アイドルの恋愛模様

山田 日乃

文字の大きさ
上 下
13 / 38
第1章

12話

しおりを挟む
ライブの前半は大盛り上がりだった。
さすが【LW1】前半で歌った曲全て日本の音楽チャートで1位をとったことがある曲だった。

永さんの聖とは違う力強いダンスと188cmある圧巻のスタイル
勝莉さんの誰にも真似出来ない高速ラップ
大雅さんのダンスと歌の両立は流石だった。
どっちもメインと同じレベルまでにしている
連さんの美しいハスキーボイスが奏でる音はこのグループの歌に色を付けている。
そして、聖さんの圧巻のダンスと激しいダンス中にもブレずに歌える耐久力。

このグループはやっぱり日本1、いや世界1位のアイドルだと思う。
俺がトップアイドルになるためにはこの人たちを超えないと行けない、あらためてそう強く思った。



30分の休憩を挟んでここから後半が始まる。
後半に差し掛かりファンのボルテージはさらに上がっている気がする。
それも異常な程に、

「悠介、なんかお客さんめっちゃ盛り上がってないか、後半何かあるのか?」

「えっ?健何言ってるの?
……………………健まさか知らないの?このライブの意味?」

「このライブて、なんか意味なんかあるのか?」

俺がそう言うと悠介が呆れたような、信じられないようなものを見るようにこっちを見てきた。なんだよ、

「あーー悠介ごめん、健太郎本気で知らないかも」

零が申し訳なさそうに悠介に謝る。
だからなんだって言うんだよ、零も俺が知らないぐらいで謝るなよ、俺が悪いみたいになるじゃんか、

「健、このライブはとある人を探しす為のライブなんだ。」

悠介はそう言って説明をはじめた。
どうもこのライブは17年前に居なくなったとあるメンバーを探すため毎年開いているライブらしい。
今からちょうど18年前に【LW1】は7人グループでデビューした。
メンバーは、当時から1番人気の聖さん、メインダンサーの永さん、ラッパーの勝莉さん、サブヴォーカルとサブダンサーを兼任する大雅さん、最年少で、当時サブヴォーカルの連さん。
そして今は永さんの番で当時史上初めてのオメガアイドルの白さん、そして今回のライブのきっかけになった人。元々はその人リーダーで、その人を含めた7人グループだったらしい。

だけどデビューして1年を目前に控えたある日、その人は【LW1】から姿を消したらしい。
メンバーや事務所は慌てて探したそうだけど、姿どころか手掛かりすら掴めず、警察に捜索をお願いするが見つからなかったらしい。

メンバーはその人がどこかに生きていると信じて毎年その人の居なくなった日に必ずライブを開いている。そしてそのライブでは、引退した白さんも含めた6人全員が出演してその人が見つかるように7人の時の曲を歌い、情報提供を求める、そのためのライブらしい。

去年からは引退した白さんが唯一表舞台に立つ日の為物凄い盛り上がっているそうだ。

悠介に説明されているうちにライブの後半が始まる。ライブの後半の演出は当時の映像をバックに【LW1】のメンバーが一人づつ出てくる演出だ。
まず初めにリーダーの大雅さん、聖さん、永さん、勝莉さん、連さん、そして白さん
全員が舞台上に出ると舞台上の巨大スクリーンが切り替わって7人目、17年前に居なくなった彼の映像に変わった。

「あの画面に写っている人、あの人が居なくなった健斗さん」





画面に写っていたのは俺の父さん。
臥龍岡健斗だった。

今より随分若くて、画面の向こうで楽しそうに笑っている。俺の知らなかった健斗がそこに居た。

「あの人、凄い健太郎の父さんに似てるな」

零は知らないと思う、健斗の本当の顔を
健斗は零や玲奈さんの前でも帽子と眼鏡を外さずにしていたし、健斗には右側に2つの特徴的な泣きぼくろがあったけど朝起きてから夜寝るまで必ず、コンシーラーか何かで泣きぼくろ隠していた。

健斗は元【LW1】に所属していたアイドルだった。

健斗は自分の番からも、この【LW1】のメンバーからも、そしてファン、世間から逃げていたのか、

健斗が俺がアイドルになることにあんなにも反対していた理由が今分かった。
健斗には申し訳ないことをした。
俺がアイドルになりたいと知った時の健斗のストレスは想像以上だったと思う。
あんなに自分の番から必死に逃げていたのに俺が逃げるべき場所に行く。それをどんな気持ちで送ったのだろう。
健斗は俺がアイドルを目指すと知ってから体調が悪くなった……………俺のせいなのか?
俺がアイドルになりたいなんて言わなければ…
父さんが苦しんでいるのは俺のせいなのか?
 



正直その後のパフォーマンスなんて一切頭に入ってこなかった。


「健太郎ー健太郎ー終わったよ、大丈夫?」

終わってもなおいつまでも席を立とうとしない俺に零が声をかける。
俺はその声で現実に意識が引き戻された。

「健?大丈夫か?」

「悠介、【LW1】のメンバーにこれこら会えない?」

「えっ??どうして」

「居なくなったメンバーの情報持ってるかもしれない。」


俺がそう言うと悠介は急いで大雅さんに連絡をとった。悠介の連絡の甲斐があってこれから2時間後にホテルのラウンジで会うことになった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...