31 / 38
第2章
5話
しおりを挟む
俺がオフィスに戻るとオフィスにはさっきまで居なかった、美しい青年が会議室の椅子に座っている。
俺は一目で彼が諸星一さんだと分かる。
オメガらしいと言ったら失礼になるかもしれないけど、小柄で可愛らしい見た目。
だけど彼からは普通のオメガには感じられない力強さが感じられた。
諸星一さんは特徴的な長い金髪を揺らしながら優雅にお茶を飲んでいる。
小さい会議室のはずなのに彼がいるとそこはまるでイギリスの王宮に変わるようだった。
「諸星さんお待たせしました。今日から諸星さんの担当に着きます、俺の後輩の臥龍岡健斗です。」
櫻井さんが俺のことを紹介してくれたので俺は慌てて頭を下げた。
俺はこれからこんなにかっこいい人のマネージャーになることが出来る喜びに心が踊る。
「よろしくお願いします!臥龍岡健斗です。」
「こちらこそよろしく、諸星一です。
君の噂は悠一さんから聞いてるよ。
俺のマネージャーで大変なことも多いと思うけど嫌だと思ったらすぐに辞めていいからね、」
「そんな!諸星一さんのマネージャーとして働かせていただけるなんてとても嬉しいです。」
俺は思わずそう伝えてしまった。
諸星さんは、俺なんか、なんて言っているけど俺にとったらこんなにかっこいい人のマネージャーになれるなんてほんとに幸せだ。
俺達は挨拶をそこそこに、現場へと向かった。
現場までは下にとめてある、事務所の車で向かうらしい。
櫻井さんいわく、最初は電車やタクシーを使っていたが、諸星さんが有名になるにつれて、オメガ反対派からの攻撃を受けるようになった為移動は毎回社用車を使うのがルールになっているそうだ。
今日はまだ慣れてない俺に変わって櫻井さんが運転してくれたが明日からは運転も俺が行う為俺は必死になって窓の外を眺めながら道を覚えようとする。
「臥龍岡さん、頑張って道覚えてるところ悪いんだけど、仕事場て、毎回変わるからあんまり意味ないかも、、、、」
そんな俺の姿を見て、諸星さんが気まずそうに声をかけてくれた。
そっか、芸能の仕事は毎回同じものじゃない…毎回現場が変わるからその都度調べて行かないと行けないのか、
「そうなんですね、教えていただきありがとうございます。」
俺がそう答えると、諸星さんは優しそうに「大変だけど頑張ってね」と言ってくれた。
この人の為に俺はこれから死ぬ気で頑張ろう。そう思えた。
道を覚える必要がなくなった為俺は暇そうな諸星さんに、話しかけた。
「諸星さんはいつからこの仕事やってるんですか?」
「悠一がこの事務所作った時からだから、2年ぐらいかな?」
「へーそうなんですね、」
俺が諸星さんに質問をすると諸星さんは嬉しそうな顔をして答えてくれた。
正直俺なんかが話しかけていいのか分からなかったが、話しかけたことで喜んで貰えてよかった。
「臥龍岡さんはどうしてこの仕事に?」
「悠一さんに誘われたんです。
俺、孤児院育ちで、訳あって定職にも付けず困ってた時に誘って頂いたんです。」
諸星さんは、俺が孤児院育ちだと聞くと少し気まずそうにしていた。
俺は俺の父親がアルファからオメガに変わったことが先方の会社にバレると、面接ですぐに落とされてしまう。
アルファなのに定職に付けないなんて珍しい、何をやらかしたのかと思われるかもしれない、だけど諸星さんは何も聞かないで居てくれた。
その後もしばらく話していると、今回の現場に着いた。パッと見古いビルのようだが、このビル全てが撮影出来るスペースになっているらしく、大小様々なセットが組まれているそうだ。
俺は櫻井さんの後に続いてビルの中に入った。
諸星さんはまだ車で待機をするそうだ。
ビルの中に入ると撮影現場と、言っても1階は普通の会社と、同じようにロビーのようなものになっていた。
だけど、普通の会社とは違って、芸能人やスタッフさんが忙しそうに走り回っている。
俺達は受付を済ませ、入館証を受け取ると今度は諸星さんを迎えに行く。
もう1度、今度は諸星さんと、3人でビルの中に入ると、さっきまで賑やかだった空気が一気に変わった。
俺達の方に一気に冷めた視線が注がれる。
静まり返ったこの場に徐々に小声でひそひそ話す声が聞こえる。
「あのオメガまた来たよ」
「オメガなんて気持ち悪い」
「この業界にオメガなんて要らない」
ああ、どこへ行ってもオメガに対する偏見は何も変わらない。
これがオメガに対する世間の一般的な反応だ。
諸星さんはそんな声を聞こえないフリをしてスタジオへと向かう。
そんな諸星さんの態度が気に入らないのか、周りはどんどん大きな声で諸星さんを蔑み始める。
スタジオに入ると直ぐに撮影が始まるが、全てのスタッフが諸星さんをよく思っておらず、撮影中も諸星さんに対するいじめのようなものが平然と行われている。
櫻井さんはできるだけスタッフの気を損ねないように、上手くいじめをかわしている。
正直とてもいい職場とは言えない。
俺はどう立ち回ればいいのか分からず、後半はスタジオの壁と同化してしまった。
そんな環境でも、諸星さんはアイドルとして完璧な仕事をこなしていた。
レンズ越しに映る諸星さんはとても綺麗で天女のようだった。
「こんな俺のマネージャーなんていやだよね。今からでも悠一に辞めたいって言っていいからね」
撮影が終わると諸星さんは俺の傍に来てそう言った。
「そんな……俺は諸星さんの凄いなって思いました。そんな諸星さんのマネージャーになれるなんて嬉しいです。」
俺がそう言うと諸星さんは、嬉しそうな顔をして頬を赤らめた。
「そっか、じゃあこれからよろしくね」
俺は一目で彼が諸星一さんだと分かる。
オメガらしいと言ったら失礼になるかもしれないけど、小柄で可愛らしい見た目。
だけど彼からは普通のオメガには感じられない力強さが感じられた。
諸星一さんは特徴的な長い金髪を揺らしながら優雅にお茶を飲んでいる。
小さい会議室のはずなのに彼がいるとそこはまるでイギリスの王宮に変わるようだった。
「諸星さんお待たせしました。今日から諸星さんの担当に着きます、俺の後輩の臥龍岡健斗です。」
櫻井さんが俺のことを紹介してくれたので俺は慌てて頭を下げた。
俺はこれからこんなにかっこいい人のマネージャーになることが出来る喜びに心が踊る。
「よろしくお願いします!臥龍岡健斗です。」
「こちらこそよろしく、諸星一です。
君の噂は悠一さんから聞いてるよ。
俺のマネージャーで大変なことも多いと思うけど嫌だと思ったらすぐに辞めていいからね、」
「そんな!諸星一さんのマネージャーとして働かせていただけるなんてとても嬉しいです。」
俺は思わずそう伝えてしまった。
諸星さんは、俺なんか、なんて言っているけど俺にとったらこんなにかっこいい人のマネージャーになれるなんてほんとに幸せだ。
俺達は挨拶をそこそこに、現場へと向かった。
現場までは下にとめてある、事務所の車で向かうらしい。
櫻井さんいわく、最初は電車やタクシーを使っていたが、諸星さんが有名になるにつれて、オメガ反対派からの攻撃を受けるようになった為移動は毎回社用車を使うのがルールになっているそうだ。
今日はまだ慣れてない俺に変わって櫻井さんが運転してくれたが明日からは運転も俺が行う為俺は必死になって窓の外を眺めながら道を覚えようとする。
「臥龍岡さん、頑張って道覚えてるところ悪いんだけど、仕事場て、毎回変わるからあんまり意味ないかも、、、、」
そんな俺の姿を見て、諸星さんが気まずそうに声をかけてくれた。
そっか、芸能の仕事は毎回同じものじゃない…毎回現場が変わるからその都度調べて行かないと行けないのか、
「そうなんですね、教えていただきありがとうございます。」
俺がそう答えると、諸星さんは優しそうに「大変だけど頑張ってね」と言ってくれた。
この人の為に俺はこれから死ぬ気で頑張ろう。そう思えた。
道を覚える必要がなくなった為俺は暇そうな諸星さんに、話しかけた。
「諸星さんはいつからこの仕事やってるんですか?」
「悠一がこの事務所作った時からだから、2年ぐらいかな?」
「へーそうなんですね、」
俺が諸星さんに質問をすると諸星さんは嬉しそうな顔をして答えてくれた。
正直俺なんかが話しかけていいのか分からなかったが、話しかけたことで喜んで貰えてよかった。
「臥龍岡さんはどうしてこの仕事に?」
「悠一さんに誘われたんです。
俺、孤児院育ちで、訳あって定職にも付けず困ってた時に誘って頂いたんです。」
諸星さんは、俺が孤児院育ちだと聞くと少し気まずそうにしていた。
俺は俺の父親がアルファからオメガに変わったことが先方の会社にバレると、面接ですぐに落とされてしまう。
アルファなのに定職に付けないなんて珍しい、何をやらかしたのかと思われるかもしれない、だけど諸星さんは何も聞かないで居てくれた。
その後もしばらく話していると、今回の現場に着いた。パッと見古いビルのようだが、このビル全てが撮影出来るスペースになっているらしく、大小様々なセットが組まれているそうだ。
俺は櫻井さんの後に続いてビルの中に入った。
諸星さんはまだ車で待機をするそうだ。
ビルの中に入ると撮影現場と、言っても1階は普通の会社と、同じようにロビーのようなものになっていた。
だけど、普通の会社とは違って、芸能人やスタッフさんが忙しそうに走り回っている。
俺達は受付を済ませ、入館証を受け取ると今度は諸星さんを迎えに行く。
もう1度、今度は諸星さんと、3人でビルの中に入ると、さっきまで賑やかだった空気が一気に変わった。
俺達の方に一気に冷めた視線が注がれる。
静まり返ったこの場に徐々に小声でひそひそ話す声が聞こえる。
「あのオメガまた来たよ」
「オメガなんて気持ち悪い」
「この業界にオメガなんて要らない」
ああ、どこへ行ってもオメガに対する偏見は何も変わらない。
これがオメガに対する世間の一般的な反応だ。
諸星さんはそんな声を聞こえないフリをしてスタジオへと向かう。
そんな諸星さんの態度が気に入らないのか、周りはどんどん大きな声で諸星さんを蔑み始める。
スタジオに入ると直ぐに撮影が始まるが、全てのスタッフが諸星さんをよく思っておらず、撮影中も諸星さんに対するいじめのようなものが平然と行われている。
櫻井さんはできるだけスタッフの気を損ねないように、上手くいじめをかわしている。
正直とてもいい職場とは言えない。
俺はどう立ち回ればいいのか分からず、後半はスタジオの壁と同化してしまった。
そんな環境でも、諸星さんはアイドルとして完璧な仕事をこなしていた。
レンズ越しに映る諸星さんはとても綺麗で天女のようだった。
「こんな俺のマネージャーなんていやだよね。今からでも悠一に辞めたいって言っていいからね」
撮影が終わると諸星さんは俺の傍に来てそう言った。
「そんな……俺は諸星さんの凄いなって思いました。そんな諸星さんのマネージャーになれるなんて嬉しいです。」
俺がそう言うと諸星さんは、嬉しそうな顔をして頬を赤らめた。
「そっか、じゃあこれからよろしくね」
59
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる