罰ゲームの告白は本物にはならないらしい

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6、これは多分、失敗した。

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「このちゃん、最近忙しいの?」

 昇降口で後ろから、前にもこんなシュチュエーションがあったなと思いながら振り返ると案の定凛くんがいた。

「え、まあ……うん」

 彼は自然と私の隣を並んで歩きだす。

「そっか。一日も空いてる日ないの?息抜きにどこか遊びに行こうよ」
「ごめんなさい。本当に忙しくてこれからはあんまり連絡も返せないかもしれない」

 どうやら凛くんは相当どこかに遊びに行きたいみたいだ。
 私なんかを誘わなくてもみんな喜んで行ってくれそうなのに趣向を変えたい気分なのだろうか。

「何か困ってることでもあるの?それなら俺に相談して」

 なるほど、そう捉えられるか。
 でも確かに、部活も塾も入ってない私が急にそれだけ忙しくなれば優しい凛くんは心配するかもしれない。
 少し考えが甘かったみたいだ。

「ううん。本当に大丈夫。凛くんに話すようなことじゃないから」

 恋人との別れ話をさすがに恋人に相談するわけにはいかないだろう。

「そう」
「うん。だから・・・・・」
「このちゃん、少し話せる?」

 なぜか、凛くんがまとう空気が5度くらい冷えた気がした。
 口調こそ疑問形だけどノーなんて口が裂けても言えない。

「はい」

 私の返事を聞いたか聞かなかったくらいのところで凛くんは進路を変更して公園に入っていく。
 私も慌てて追いかけるとベンチに腰掛けようとしていた。
 座ってから向けられた視線はやっぱり有無を言わせない雰囲気でドギマギしながらちょっと間を開けて隣に座る。

「このちゃん、好きな人いるの?」

 開口一番の質問にはてなが浮かぶ。
 これはどういう意図で聞いているのだろうか。
 自分のことがまだ好きかという意味だろう。
 さすがにいくら罰ゲームのお情けの彼女だったとしてもほかに好きな人がいるかなんて無神経なことを聞く人じゃないと思う。

「いる、けど?」
「ふーん………なんで?」

 凛くんは明らかに不機嫌になった。
 もしかして、ほかに好きな人ができたかという質問だったのだろうか。
 凛くんは明らかに怒っているし、もしも私の思う質問の意味だったら私はとても最低な答えをしたことになる。
 どうしよう、今からでも弁解したほうがいいかな。
 いや、でも、不機嫌になられるいわれはない。
 だって罰ゲームじゃん。
 不誠実なことをしたのは凛くんも同じなのにどうしても謝るのは嫌だった。

「なんでもいいじゃん。」
「……はあ、俺はどれだけ君を好きになればいいの?このちゃんもみんなと同じで俺のこと見た目で判断すんの?本気じゃないってどうせ遊びだって言うんでしょ。何が気に入らなくて怒ってるの俺はどうすればいいんだよ」

 凛くんはまるで被害者みたいに悲痛な声で顔を伏せてしまう。

「結局何なの?気に入らないなら別れればいいし、どうだっていいじゃん」

 自分の口から出てくる不遜な言葉たちに驚く半面、罰ゲームについて一言も言わないままに被害者のような顔をする凛くんにこれまでにないくらい怒りがたぎった。

「なにそれ。俺のことなんだと思ってんの?」
「そんなのこっちのセリフだよ!私のことなんだと思ってるの!何も言わないって私のこと舐めてるんだ。罰ゲームだってことすら言わないでうわべだけの好きだなんて聞きたくなかった!」

 ヤバい、泣きそう。
 言葉と一緒に視界がにじんできた。
 そう思った時には走り出していた。
 後ろから呼び止める声が聞こえた気がしたけど止まれるわけない。
 泣きながらわめいて、付き合ってもらってるのにわがままを言って、挙句の果てに逃げるなんて最低すぎる。
 感情が高ぶって流れた涙は私の心に冷水を浴びせたみたいに冷静にさせた。
 ああ、これは多分、失敗した。
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