140字小説まとめ

川本鏡花

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見ない見えない見なかったけど痛いよ

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誰も傷つけないように、と生きてきた。
その生き方は、己の奥深くを傷つけていたらしい。

ガーゼをあてて、見なかったことにした。
擦過傷のようにじくじくと痛む。
塞がらない、染まっていく。
赤と、黄に、斑模様に。

じくじく。
じくじくと。

手遅れだった。
傷口は膿んで腐り落ちた。
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