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12.仲間が誘拐されました
07.転移門が現れました。
しおりを挟むなぜか王都の中央通りに門があった。
中央通りの道の真ん中に門だけが立っていた。
王都の城壁には当然ながら門は存在する。
ただ、通りには門などなかった。さっきまでは。
通りに面した商店の店主や店員、通りを歩く通行人は、こんなところに門など無かったはずなのに
気が付いたら門が存在していたので不思議に思った。
意識しないと存在していることに気が付かないということがある。
しかし、通りの真ん中に門だけがあるというのはいささか無理がある。
通行人が門に触れた。
何の変哲もない門だった。扉は閉まっていた。
門の反対側に回ってみる。扉は無かった。
通行人に呼ばれた数人の兵士が駆けつけた。
通りに門を設置したなどという話は、聞いていなかった。
少しの時間が経ち、王国の魔術師が到着した。
魔導士は門を見るなり驚愕した。
「…転移門だ。」
「国王様に連絡だ。転移門だ。兵士達よ、直ぐに他の兵士を呼んでこい。」
「この街を封鎖せよ。誰か分からぬが転移門が現れたということは、この王都に攻め込もうとしている者がいる。」
「何をぐずぐずしている。早くしろ。」
魔術師は、伝令の兵士に直ぐに動くように伝えた。
中央通りに突然現れた門の前には、数百人の兵士が長槍と盾を構え、数百人の兵士が弓を構えた。
門が開かぬように鎖や縄で何十にも封が施された。
さらに門の前には、建築用の大石が運ばれ門の戸が開かないように配置された。
「おい、王都にいる兵士はたったこれだけか。」
「ここにいる兵士は500人もいないではないか。」
「今、国王様の命令で王都の守備隊の殆どが城壁の外にいます。」
よりにもよってこんな時に兵士の殆どが城壁の外にいるとは。
「今すぐ城壁の外にいる兵士達を呼び戻せ。」
「しかし、国王陛下のご命令で城壁の外にいるのです。」
「そんなことは分かっている。王国魔術師長である私が言っているのだ。守備隊の指揮官に伝令を出して全部隊をこの門の周辺に配置するように伝えろ。今すぐにだ。行け。」
事の重大さに魔術師は動揺した。
この門が意味するところを理解している者は皆無だった。
魔術師が指示を出さなければ、この先にどんな結果が待っているか想像に容易かった。
「この一帯の住民の避難は済んだか。」
「それが、手間取っております。家財道具を移動させようと急に馬車が増えて道がごった返しています。」
「ええい、家財道具と己の命とどっちが大事なのかも分からぬか。」
「家財道具の移動は禁止だ。」
「住民の避難が最優先だ。」
魔術師は、この転移門が何を意味するのか理解していない兵士に向かって住民の避難を最優先するように伝えた。
王国魔術師数十人が門の前に居並び呪文を唱え始めた。
封印の魔法だ。
王国魔術師でも転移門を見たことがある者は数人しかいない。
まして、封印の魔法で転移門が"開かれる"ことを防ぐことができるのかも不明だった。
しかし、今できることはそれくらいだった。
魔術師は、王国軍の部隊長にこの門が何であるかを説明し、この先に起こるであろう惨劇について自身の考えを示した。
部隊長は額から汗を流していた。
王都でそんな事が起きたら、この王都は崩壊してしまう。いや、この国が崩壊してしまう。
城外にいる国王軍の司令官へ事の重大さを伝え、早急に城内に戻るように伝令を送ったが、なかなか伝令が帰ってこない。
あせる心を落ち着かせ、部隊長は深呼吸をした。
目の前にある門。転移門がいつ開くのか戦々恐々の眼差しで見ていた。
「どうだ。他にはあったか。」
「はい。ここ以外に2箇所ありました。」
「ですが、ひとつは門が半分ほど地面に埋まってました。」
「もうひとつは、城壁に半分のめり込んでいました。」
「両方とも門を開くことは敵わないでしょう。」
部下の兵士が部隊長へ報告を上げてきた。
転移門は何もひとつとは限らない。
もし、転移門を送ってきた相手が大部隊を送るつもりでいるならば、複数の転移門を用意しなければ門の狭さから門を通る者たちが滞ってしまい、結果戦力の大量投入ができなくなるのだ。
「わかった。各門に見張りを数名はり付けておけ。何か動きがあったら直ぐに知らせろ。」
部隊長は、少し安堵した。
これで転移門はひとつに絞られた。
この門から出て来るであろう敵にのみ集中していれば、恐れることはない。
既に伝令が事の重大さを城外の国王軍の司令官に伝えているはずである。
城外にいる王国軍さえ駆けつけてくれれば、十分対応可能であると部隊長はたかをくくっていた。
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