アイドルの恋愛模様

山田 日乃

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第2章

5話

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俺がオフィスに戻るとオフィスにはさっきまで居なかった、美しい青年が会議室の椅子に座っている。

俺は一目で彼が諸星一さんだと分かる。
オメガらしいと言ったら失礼になるかもしれないけど、小柄で可愛らしい見た目。 
だけど彼からは普通のオメガには感じられない力強さが感じられた。

諸星一さんは特徴的な長い金髪を揺らしながら優雅にお茶を飲んでいる。
小さい会議室のはずなのに彼がいるとそこはまるでイギリスの王宮に変わるようだった。

「諸星さんお待たせしました。今日から諸星さんの担当に着きます、俺の後輩の臥龍岡健斗です。」

櫻井さんが俺のことを紹介してくれたので俺は慌てて頭を下げた。
俺はこれからこんなにかっこいい人のマネージャーになることが出来る喜びに心が踊る。

「よろしくお願いします!臥龍岡健斗です。」

「こちらこそよろしく、諸星一です。
君の噂は悠一さんから聞いてるよ。
俺のマネージャーで大変なことも多いと思うけど嫌だと思ったらすぐに辞めていいからね、」

「そんな!諸星一さんのマネージャーとして働かせていただけるなんてとても嬉しいです。」

俺は思わずそう伝えてしまった。
諸星さんは、俺なんか、なんて言っているけど俺にとったらこんなにかっこいい人のマネージャーになれるなんてほんとに幸せだ。


俺達は挨拶をそこそこに、現場へと向かった。
現場までは下にとめてある、事務所の車で向かうらしい。

櫻井さんいわく、最初は電車やタクシーを使っていたが、諸星さんが有名になるにつれて、オメガ反対派からの攻撃を受けるようになった為移動は毎回社用車を使うのがルールになっているそうだ。

今日はまだ慣れてない俺に変わって櫻井さんが運転してくれたが明日からは運転も俺が行う為俺は必死になって窓の外を眺めながら道を覚えようとする。

「臥龍岡さん、頑張って道覚えてるところ悪いんだけど、仕事場て、毎回変わるからあんまり意味ないかも、、、、」

そんな俺の姿を見て、諸星さんが気まずそうに声をかけてくれた。
そっか、芸能の仕事は毎回同じものじゃない…毎回現場が変わるからその都度調べて行かないと行けないのか、

「そうなんですね、教えていただきありがとうございます。」

俺がそう答えると、諸星さんは優しそうに「大変だけど頑張ってね」と言ってくれた。
この人の為に俺はこれから死ぬ気で頑張ろう。そう思えた。

道を覚える必要がなくなった為俺は暇そうな諸星さんに、話しかけた。

「諸星さんはいつからこの仕事やってるんですか?」

「悠一がこの事務所作った時からだから、2年ぐらいかな?」

「へーそうなんですね、」

俺が諸星さんに質問をすると諸星さんは嬉しそうな顔をして答えてくれた。
正直俺なんかが話しかけていいのか分からなかったが、話しかけたことで喜んで貰えてよかった。

「臥龍岡さんはどうしてこの仕事に?」

「悠一さんに誘われたんです。
俺、孤児院育ちで、訳あって定職にも付けず困ってた時に誘って頂いたんです。」

 諸星さんは、俺が孤児院育ちだと聞くと少し気まずそうにしていた。
俺は俺の父親がアルファからオメガに変わったことが先方の会社にバレると、面接ですぐに落とされてしまう。
アルファなのに定職に付けないなんて珍しい、何をやらかしたのかと思われるかもしれない、だけど諸星さんは何も聞かないで居てくれた。

その後もしばらく話していると、今回の現場に着いた。パッと見古いビルのようだが、このビル全てが撮影出来るスペースになっているらしく、大小様々なセットが組まれているそうだ。

俺は櫻井さんの後に続いてビルの中に入った。
諸星さんはまだ車で待機をするそうだ。
ビルの中に入ると撮影現場と、言っても1階は普通の会社と、同じようにロビーのようなものになっていた。
だけど、普通の会社とは違って、芸能人やスタッフさんが忙しそうに走り回っている。

俺達は受付を済ませ、入館証を受け取ると今度は諸星さんを迎えに行く。

もう1度、今度は諸星さんと、3人でビルの中に入ると、さっきまで賑やかだった空気が一気に変わった。

俺達の方に一気に冷めた視線が注がれる。
静まり返ったこの場に徐々に小声でひそひそ話す声が聞こえる。

「あのオメガまた来たよ」
「オメガなんて気持ち悪い」
「この業界にオメガなんて要らない」

ああ、どこへ行ってもオメガに対する偏見は何も変わらない。
これがオメガに対する世間の一般的な反応だ。
 
諸星さんはそんな声を聞こえないフリをしてスタジオへと向かう。
そんな諸星さんの態度が気に入らないのか、周りはどんどん大きな声で諸星さんを蔑み始める。

スタジオに入ると直ぐに撮影が始まるが、全てのスタッフが諸星さんをよく思っておらず、撮影中も諸星さんに対するいじめのようなものが平然と行われている。
櫻井さんはできるだけスタッフの気を損ねないように、上手くいじめをかわしている。

正直とてもいい職場とは言えない。
俺はどう立ち回ればいいのか分からず、後半はスタジオの壁と同化してしまった。
そんな環境でも、諸星さんはアイドルとして完璧な仕事をこなしていた。

レンズ越しに映る諸星さんはとても綺麗で天女のようだった。





「こんな俺のマネージャーなんていやだよね。今からでも悠一に辞めたいって言っていいからね」

撮影が終わると諸星さんは俺の傍に来てそう言った。

「そんな……俺は諸星さんの凄いなって思いました。そんな諸星さんのマネージャーになれるなんて嬉しいです。」

俺がそう言うと諸星さんは、嬉しそうな顔をして頬を赤らめた。

「そっか、じゃあこれからよろしくね」


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