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★あなたの嫌いなものはなんですか
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「あなたの嫌いものはなんですか?」
にこにこしながら通行人に声をかけてる女性。多くは素通りしてゆくが、手前で気づいて気味悪そうに避ける人もいた。
多分に漏れず、少し離れたところで気づいた僕はその様子を観察していたのだが、彼女は視線に気づいたらしく、わざわざ歩み寄ってきて声をかけた。
「あなたの嫌いなものはなんですか?」
「嫌いなものは思いつかないけど、苦手なものなら気安く話しかけてくる人かな」
「あはは、わかります」
皮肉を意に介した様子もない。
会話が成立したことで気を許したらしい、彼女はそのまま二の言葉を継いだ。
「じゃあ、あなたの好きなものはなんですか?」
素直に答える気分にはなれなかったので嘘をついて誤魔化そうと試みる。
「そうだね。君みたいに可愛い女の子とか」
「あはは、よく言われます」
彼女が笑いながら目を細める。
値踏みするように、僕を「観察する」みたいに視ている。
「私ですね」
ゆっくりと。
獲物を見つけたような口調で言う。
「人の嫌いが知りたいんです。好きは耳障りが良くて不快なんです。好きは似たり寄ったりしています。嫌いは千差万別で個性に溢れています。その人の色が見えます。その人の生涯が垣間見えます。だから、」
ぞく、と背が粟立つ。
やばい。
やばい、やばい。
「嫌いなものを、教えてくれてありがとう」
にこにこしながら通行人に声をかけてる女性。多くは素通りしてゆくが、手前で気づいて気味悪そうに避ける人もいた。
多分に漏れず、少し離れたところで気づいた僕はその様子を観察していたのだが、彼女は視線に気づいたらしく、わざわざ歩み寄ってきて声をかけた。
「あなたの嫌いなものはなんですか?」
「嫌いなものは思いつかないけど、苦手なものなら気安く話しかけてくる人かな」
「あはは、わかります」
皮肉を意に介した様子もない。
会話が成立したことで気を許したらしい、彼女はそのまま二の言葉を継いだ。
「じゃあ、あなたの好きなものはなんですか?」
素直に答える気分にはなれなかったので嘘をついて誤魔化そうと試みる。
「そうだね。君みたいに可愛い女の子とか」
「あはは、よく言われます」
彼女が笑いながら目を細める。
値踏みするように、僕を「観察する」みたいに視ている。
「私ですね」
ゆっくりと。
獲物を見つけたような口調で言う。
「人の嫌いが知りたいんです。好きは耳障りが良くて不快なんです。好きは似たり寄ったりしています。嫌いは千差万別で個性に溢れています。その人の色が見えます。その人の生涯が垣間見えます。だから、」
ぞく、と背が粟立つ。
やばい。
やばい、やばい。
「嫌いなものを、教えてくれてありがとう」
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