140字小説まとめ

川本鏡花

文字の大きさ
上 下
69 / 165

珈琲処の一幕

しおりを挟む
最近の子は、燐寸の擦り方も知らん。煙草を燻らすなら、其れくらい心得るが是と考える。

不意に、喫茶店の老主人が呟いた。

古めかしい口調が誂えた如く、淹れる珈琲も同様の香りがした。
非難めいた言に燐寸を擦り、煙草に火を点けてみせた。
彼はさもありなんと笑み、灰皿を差し出した。
しおりを挟む

処理中です...