140字小説まとめ

川本鏡花

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名前を呼ぶとき

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幾度目かの逢瀬。
「本当の名前を教えて」
少し悩んだけれど、「○○」と本名を告げた。

それから一年、いちども名を呼ばなかったくせに。
「サヨナラ、○○。愛していたよ」
彼の言葉はわたしをそっと冷たく抱きしめた。

ズルいなぁ。

一番欲しかった言葉を、最後の最後に言うんだから。
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