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第4話 傷跡

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嫌いな奴は一旦引っ込めます。再び劣情パート。

リストカット。今日日この言葉を聞いた事のない人は居ないかもしれない。理由は色々あれどもやる内容は同じ。腕を刃物で切るだけである。
話題のチョイスとしてリストカットは変だが、私と彼はリストカットをテーマにして会話していた。

「どうやってやるんだろ、腕切るってのはわかるんだけどさ、どこらへん?を切るとか。」

リストカットをしたことない人からすると当然の疑問である。私は当然、したことがある。それを言って彼に同情して欲しいなんて気持ちは更々無かったが好奇心旺盛で色々なことを知っている彼に知らないことを教えてみたいと思ったのだ。

「カッターナイフとかで血が少し出るくらいにすって、切るの。血管が透けてる部分が怖い時は見えないとこで切ったり…人によっても違うだろうけど。」

入力中…の文字。流石にこれは引かれるだろうか、と思いつつ返信を待つ。

「やっぱカッターか、てかもしかして切ったことあるん?見てみたい!」

切ったことがあるのか、と言われるのは想定内だったが見せてと言われるのは想定外だった。私以外のリストカットをする人がどんな気持ちでやっているのかは全く分からないが血液に対して性的な感情を抱ける私にとっては自慰行為を見せるようなものだ。流石にやめた方がいいんじゃないかと心の中で考える。しかしそれと同時にその自慰行為を見られたい、見られてそれで侮蔑の目を向けられたいという気持ちがあった。
しかもそれで私の隠している気持ちがバレる訳では無いのだから。向こうからすればただリストカットを見たいと言って私が見せたというだけである。私の心の中に秘められている、リストカットをしている理由は私が血液に性的な感情を抱いているのと死に近づいているという事実に酷く興奮しているからだとバレることは無いのだから。言わなければバレない。けれども心の中で蠢いている被虐心がこのことを全部バラしてそれで相手に気持ち悪いだとかド変態だとか罵られたいという気持ちが大いにあった。罵られるという妄想だけで子宮が疼く位には。バラしてしまおう。それで侮蔑の目を向けられたい。好奇心は猫をも殺す(イギリスのことわざが元となった言葉。好奇心が強すぎると身を滅ぼすことになりかねないという意味をもつ語)、というが好奇心だけじゃないだろう。人に言えないような欲求だって身を滅ぼす。

「リストカット?見せてもいいけど直接会ってから見せるってことでいい?動画送るの時間かかるし……。」

それらしい言い訳を取り敢えず作った。あとは相手の返信を待ってみるのみ。

「まじで見せてくれるん!?ありがと!じゃあ明日学校から帰る時一緒帰らん?その途中どっか寄ろうよ。」

なんとも奇妙な友達との下校な上、寄り道ということは私にとって初めてのことだった。その日はワクワクした気持ちと未来への希望であまり眠れなかった気がする。

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次の日。朝から私はリストカットを見せることばかり考えていた。絶対人に見せることの無い自慰行為。それを異性に見せるのだ。その上自分の変態的性癖の暴露。どんな風に侮蔑の目を向けられるのかが楽しみだった。
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