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04.よっつめ

07.エンドア平原のダンジョン(その7)

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ディオネとレアは、ダンジョンから溢れ出て来る魔獣の群れに向かって歩き出した。
ディオネの右手には"狂乱の剣"、レアの右手には"砂塵の剣"、左手には"猛毒の剣"が握られていた。

最初に会敵したの低層の魔獣達、ゴブリンの群れだった。
ディオネは、"狂乱の剣"で魔獣達を従えて魔獣同士を戦わせるつもりでいたが、さすがにゴブリンではその役柄を与えるには無理があると考えた。

「ゴブリンは、"狂乱の剣"で仲間にして魔獣狩りを手伝わせるには少々役不足よね。」

「レア、ゴブリンを炎蛇で一掃できる。」

「まかせて姉さん。」

レアは、右手を頭の上に掲げると手の平の上に炎の塊を出現させた。

「炎蛇。」

レアがそう唱えると、レアが頭の上に掲げた手の平の上に出現した炎の塊の中から小さな炎蛇が顔を出した。1匹、2匹、3匹、次々と顔を出しては地面へと落ちてゆく炎蛇。

炎蛇は、地面をくねくねと蛇行しながら進むと小さかった体があっという間に6mを越える巨体へと姿を変えた。

3体の炎蛇は、2mを越える高さまで頭をもたげた。
ゴブリンの群れは、ディオネとレアを餌食にしようと剣を振り回しながら突進してきた。
だが、ゴブリンの目の前でみるみる大きくなり、ゴブリンの背丈の倍近くになった炎の蛇を見上げたゴブリン達の足はいつの間にか止まっていた。

それどころか、ゆっくりと後退りするものまで現れた。
ゴブリン達は、巨大な炎蛇に頭の上から睨まれると逃げようとしていた足がすくんで動けなくなっていた。

3体の炎蛇の影がゴブリンの体と頭にかかると、振り上げた剣が手からこぼれ落ちていった。
炎蛇は、動かなくなったゴブリンを頭からひと飲みにした。
ゴブリンは、されるがままに炎蛇に次々と飲み込まれていった。

ゴブリンの群れの中には、勇敢にも炎蛇に剣で斬りかかる強者もいた。
しかし、炎の体の炎蛇を剣で斬りつけても、炎蛇の体には傷ひとつ付かなかった。

それどころか、炎蛇に剣で斬りかかるたびに剣が熱を帯び、やがて高温となり真っ赤に輝くと剣を持った手は火傷を通り越し手から火を噴き出していった。
3体の炎蛇は、次々とゴブリンを飲み込むと炎蛇の体はますます大きく成長し、体長は10mを越えていた。

ゴブリンでは束になっても、3体の炎蛇を倒す事など到底不可能であった。
ゴブリンの群れに紛れて大型のこん棒を手に持つ5体のトロールが炎蛇に近づいた。

トロールは、手に持っていた大型のこん棒を振り上げると、炎蛇に向かって振り下ろした。
2度、3度、4度、5度、何度も何度も炎蛇の体に向かってこん棒を力の限り振り下ろした。

だが、大型のこん棒を振り下ろしたトロールの手には、何か柔らかい物をただただ叩いているような感触しか返ってこなかった。

さらに大型のこん棒は、黒く焼け焦げると炭と化して炎を噴き上げていた。
トロールは、燃え盛る大型のこん棒を棄てると、炎蛇に素手で掴みかかりねじ伏せようとした。

しかし、所詮トロールである。炎の体を持つ炎蛇に素手で掴みかかることがいかに悪手であるか、それを身をもって知った時は、自身の体から炎が噴き上がった時だった。

トロールの体は、全身が炎に包まれ徐々に炭の塊と化した。
別のトロールは、2体で炎蛇を素手を抑え込み1体が巨大なこん棒で炎蛇をめった撃ちにした。
巨大なこん棒でめった撃ちにされても炎蛇には、痛みも感じず、何のダメージも受けてもいなかった。

炎蛇を素手で抑え込んでいた2体のトロールは、やがて炎蛇の炎で体を焼き尽くされて灰と化していった。
炎蛇を巨大なこん棒でめった撃ちにしていたトロールは、激しく巨大なこん棒による殴打を繰り返したため息も絶え絶えとなっていた。

それは、炎蛇にとって格好の捕食の合図でしかなかった。
トロールは、力尽き巨大なこん棒を地面へと付いた。そして炎蛇を見上げた。
トロールの目には、巨大な口を開けて今にもトロールを飲み込もうとしていた炎蛇の姿だけが映っていた。

トロールは、最後の力を振り絞り巨大なこん棒を地面から持ち上げ炎蛇に向けて振り上げようとした。
だが、時すでに遅くトロールの頭から胸にかけて炎蛇の口の中へと収まっていた。

胸まで炎蛇の口の中に納まったトロールは、腕すら動かすこともできず、唯一動く足をバタつかせてみたものの、もう後の祭りだった。
巨大なトロールが炎蛇に飲み込まれると、炎蛇は"げふっ"とゲップを吐いた。
魔獣を飲み込み、HP、MP、魔力を吸収した炎蛇の体は、既に30mを越える大きさへと成長していた。



地上でディオネとレアの戦いの始まりを受けて、飛竜の"キウイ"を駆るティアナも闘いを開始した。
ダンジョンから魔獣達が出尽くしたところでティアナの腰のアイテムバックから油壺を取り出すと油壷の中に魔力を注いだ火種石を放り込み、素早くダンジョンの入り口と魔獣の大群との間に投下して行く。

油壷は、投下されて間もなく火種石が発火しすると、油壺は地上へ落下途中に爆発しながら炎と油をまき散らして行く。

さらにティアナは、草原に出現した魔獣達を取り囲む様に油壷を投下していった。
魔獣達の周りはまさしく火の海と化し、魔獣達は、ダンジョンに戻ることも草原の先に進む事もできなくなっていた。

ティアナは、魔獣が密集している場所に向かって油壷を大量に投下していった。
草原は、魔獣を取り囲むように炎を噴き上げ、火の海と化していった。

その火の海の中をレアの"炎蛇"が優雅に泳ぐように蛇行していた。
炎という自分の得意な世界を進む"炎蛇"には、いかなる攻撃にも負ける要素など微塵もなく、目の前に現れる魔獣を大きな口で飲み込みながらどんどん成長していった。



ディオネとレアの目の前には、コボルトの群れが現れた。
ダンジョンの中では、少数の群れで現れるため、目の前に現れた数十から数百に上る軍団で行動する様は壮観であった。

「コボルトか。コボルトなら私の軍団の先鋒にうってつけね。」

ディオネは、そう言うと数体のコボルトの体に"狂乱の剣"で少しだけ傷を付けていった。
最初は、数体のコボルトがディオネの下僕と化した。次に数十体のコボルトがディオネの下僕と化した。

さらに百体以上のコボルトがディオネの下僕と化す頃には、最初に下僕と化したコボルト達は、狂戦士と化して見境なく魔獣達を攻撃していた。

そんな時、コボルトの群れが空を舞っていた。
ディオネとレアの目の前にオーガの群れが現れた。
オーガが振り上げた拳により吹き飛ばされたコボルト達は、次々と地面に落ちては絶命していった。
それでも狂戦士と化したコボルト達は、オーガに向かって全力で挑んでいった。

ディオネは、オーガの群れを見て笑みを浮かべていた。

「"狂乱の剣"で私の配下に迎え入れるならやっぱりコボルトよりオーガよね、でもコボルトみたいに簡単に仲間には出来ないのが欠点なのよね。」

しかし、ディオネの顔は微笑みでいっぱいだった。

「オーガを仲間いにするには、皮膚が固くて剣が通らないけど、あそこだけは別なのよね。」

するとレアが顔を赤らめ、半歩下がりながら股間を押さえて言った。

「姉さん、よくあんな攻撃方法を思いついたよね。」

「僕、人化してよくわかったけど、あの攻撃方法は反則だよ。男ならみんな股間を押さえるよ。」

「あら、そう?でもピンポイントであそこを狙うのって難しいのよ。そこは褒めて欲しいわ。」

「ははは。確かに、あれは姉さんさんにしか出来ないある意味"曲芸"だよね。」

レアは、股間を押さえながらこれからディオネがオーガに向かってする事を哀れに思い、オーガに対して同情していた。



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ワンモア・フリーライフオンライン続けています。
チーム名は「誰にでも」の主人公の名前です。

ワンモアを始めた時に「無課金でも武闘のGoldに到達だ!」という目標を立てました。(笑)
それから3ヶ月ちょっと経ちました。

相変わらず無課金で継続していますが、週初めの火曜日(3/28)の夜に武闘のGoldⅠに到達しました。水曜日の夜にはGoldⅣに到達しました。

木曜日に2週間毎の〆でGoldⅡに落ちましたが、初めて武闘の報酬(GoldⅣ)を貰いました。嬉しいものですね。
木曜日の夜にGoldⅡからスタートして土曜日の夜にGoldⅤに到達。日曜日にはGoldⅥに到達しました。
しかし、無課金なのでこのあたりが限界のようです。
対戦チームにMasterⅠが混ざってきました。

対戦相手のチームは、★5課金キャラと★5課金妖精が殆どです。超豪華で華やかで羨ましいかぎりです。
無課金でも武闘でGoldⅠが目標だったので、GoldⅥに来られただけでも万々歳です。

基本、武具の生産Lv上げに精を出しています。
現在、プレイヤーレベル169、生産Lv114です。

迷宮はまだクリアしてませんが、蒼天の迷宮の1層から90層まで料理なしていけました。
武具の能力だけでも行けるもんなんですね。
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