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04.よっつめ
15.エンドア平原のダンジョン(その15)
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ディオネとレアは、50層の最奥の部屋へと入ると部屋の奥に白い色をした龍が鎮座していた。
火龍の様な力の象徴の様な逞しい姿ではない。
水龍の様な流麗な姿でもない。
すらりとした綺麗とか美しいという言葉が似あう龍が1体、部屋の最奥に鎮座していた。
「あなたがこのダンジョンの管理者?」
ディオネが部屋の奥に鎮座する龍と念話による意思の疎通を試みた。
「ほう、そちらから念話で話しかけて来るとは、場慣れしていますね。」
「いえ、ダンジョンは初めてです。」
「しかし、龍とは何度か戦った事があります。」
「人族の子供の姿に見えますが、実際はそうではないということでしょうか。」
「そうかも知れません。見た目のみに固執すると判断を誤ることもあります。」
ディオネは、少し間を置いてから本来の目的の話を始めた。
「貴方様にお願いがあってこのダンジョンに参りました。」
「お願いですか。」
白く美しい龍は、少しのあいだ考えた後に、自分が置かれた立場、その責務について話始めた。
「ご覧の通り、私はこのダンジョンの管理者です。」
「お恥ずかしながら私は、このダンジョンからは出ることができません。」
「扉の封印の魔法陣の存在は既にご存知なのでしょう。私は、とある女神様にこのダンジョンの管理者を任されました。今では、言葉巧みに騙されたとの思いでいっぱいですが、覚まされた私も悪かったのです。」
「それに、このダンジョンの管理者として存在している以上、その責務を放棄する訳にはいきません。」
「私にもプライドと意地というものがあります。」
ディオネは、目の前に鎮座する美しい龍との会話で、話合いによる解決は難しいことを理解した。
「では、もし闘って私が勝つ事ができたら、こちらの願いをお聞き入れ下さい。」
「ほう、私と闘って勝てると見込んでいるのですか。拝見するところ龍を討伐に来た勇者には見えませんね。」
ディオネは、少し間を置くと話の本題を切り出した。
「では、この闘いに勝つ事ができた暁には、貴方様は私達と一緒に外界へと赴き、神との闘いに参加していただきます。」
ディオネの口から発した"神との闘い"という言葉に、ほんの一瞬だが美しい龍は反応した。
少なくともディオネにはそう見えた。
「神との闘いですか。それはまた物騒ですね。」
「はい、しかし"神"の前に"邪"が付く神です。」
ディオネには、美しい龍の体が一瞬強張った様に見えた。
「ほう、これはまた壮大なお話ですね。」
「本件に関しては、創造神様もご認識しておられます。」
「…。」
美しい龍は、ここで思いもよらない"創造神"の名前を聞いて二の句が出て来なくなってしまった。
「では、これより戦いを始めましょう。ダンジョンの責任者として、最後の責務を全うするのは当然の事です。」
「戦いに負けたのであれば、あなた様がこのダンジョンに固執する理由もなくなりますね。」
ディオネは、念話により美しい龍との会話をそう締めくくると、左腕から"化けの皮の腕輪"を外した。
すると、ディオネの目の前にいる美しい龍の顔色があからさまに変わった。
「まて、おぬし火龍なのか。」
ディオネは、あえて返答しなかった。
「では、まいります。炎の女神。」
ディオネは、スキル"炎の女神"を発動した。
ディオネの前には、炎をまとった美しい裸体の女神が姿を現した。
炎の女神は、空中を浮遊しながら美しい龍へと少しずつ近づいた。
「"炎の女神"だと!なぜおぬしが炎の神のスキルを所持している。」
「そうか創造神か。確かそう言っていたな。」
「そうか、おぬしの戦いとは、神と神との戦いであったか。」
「ならば私も全力で戦うとしよう。」
美しい龍は、部屋の奥から立ち上がると、体に闘気をみなぎらせた。
すると部屋の温度が急激に下がり、白い小さな粒がちらちら降り始めた。
さらに部屋の壁、床、天井の全てに白い氷が付着してキラキラと輝きだした。
ディオネの吐く息も白くなり、着ている服ですら白い氷の粒で覆われていた。
部屋の中はいつの間にか極寒の地と化していた。
「炎の女神、あの龍に勝ちなさい。でも殺してはダメよ。」
「殺さなければ、何をしてもいいわよ。」
"炎の女神"はディオネの方へ振り返るとニコリとほほ笑みを返した。
炎の女神は、空中をフワフワと浮遊しながら美しい龍の近くまで来ると、祈りを捧げるかのうに胸の前で両方の手のひらを握りしめた。
すると、炎の女神の体を覆っていた炎の色が赤色から白色へと変化していった。
つまり炎の女神を覆う炎の温度が急激に上昇し始めたのだ。
部屋の壁、床、天井に付着していた氷は次々と水滴へと変わり、やがて徐々に蒸発していった。
部屋の空気は炎の女神がまとう炎で熱せられ、視界はゆらゆらと歪んで見えるようになっていた。
「ほう、私の闘気を簡単に退けるとは、やはり神のスキルですね。」
「では、こちらも本気を出させていただきます。」
美しい龍は、念話でディオネに話しかけると、少しの溜めを作り口から氷界のブレスを勢いよく吐いた。
先ほどまでは、炎の女神の炎によって部屋の壁、床、天井に付着していた氷が解け、水滴が蒸発していったが今度は、美しい龍のブレスによって再び部屋の壁、床、天井が凍り付いた。
「姉さん、あの龍、以外と強いね。」
レアは、戦いの最中にディオネに話しかけた。
実際、美しい龍と闘っているのは炎の女神なので、ディオネも戦局が変わらない限りはあまりする事はなかった。
「そうよね。女神様が仲間に引き入れなさいと言った意味が分かったわ。ぜひ私の手駒に欲しいところよね。」
「姉さん、それはあの龍を仲間にするんじゃなくて、配下に置きたいってこと?」
「当然じゃない。あんな龍を配下におけるのよ。私、あの龍が配下に加わったら、あの龍のお尻をハイヒールで踏んであげるわ。」
「悶えるわ。楽しみ。」
「…。」
ディオネは、龍のお尻をハイヒールで踏みつける場面を想像しては、自身の体を両手で抱きかかえて悶え苦しんでいた。
レアは、いつものディオネの行動にあきれつつ、眼前で繰り広げられている戦いから目を逸らさずにいた。
火龍の様な力の象徴の様な逞しい姿ではない。
水龍の様な流麗な姿でもない。
すらりとした綺麗とか美しいという言葉が似あう龍が1体、部屋の最奥に鎮座していた。
「あなたがこのダンジョンの管理者?」
ディオネが部屋の奥に鎮座する龍と念話による意思の疎通を試みた。
「ほう、そちらから念話で話しかけて来るとは、場慣れしていますね。」
「いえ、ダンジョンは初めてです。」
「しかし、龍とは何度か戦った事があります。」
「人族の子供の姿に見えますが、実際はそうではないということでしょうか。」
「そうかも知れません。見た目のみに固執すると判断を誤ることもあります。」
ディオネは、少し間を置いてから本来の目的の話を始めた。
「貴方様にお願いがあってこのダンジョンに参りました。」
「お願いですか。」
白く美しい龍は、少しのあいだ考えた後に、自分が置かれた立場、その責務について話始めた。
「ご覧の通り、私はこのダンジョンの管理者です。」
「お恥ずかしながら私は、このダンジョンからは出ることができません。」
「扉の封印の魔法陣の存在は既にご存知なのでしょう。私は、とある女神様にこのダンジョンの管理者を任されました。今では、言葉巧みに騙されたとの思いでいっぱいですが、覚まされた私も悪かったのです。」
「それに、このダンジョンの管理者として存在している以上、その責務を放棄する訳にはいきません。」
「私にもプライドと意地というものがあります。」
ディオネは、目の前に鎮座する美しい龍との会話で、話合いによる解決は難しいことを理解した。
「では、もし闘って私が勝つ事ができたら、こちらの願いをお聞き入れ下さい。」
「ほう、私と闘って勝てると見込んでいるのですか。拝見するところ龍を討伐に来た勇者には見えませんね。」
ディオネは、少し間を置くと話の本題を切り出した。
「では、この闘いに勝つ事ができた暁には、貴方様は私達と一緒に外界へと赴き、神との闘いに参加していただきます。」
ディオネの口から発した"神との闘い"という言葉に、ほんの一瞬だが美しい龍は反応した。
少なくともディオネにはそう見えた。
「神との闘いですか。それはまた物騒ですね。」
「はい、しかし"神"の前に"邪"が付く神です。」
ディオネには、美しい龍の体が一瞬強張った様に見えた。
「ほう、これはまた壮大なお話ですね。」
「本件に関しては、創造神様もご認識しておられます。」
「…。」
美しい龍は、ここで思いもよらない"創造神"の名前を聞いて二の句が出て来なくなってしまった。
「では、これより戦いを始めましょう。ダンジョンの責任者として、最後の責務を全うするのは当然の事です。」
「戦いに負けたのであれば、あなた様がこのダンジョンに固執する理由もなくなりますね。」
ディオネは、念話により美しい龍との会話をそう締めくくると、左腕から"化けの皮の腕輪"を外した。
すると、ディオネの目の前にいる美しい龍の顔色があからさまに変わった。
「まて、おぬし火龍なのか。」
ディオネは、あえて返答しなかった。
「では、まいります。炎の女神。」
ディオネは、スキル"炎の女神"を発動した。
ディオネの前には、炎をまとった美しい裸体の女神が姿を現した。
炎の女神は、空中を浮遊しながら美しい龍へと少しずつ近づいた。
「"炎の女神"だと!なぜおぬしが炎の神のスキルを所持している。」
「そうか創造神か。確かそう言っていたな。」
「そうか、おぬしの戦いとは、神と神との戦いであったか。」
「ならば私も全力で戦うとしよう。」
美しい龍は、部屋の奥から立ち上がると、体に闘気をみなぎらせた。
すると部屋の温度が急激に下がり、白い小さな粒がちらちら降り始めた。
さらに部屋の壁、床、天井の全てに白い氷が付着してキラキラと輝きだした。
ディオネの吐く息も白くなり、着ている服ですら白い氷の粒で覆われていた。
部屋の中はいつの間にか極寒の地と化していた。
「炎の女神、あの龍に勝ちなさい。でも殺してはダメよ。」
「殺さなければ、何をしてもいいわよ。」
"炎の女神"はディオネの方へ振り返るとニコリとほほ笑みを返した。
炎の女神は、空中をフワフワと浮遊しながら美しい龍の近くまで来ると、祈りを捧げるかのうに胸の前で両方の手のひらを握りしめた。
すると、炎の女神の体を覆っていた炎の色が赤色から白色へと変化していった。
つまり炎の女神を覆う炎の温度が急激に上昇し始めたのだ。
部屋の壁、床、天井に付着していた氷は次々と水滴へと変わり、やがて徐々に蒸発していった。
部屋の空気は炎の女神がまとう炎で熱せられ、視界はゆらゆらと歪んで見えるようになっていた。
「ほう、私の闘気を簡単に退けるとは、やはり神のスキルですね。」
「では、こちらも本気を出させていただきます。」
美しい龍は、念話でディオネに話しかけると、少しの溜めを作り口から氷界のブレスを勢いよく吐いた。
先ほどまでは、炎の女神の炎によって部屋の壁、床、天井に付着していた氷が解け、水滴が蒸発していったが今度は、美しい龍のブレスによって再び部屋の壁、床、天井が凍り付いた。
「姉さん、あの龍、以外と強いね。」
レアは、戦いの最中にディオネに話しかけた。
実際、美しい龍と闘っているのは炎の女神なので、ディオネも戦局が変わらない限りはあまりする事はなかった。
「そうよね。女神様が仲間に引き入れなさいと言った意味が分かったわ。ぜひ私の手駒に欲しいところよね。」
「姉さん、それはあの龍を仲間にするんじゃなくて、配下に置きたいってこと?」
「当然じゃない。あんな龍を配下におけるのよ。私、あの龍が配下に加わったら、あの龍のお尻をハイヒールで踏んであげるわ。」
「悶えるわ。楽しみ。」
「…。」
ディオネは、龍のお尻をハイヒールで踏みつける場面を想像しては、自身の体を両手で抱きかかえて悶え苦しんでいた。
レアは、いつものディオネの行動にあきれつつ、眼前で繰り広げられている戦いから目を逸らさずにいた。
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