140字小説まとめ

川本鏡花

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★元気で生まれてきたやんか

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十年ぶりの故郷。
実家を訪ねると、お母さんが迎えてくれた。シワの増えた手を目にして、不意に胸がさざめく。それだけの月日を会わずに過ごしたのだ。

「なんもしやんと、ごめん」
「元気で生まれてきたやんか」

それだけで充分、と言って。
お母さんは、それから「ばかだね」と笑った。
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