ラティアは承諾した。



次の日の朝早く、神殿の礼拝堂にふたりの小さな人族の子供がいた。
服など着ておらず裸だった。

まだ、日が昇る前で、神殿の扉は閉ざされていた。
昨夜遅くに礼拝堂の扉を閉めた時には、誰もいなかったはずだ。
早番の神官が疑問に思い、ふたりの小さな子供に話かけた。

「君達、どこから入ってきたの。お名前は?」

するとふたりの子供が名乗った。

「ディオネ。」

「レア。」

神官の顔がみるみる青くなって滝の様な汗が流れ出していた。
そんなはずはない。

火龍の幼生と同じ名前だなんて。神官は、慌てて火龍の幼生が生活している部屋へと走った。
しかし、そこには、火龍の幼生のディオネとレアの姿はなかった。

神官は、また礼拝堂へと走って戻った。
するとそこには、火龍の姿をしたふたりがいた。

神官は、考えた。
きっと、さっき見た子供は見間違いだと。

安堵した神官は、自分の仕事に戻ろうと考えた。
そしてそれは突然、その神官の目の前で起こった。

火龍の幼生のディオネとレアが、人族の小さな子供に変身したのだ。
神官は、目の前で起こった出来事が信じられなかった。

神官の足がすくみ、動けなくなっていた。
神官は、ベティからディオネとレアが人化できるのは、数百年先の話だと聞いていたのだ。
神官達は、自分達が生きている間に人族の姿になったディオネとレアを見る事ができないと残念がった。

しかし、その光景が目の前で繰り広げられているのだ。
神官は、必死の思いで動かない足に鞭を打ち、他の神官が寝ている部屋へと走った。

ディオネとレアは、人化の術を女神から授けられ、面白い様に人族と火龍の姿に変化できる事を楽しんでいた。

※間違えていきなり公開しちゃった。
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